お客様との関係は「恋愛」とよく似ています
ビジネスにおけるお客様との関係づくりは、何度もデートを重ねるよりも、たった一度の出会いで運命を感じる「恋愛」に似ているのかもしれません。
おっしゃる通り、大切なのは会う回数の多さではありません。
何度も顔を合わせても、天気の話や当たり障りのない世間話ばかりでは、ただの「顔なじみ」で終わってしまいます。
しかし、たった1時間でも、「この人は、私のことを本当に分かってくれる」と感じてもらえれば、お客様にとってあなたは、その他大勢の会社から、困ったときに真っ先に顔が思い浮かぶ「特別な相談相手」に変わるのです。
「感動」は魔法ではなく、「聴く」という技術から生まれる
「一流の営業マンは、お客様を感動させる」と聞くと、何か特別な才能や話術が必要だと思われがちです。
しかし、それは魔法ではありません。
実は、とてもシンプルな「技術」なのです。
それは、相手の物語の「最高の聞き役」になることです。
人は誰でも、自分の人生という物語を生きています。
その物語を、真剣な眼差しで、心から面白がって聴いてくれる人に出会ったとき、人は感動するのです。
例えるなら、お客様が持っている「宝の地図（お客様の人生や事業の話）」を一緒に広げて、ワクワクしながら眺めるようなものです。
「すごいですね！」「そこは大変でしたね…」と相槌を打ちながら、お客様という主人公が歩んできた冒険の旅路に、心から寄り添う。
商品を売る前に、まず相手の物語に深く感動する。
その姿勢が、お客様の心を動かすのです。
信頼の扉を開く「3つの鍵」～過去・現在・未来～
では、どうすれば相手の物語を深く知ることができるのか。
まさに、ご提示の文章にある通りです。私たちはこれを、信頼関係の扉を開く「3つの魔法の鍵」と呼んでいます。
【過去の鍵】「どんな道を歩んできたのですか？」
- 人は、自分が乗り越えてきた苦労や、大切にしてきたこだわりを認めてもらうと、心を開きます。
- 質問例：「このお仕事を始められたきっかけは何だったんですか？」「今までで一番、大変だったのはどんなことでしたか？」
【現在の鍵】「今、何を見つめているのですか？」
- 今まさに情熱を注いでいることや、抱えている悩みを共有することで、一気に距離が縮まります。
- 質問例：「今、一番力を入れていることは何ですか？」「もし今、何か一つだけ悩みを解消できるとしたら、どんなことですか？」
【未来の鍵】「これから、どこへ向かうのですか？」
- 未来の夢やビジョンを語り合うことは、相手を「お客様」から「共に夢を追うパートナー」へと変えてくれます。
- 質問例：「これから、この会社（お店）をどんな風にしていきたいですか？」「社長ご自身の、個人的な夢は何ですか？」
大切なのは、会話を「キャッチボール」にすることです。
相手の話をしっかり受け止め、その話に関連付けて「実は私も…」と、ほんの少しだけ自分の物語（自己開示）を話す。
一方的に自分の話ばかりするのは、剛速球を投げつけるようなもの。
相手が受け取りやすいボールを、そっと投げ返すことが大切です。
まとめ：小さな会社だからこそ、この関係づくりが「最強の武器」になる
私たちのような小さな会社は、大企業のように莫大な広告費はかけられません。
しかし、私たちにはそれ以上に強力な武器があります。
それが、お客様一人ひとりと深く、温かい人間関係を築く力です。
モノやサービスが溢れるこの時代、お客様は「何を」買うかだけでなく、「誰から」買うかをとても大切にしています。
「あなたに会えてよかった」と言ってもらえる関係を築けたなら、お客様は単なる顧客ではなく、あなたの事業を心から応援してくれる「ファン」に変わります。
そのファンが、新しいお客様を呼び、会社の土台を支えてくれるのです。
商品を売る前に、まず自分という人間を好きになってもらう。
この人間関係の基本こそが、小さくてもキラリと光る会社になるための、一番の近道なのです。
