顧客の声を集めることの力
はじめに:なぜ「お客様の声」はこんなにも力があるのか
あなたが旅先でお土産を選ぶとき、ふと立ち寄ったお店のポップに「これ、本当においしかったです!(福岡県・主婦・40代)」という一言が書いてあったとしたら、どうでしょう?
店員さんに「おすすめです」と言われるより、なぜかグッと手が伸びてしまいませんか。
これは偶然ではありません。
人間には「自分と同じ立場の人の意見を信じたい」という心理があります。
専門家や売り手の言葉より、「同じお客さん」の声のほうが、どこか親近感があって信頼しやすい。
これを心理学では「社会的証明」と呼びますが、難しく考える必要はありません。要するに、「みんなが良いと言っているなら、きっと良いはずだ」という感覚です。
この心理を上手に活用しているのが、「お客様の声」というマーケティング手法です。
通信販売の世界では、広告に「お客様の声」を掲載していない会社はほぼ存在しないと言っても過言ではありません。
実際に手に取れない商品を買ってもらうために、お客様の生の声がどれほど大切かを、通販会社は長年の経験から熟知しているのです。
「やらせっぽい」という壁をどう乗り越えるか
とはいえ、正直に言いましょう。
多くの経営者がこう思っています。
「お客様の声なんて、どうせやらせっぽいと思われるんじゃないか……」
実は、その懸念は正しい。
お客様も同じことを思っています。
「これ、本当のお客さんの声?」と疑いながら読んでいる方は少なくありません。
では、どうすればその「やらせっぽさ」を消せるのでしょうか。
答えはシンプルです。
「数」を集めることです。
1つや2つの絶賛コメントより、少し地味でも100件の声のほうが、はるかに信頼されます。
なぜなら、「さすがに100人分をスタッフが自作するのは無理だろう」と感じてもらえるからです。
量そのものが「本物の証拠」になるのです。
さらに、100件もの声が集まっているということは、「それだけ多くのお客様がこのお店を使っている」という事実を間接的に証明することになります。
繁盛していることが伝わるのです。
もちろん、内容の質も大切です。
心のこもった一言は確かに響きます。
しかし、どれだけ素晴らしいコメントが1件あっても、「やらせでは?」という疑惑は拭えません。
だからこそ、質と数の両方を追いながらも、まず「数を集めること」を優先して取り組んでいただきたいのです。
事例:整体院が「お客様の声ノート」で予約を3倍にした話
ある地方都市で営業している小さな整体院の話です。
従業員は院長を含めて3名。
腕には自信があるものの、新規のお客様がなかなか増えず、予約が埋まらない日が続いていました。
広告費をかける余裕もない。
SNSは苦手。
口コミに頼りたいけれど、紹介がなかなか来ない。
そんな悩みを抱えていた院長が取り組んだのが、「お客様の声ノート」の設置でした。
受付のカウンターに1冊のノートを置き、「ひとことメッセージをお願いします」と施術後にお声がけするようにしたのです。
最初はなかなか書いてもらえませんでしたが、丁寧にお願いし続けた結果、3ヶ月で50件、半年で120件のコメントが集まりました。
「長年悩んでいた肩こりが、3回の施術でずいぶん楽になりました」
「先生の説明がわかりやすくて、通うのが楽しみになっています」
「近所にこんな良い整体院があるとは知らなかった!」
どれも飾り気のない、普通の言葉ばかりです。
しかし、このノートが待合室に置いてある光景を見た初めてのお客様から、「このノート見て来ました」という声が増え始めました。
さらに院長はこのノートの内容を許可を得て院内のポスターに貼り出し、ホームページにも掲載しました。
結果として、半年後には新規予約数がそれ以前の約3倍になったといいます。
院長はこう振り返っています。
「特別なことは何もしていません。ただ、声を集め続けただけです。でも、その積み重ねが、お客様の背中を押してくれるんですよね」

まとめ:今日から始められる「声の集め方」
「お客様の声」は、特別な予算も専門知識も必要ありません。
必要なのは、お客様にお声がけする習慣と、集めた声を見える場所に置く工夫です。
まず取り組みたいのは次の3つです。
仕組みをつくる
アンケート用紙、ノート、メール返信、LINEメッセージなど、声を集める入り口をひとつ決めて、毎回声をかける習慣にしましょう。
「いつか集めよう」では集まりません。
見える場所に置く
集めた声は、店頭・ホームページ・チラシなど、新規のお客様が目にできる場所に積極的に掲載しましょう。
折角集めた声も、引き出しの中にしまっておいては意味がありません。
数を追い続ける
最初は少なくても構いません。
1件でも増えれば前進です。
100件を目標に、コツコツ集め続けましょう。
その積み上げがやがて、あなたのお店の「信頼の証」になります。
お客様の声は、売り込みではありません。
「このお店は安心して使えそうだ」と感じてもらうための、静かな説得力です。
今日の施術、今日の販売、今日の接客のあとに、ぜひ一言声をかけてみてください。
その小さな積み重ねが、やがて大きな力になります。
