利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「わかってあげる」ことが、経営の視野を広げる

「わかってあげる」ことが、経営の視野を広げる

経営者に必要な複数の視点

なぜ経営者には「複数の視点」が必要なのか

経営をしていると、「お客様の気持ちがわからない」という壁にぶつかることがあります。
自分では良いと思った商品やサービスが売れない。
一生懸命考えた企画が反応してもらえない。そんな経験、ありませんか?

実は、この問題の根っこにあるのは「自分の視点だけで物事を見てしまう」ことなんです。
私たちは誰でも、自分の好みや価値観を「正しい」と思い込んでしまいがち。
でも、お客様は千差万別。
年齢も、育った環境も、大切にしているものも違います。

だからこそ、経営者には「相手の世界を想像する力」が必要になってきます。
これは、自分とは違う考え方や価値観を、いったん受け入れて理解してみるということ。
この力があるかないかで、商売の幅が大きく変わってくるんです。

「自分の好み」と「お客様の幸せ」は別物

たとえば、コーヒーショップの話です。
昔ながらの喫茶店が好きな人にとっては、マスターが一杯一杯丁寧にドリップしてくれる、重厚な木のカウンター、クラシックが流れる落ち着いた空間こそが「本物のコーヒーを楽しむ場所」です。

一方で、最近増えているおしゃれなカフェは、明るい店内にWi-Fiが完備され、パソコンを広げて作業できる大きなテーブルがあり、インスタ映えするラテアートが人気です。

もし、あなたが「コーヒーは静かな喫茶店でゆっくり味わうもの」と信じている人だったら、どう感じるでしょうか。
「あんな騒がしいカフェで、コーヒーの味がわかるのか」と思うかもしれません。
実際、そう考える人も多いでしょう。

でも、ここで大切なのは、「自分はそう思わないけれど、おしゃれなカフェに行きたくなる人の気持ちもわかる」と考えられるかどうかなんです。

たとえば、フリーランスで働く若い世代にとっては、自宅では集中できないけれど、コワーキングスペースは敷居が高い。
カフェなら、適度な雑音の中で作業に集中でき、美味しいコーヒーも飲める。友達との打ち合わせにも使いやすい。
彼らにとっては、そこで過ごす時間が「快適で生産的な空間」なんです。

もし「自分とカフェ」という関係だけで考えたら、「あんなところには行きたくない」で終わってしまいます。
でも、「あれはあれで好きな人たちは、こういう気持ちで通っているんだよね」と相手の世界を想像することができれば、自分とは違う人たちとの関係性が見えてきます。

これこそが、商売の視野を広げる第一歩なんです。

経営に活かせる「視点の広げ方」

この「相手の世界を想像する」という考え方は、実際の経営で様々な場面に応用できます。

商品・サービス開発の場面

たとえば、あなたが地域密着型の小さなパン屋さんを営んでいるとします。
あなた自身は、添加物を使わず、天然酵母でじっくり発酵させた本格的なパンに強いこだわりがある。
でも、お客様の中には「そんなこだわりよりも、安くて日持ちするパンが欲しい」という人もいるでしょう。

ここで「本物のパンを知らない人たち」と切り捨ててしまうのではなく、「忙しい共働き家庭では、週に一度まとめ買いできるパンのほうが助かるんだよね」と理解してみる。
すると、「こだわりの天然酵母パン」と「日持ちする普段使いのパン」の両方を揃えるという選択肢が見えてきます。

接客・コミュニケーションの場面

お客様からクレームを受けたとき、「こちらは精一杯やっている」という自分の視点だけで対応すると、関係がこじれてしまいがち。
でも、「この人は、こういう期待をしていて、それが裏切られたと感じているんだな」と相手の世界を想像できれば、適切な対応が見えてきます。

もうひとつ大切なこと:「昔の自分」を覚えておく

他人の気持ちを理解するのと同じくらい大切なのが、「昔の自分の気持ちを覚えておく」ことです。

人間は、今の自分がかわいいから、今の自分を中心に考えて、昔の自分を忘れようとしたり、否定したりしがちです。
でも、「あのときに自分はこう思った」という気持ちは、今の自分にはない大切な視点なんです。
たとえば、会社員時代には「経営者は楽でいいな。好きなように決められるし、働く時間も自由だ」と思っていた人が、いざ独立して経営者になると、「こんなに大変だとは思わなかった」と気づくことがあります。
資金繰り、人材育成、クレーム対応、すべてが自分の責任。
休日も頭の中は仕事のことでいっぱいです。

このとき、もし「会社員時代は何もわかってなかった。経営者の苦労を知らなかった」と昔の自分を否定してしまったら、その人には「会社員として働く人の気持ち」がわからなくなってしまいます。

でも、その気持ちを忘れずにいれば、「経営者として責任の重さを感じる」視点と、「会社員として安定を求める」視点の両方を持つことができます。
そうすれば、従業員さんが「もっと給料を上げてほしい」と言ったときに、「経営が厳しいのに、わがままだな」と切り捨てるのではなく、「会社員にとって給料は生活の基盤だから、不安になるのも当然だよね」と理解できるようになるんです。

経営における「経験の引き出し」の実例

たとえば、あなたが小さな美容室を経営しているとします。

開業したばかりの頃は、資金も少なく、自分一人でお店を切り盛りしていました。
そのとき、「大手チェーン店は、マニュアル通りの接客で心がこもっていない」と感じていたかもしれません。

でも、その後、従業員を雇うようになり、お店が成長すると、「ある程度のマニュアルがないと、サービスの質にばらつきが出てしまう」ということに気づきます。
今では、基本的な手順を文書化して、新人教育に活用しているかもしれません。

ここで大切なのは、「昔の自分は間違っていた」と否定するのではなく、両方の視点を持っておくことです。

開業時の「一人ひとりのお客様に心を込めて向き合いたい」という気持ちと、成長後の「安定したサービスを提供するには仕組みが必要」という気持ち。この二つは矛盾しているようで、実は両方とも正しいんです。

この両方の視点を持っていれば、「マニュアルは作るけれど、一人ひとりのお客様に合わせた柔軟な対応も大切にする」というバランスの取れた経営ができるようになります。

また、従業員さんが「マニュアルばかりで窮屈だ」と感じているときにも、「その気持ち、わかるよ。私も開業した頃は、マニュアルなんてまっぴらだと思っていたから」と共感できます。
その上で、「でも、お客様に安定したサービスを提供するには、基本の型も必要なんだ」と、両方の視点から説明できるんです。

経営者として「視点を増やす」習慣

では、具体的にどうすれば、この「視点を広げる力」を身につけられるのでしょうか。

「なぜ?」を3回繰り返す

お客様の行動を見たとき、「なぜこの人はこの商品を選んだのだろう?」「なぜこのタイミングで買ったのだろう?」「なぜこの価格なら納得したのだろう?」と、3回「なぜ?」を繰り返してみてください。
自分の思い込みを超えた理解が得られます。

異なる意見に耳を傾ける

従業員さんやお客様から、自分の考えと違う意見が出たとき、すぐに否定せず、「この人はなぜそう考えるのだろう?」と、いったん受け止めてみる習慣をつけましょう。

過去の自分の日記やメモを見返す

開業時の想い、困難を乗り越えたときの気持ち、失敗から学んだこと。これらを記録しておいて、定期的に見返すことで、「経験の引き出し」が増えていきます。

まとめ:多様な視点が、強い経営をつくる

ビジネスの世界では、ときには自分とはまったく異なる価値観や正反対の意見を持つ人たちに向けて、メッセージを発信することもあります。

そう考えると、今現在の自分の考え方を「これが正しい」と決めつけすぎることなく、昔から今に至るまでの様々な視点を、自分の中に蓄積していくことが、いかに大切かわかるのではないでしょうか。

「自分はこう思う。でも、違う考え方をする人の気持ちもわかる」

この柔軟さこそが、小さな会社を長く続けていくための大きな力になります。
お客様の多様性を理解し、従業員さんの様々な考えを受け止め、時代の変化にも対応していける。
そんな懐の深い経営者を目指していきましょう。

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