売れる商品の二つの戦略
はじめに
「そこそこ良い商品なのに、なぜか売れない」
こんな経験はありませんか?
クオリティに問題があるわけでもない。
価格だって、決して高すぎるわけでもない。
なのに、なぜか手応えがない。
問い合わせも来ない。リピートもない。
その原因は、商品の品質ではなく、「誰のための商品か」が曖昧になっていることにあるかもしれません。
今の市場には、売れる商品に共通した法則があります。
売れる商品の条件は2つに絞られます。
多くの人のニーズに幅広く応えられること。
または、ごく少数の人にとって『これでなければ』と思わせる圧倒的な魅力を持つこと。
その中間にある商品は、今の市場では埋もれてしまいます。
「中間」とは、つまり「誰でも使えそうだけど、誰かに特別刺さるわけでもない」商品のことです。
かつてはこうした商品でも十分売れていた時代がありました。
しかし今は違います。
なぜそうなったのか、背景から順に見ていきましょう。
「中間の商品」が売れなくなった背景
選択肢が、爆発的に増えた
インターネットが普及する前、消費者が商品を選ぶ場所は限られていました。
近くのお店、テレビで見たもの、知人の口コミ。
選択肢が少なければ、「まあこれでいいか」という購買が自然と生まれます。
ところが今は、スマートフォン一つで世界中の商品にアクセスできます。
「なんとなく使えそう」な商品に、わざわざお金を払う必要がなくなった。
自分の好みにぴったり合う商品が、少し探せば必ず見つかる時代になったのです。
その結果、消費者の目は格段に厳しくなりました。
「特に理由はないけど買う」という購買行動が減り、「これを買う明確な理由がある」という購買が増えています。
価値観が多様化した
かつては「みんなが持っているから私も」という消費が珍しくありませんでした。
流行を追い、大多数に合わせることが一つの価値基準だった時代です。
しかし今は、「自分らしさ」を大切にする消費者が増えています。
同じ価格を払うなら、自分の価値観やライフスタイルに合ったものを選びたい。
そういう感覚が、特に30〜50代の消費者の間でも広がっています。
この変化の中で、「万人向けを狙っているけれど、誰にも特別には響かない」商品は、静かに市場から外れていくことになります。
2つの道を、具体的に理解する
道①:多くの人のニーズに幅広く応えられる商品
一つ目は、年齢・性別・目的を問わず、多様な人の多様なニーズに応えられる商品・サービスです。
わかりやすい例は、総合スーパーやコンビニです。
食品から日用品、衣類まで何でも揃う。
誰が来ても「欲しいものが見つかる」という安心感が価値になっています。
ただしこの方向を実現するには、豊富な品揃え・広い店舗・物流インフラ・大きな資本力が必要です。
個人事業や従業員10名前後の中小企業が、同じ方向で大手と戦うのは、消耗するだけになってしまうことがほとんどです。
道②:少数の人に「これでなければ」と思わせる商品
二つ目は、対象となる人の数は少なくても、その人たちにとっては「他では代わりが利かない」と感じさせる商品・サービスです。
市場の規模は小さい。
でも、そこにいるお客さまの「切実さ」は非常に高い。
その切実なニーズに応えることができれば、価格競争に巻き込まれにくく、口コミで広がりやすく、強いリピートが生まれます。
多くの中小企業・個人事業にとって、現実的かつ強力な選択肢はこちらです。
事例:「左利き専門の文具店」が全国から客を集めるまで
ある地方の小さな文具店の話です。
もともとは一般的な文具店として営業していましたが、大型文具チェーンの出店や、ネット通販の台頭で、売上は年々落ち込んでいきました。
品揃えでも、価格でも、大手にはとても敵わない。「このまま同じことを続けていたら、遅かれ早かれ廃業になる」と危機感を持った店主は、思い切った方向転換を決めました。
着目したのは、「左利きの人の不便さ」でした。
世の中の文具の大半は、右利きを前提に設計されています。
ハサミ・カッター・定規・万年筆・バインダー……左利きの人が「使いにくい」と感じながら、右利き用を仕方なく使っているケースは非常に多い。
しかし、左利き専用の文具を専門的に取り扱う店は、全国を見渡してもほとんど存在しませんでした。
店主は、左利き専用・左利き対応の文具を国内外から徹底的に集め、左利き専門の文具店としてリニューアルオープンしました。
左利きの人口は全体の約10〜15%。決して多数派ではありません。
しかし、だからこそ「やっとこういうお店ができた」という反応は大きく、SNSで話題になり、地元だけでなく全国から注文が入るようになりました。
「左利きのプレゼントを探していた」という右利きの顧客も現れ、ギフト需要も生まれました。
価格は一般の文具と比べて高いものもありますが、「ここでしか買えない」という価値があるため、価格を理由に離れるお客さまはほとんどいません。
この文具店が証明したのは、「対象を絞ることは、客を減らすことではない」ということです。
むしろ対象を絞ることで、「この店のためならわざわざ来る」というお客さまが集まってくるのです。
中小企業・個人事業はどちらを選ぶべきか
改めて整理しましょう。
「多くの人のニーズに幅広く応える」方向は、大きな資本と規模がなければ実現が難しい。
一方、「少数の人に圧倒的な魅力を届ける」方向は、小さな組織だからこそ機動力を活かせる領域です。
大手企業が参入しない理由の一つは、「市場が小さすぎて、大きな投資に見合わない」からです。
しかし、小さな会社にとっては、その「小さな市場」で十分に利益を出すことができる。
ニッチな市場のNo.1は、大きな市場の中堅よりも、はるかに安定した経営につながります。
「うちの規模では、大きな市場を狙えない」と悩む必要はありません。
小さいからこそ、小さな市場でトップになれるのです。

まとめ:「中間」を捨てることが、生き残る第一歩
売れる商品の条件は2つ。
多くの人に幅広く応えられるか、少数の人に「これでなければ」と思わせられるか。
その中間にある商品は、今の市場では埋もれてしまいます。
もし今、売上に伸び悩みを感じているなら、こう自問してみてください。
「この商品は、誰のために存在しているのか?」
答えが「なんとなく、広い層に使ってもらえれば」という感覚であれば、それが手応えのなさの原因かもしれません。
逆に「この悩みを持つ人のためだけに作った」と言い切れる商品には、自然と説得力が生まれます。
ターゲットを絞ることを、怖がらないでください。
対象を絞ることは、客を失うことではなく、「本当に必要としている人に確実に届ける」ことです。
「誰かのためだけの商品」は、「誰でも使える商品」より一見弱そうに見えて、実はずっと強い。
それが今の市場の現実です。あなたのビジネスが「誰のためのものか」を、今一度はっきりさせることから始めてみましょう。
