利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「人が集まる意味」を考える ─ 会議やイベントを”本当に価値ある時間”にするために

「人が集まる意味」を考える ─ 会議やイベントを”本当に価値ある時間”にするために

人が集まる意味を考える

はじめに:その集まり、本当に意味がありますか?

「歓迎会を開きます」「忘年会をやりましょう」「定例会議の時間です」—私たちは日常的にさまざまな「集まり」を開いています。
でも、ふと立ち止まって考えてみてください。
その集まりは、参加者の心に何かを残しているでしょうか?

「毎月やっているから」「去年もやったから」という理由だけで続けている会議やイベントはありませんか? 
形だけの集まりに、貴重な時間とお金を費やしていませんか?

実は、人が集まることには大きな可能性があります。
ただし、それは「なんとなく」ではなく、明確な意図を持って設計されたときに初めて発揮されるものです。
今回は、あなたの会社の会議やイベントを「参加してよかった」と心から思える時間に変えるためのヒントをお伝えします。

なぜ「当たり前の目的」ではダメなのか

「新入社員が馴染めるように歓迎会を開きます」
「一年を振り返るために忘年会をします」

こうした目的は一見もっともらしく聞こえます。
しかし、よく考えてみると、これは「当たり前すぎて、何も言っていないのと同じ」なのです。

たとえるなら、レストランが「おいしい料理を出します」と宣言するようなもの。
それは当然のことであって、そのお店ならではの魅力は何も伝わってきません。

「誰も反対しない目的」は、裏を返せば「誰の心も動かさない目的」です。
無難であるがゆえに、参加者の記憶にも残らず、何かが変わるきっかけにもなりません。

では、どうすれば人の心を動かす集まりになるのでしょうか?

心を動かす集まりに必要な三つの要素

「特殊性」─ 的を絞るほど、人は集まりたくなる

意外に思われるかもしれませんが、「みんなに来てほしい」と間口を広げるほど、かえって人は集まりにくくなります。
反対に、対象を絞り込むほど、「これは自分のための集まりだ」と感じて参加意欲が高まるのです。

これは「居場所」の感覚と深く関係しています。
人は「自分がここにいていい理由」がはっきりしている場所に安心感を覚えます。
「誰でもどうぞ」という集まりより、「こういう人のための集まりです」と明示されている方が、かえって居心地がよいのです。

ただし、絞り込みすぎると該当者がいなくなってしまいます。
大切なのは、参加者が「自分ごと」として感じられる程度に具体的で、かつ現実的な人数が集まる範囲を見極めることです。

「独自性」─ 「一期一会」の精神を持つ

京都の茶道には「一期一会」という言葉があります。
「この出会い、この瞬間は、人生で二度と訪れない」という意味です。

たとえ同じメンバーで来月また集まるとしても、その時には一人ひとりが新しい経験を経て、少し違う人間になっています。
だからこそ、今日のこの集まりは、今日しか存在しない唯一無二のものなのです。

この意識を持つだけで、集まりへの向き合い方が変わります。
「いつもの会議」ではなく、「今日この瞬間にしか生まれない対話の場」として捉えることで、参加者の集中度も、そこから生まれる成果も大きく変わってきます。

「明確な主張」─ 賛否が分かれるくらいがちょうどいい

「みんなで仲良く」「情報共有のため」—こうした目的は誰も反対しませんが、だからこそ何の指針にもなりません。

たとえば、結婚式の目的を「愛を祝う」とすると、当たり前すぎて何の特徴もない式になってしまいます。
しかし「両親への感謝を伝える式にする」と決めれば、招待客の優先順位も、演出の方向性も、自然と決まってきます。

会議やイベントも同じです。
この集まりで何を実現したいのか」を、誰かが「それは違うのでは?」と言いたくなるくらい具体的に定めること。
それが、意味のある集まりへの第一歩です。

事例:ある工務店が変えた「協力業者会」

ある地方の工務店の話をご紹介します。
従業員8名のこの会社では、毎年1回、大工さんや電気工事、塗装などの協力業者を集めた「協力業者会」を開いていました。

従来の会は、社長の挨拶、今年の実績報告、来年の方針説明、そして懇親会という流れ。
参加者は30名ほどで、毎年同じような内容が続いていました。
正直なところ、「義理で来ている」という雰囲気の業者さんも少なくありませんでした。

ある年、社長は思い切って会の形式を変えることにしました。

まず、会の目的を「お客様からいただいた”ありがとう”を、現場で汗を流してくれた職人さんたちと分かち合う」と定めました。
実績報告や方針説明は事前に書面で送り、当日は一切行いません。

代わりに、その年に完成した物件のお客様から届いた手紙やアンケートを、実際に担当した職人さんの名前とともに読み上げる時間を設けました。
「大工の山田さんが丁寧に説明してくれて安心できました」「電気屋さんが子どもの部屋のコンセントの位置を一緒に考えてくれました」—そうした声を、一つひとつ紹介していったのです。

会場の空気が変わりました。普段は黙々と作業をしている職人さんたちの顔がほころび、照れくさそうに、でも嬉しそうにしている姿がありました。
懇親会では「来年もいい仕事をして、また名前を呼ばれたい」という声があちこちで聞こえました。

この変化のポイントは何だったのでしょうか。

それは「協力業者への感謝」という、一見すると反対意見が出そうな、偏った目的を掲げたことです。
「会社の方針を伝える」という目的なら誰も反対しませんが、それは主催者側の都合です。
「職人さんへの感謝」に振り切ったことで、参加者にとって「自分のための会」になったのです。

もちろん、業績報告も大切です。
でも、それは書面で十分伝わります。
わざわざ集まる価値があるのは、文字では伝わらない「気持ち」を共有することだった—社長はそう気づいたのです。

あなたの会社でできること

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。
次の会議やイベントを企画する前に、以下の問いかけをしてみてください。

「この集まりは、ほかの集まりと何が違うのか?」

毎月の定例会議であっても、「今月のこの会議でしか話せないこと」があるはずです。
それを意識するだけで、会議の質は変わります。

「全員を満足させようとしていないか?」

八方美人な企画は、結局誰の心にも残りません。
「今回はこの層に届ける」と決める勇気を持ちましょう。
何かを切り捨てることは、誰かを疎外することではありません。
むしろ、本当に届けたい人に、確実に届けるための選択なのです。

「誰かが”それは違う”と言いたくなるくらい、具体的な目的になっているか?」

「情報共有のため」ではなく、「新商品の課題を三つに絞り込むため」。
「親睦を深めるため」ではなく、「普段話さない部署の人と一つ以上の共通点を見つけるため」。
このくらい具体的になって初めて、集まりは意味を持ちます。

まとめ:集まりは「主張を宣言する場」

人が集まることには、大きなエネルギーが必要です。
参加者は時間を割き、場合によっては移動し、ほかの予定を調整してやってきます。
主催する側も、準備に多くの労力をかけています。

そのエネルギーに見合う価値を生み出すためには、「なぜ、わざわざ集まるのか」を真剣に考える必要があります。

集まりとは「自分の主張を宣言する場」です。
「この時間をどう使いたいのか」「参加者に何を持ち帰ってほしいのか」—その意志を明確にすることで、会議は単なる報告の場から対話の場へ、イベントは義務的な行事から記憶に残る体験へと変わっていきます。

次に会議やイベントを企画するとき、ぜひ立ち止まって考えてみてください。
「この集まりならではの目的は何だろう?」と。
その問いかけが、あなたの会社の「集まり」を、本当に価値ある時間に変える第一歩になるはずです。

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