仕事のやり方を統一して成果を上げる
はじめに:なぜ「仕事のやり方」がバラバラだと困るのか
「うちの会社は、ベテランの田中さんがいないと回らない」
「新人が入っても、教える人によって言うことが違う」
「同じ仕事なのに、人によって時間も品質もバラバラ」
こんなお悩みを抱えていらっしゃいませんか?
従業員が10名前後の会社では、一人ひとりの存在感が大きく、「あの人にしかできない仕事」が自然と生まれがちです。
これは一見、その人の能力が高いことの証のように思えます。
しかし、実はここに大きな落とし穴があります。
たとえば、料理に例えてみましょう。
家庭料理であれば、「お母さんの味」として、レシピがなくても問題ありません。
でも、飲食店を経営するなら話は別です。
シェフが休んだら味が変わる、新人が作ると全然違うものが出てくる―これでは、お客様に安定したサービスを届けることができません。
会社の仕事も同じです。
誰かの頭の中だけにノウハウがあって、その人がいないと仕事が止まる。
これを「属人化」と呼びます。
属人化が進むと、その人が休んだとき、辞めたとき、会社は大きな打撃を受けることになります。
今回は、この問題を解決するための「標準化」という考え方についてお話しします。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、要するに「みんなで一番良いやり方を決めて、それを共有しましょう」ということです。
標準化とは何か:レシピを作るようなもの
標準化とは、簡単に言えば「会社の仕事のレシピを作ること」です。
家庭で作るカレーは、作る人によって味が変わります。
玉ねぎを炒める時間も、スパイスの量も、人それぞれ。
でも、全国チェーンのカレー店では、どの店舗に行っても同じ味がします。
それは、調理手順や分量が細かく決められた「レシピ」があるからです。
標準化とは、まさにこの「レシピ」を会社の仕事全般について作っていくことです。
具体的には、次の2つのことを行います。
① バラバラなノウハウを一本化する
同じ仕事でも、Aさんはこうやる、Bさんはああやる、ということがあります。
それぞれに良いところがあるかもしれませんが、バラバラのままでは、新人は誰の真似をすればいいのか分かりません。
そこで、それぞれのやり方を比べて、一番良いものを選び、それを「会社のやり方」として統一します。
② 属人化したノウハウを見える化する
ベテラン社員の頭の中にだけある「コツ」や「勘どころ」を、言葉や文章にして、誰でも分かる形にします。
長年の経験で身につけた技術を、「見える」状態にするわけです。
この2つを通じて、「最も良い仕事のやり方」を見極め、それを「仕事の基準」として会社全体で共有する。これが標準化の目的です。
標準化がもたらす3つのメリット
仕事の品質が安定する
標準化によって、「誰がやっても同じ品質の仕事ができる」状態が生まれます。
お客様から見れば、担当者によってサービスの質が変わらない、安心できる会社になります。
ムダ・ムラ・ムリがなくなる
仕事のやり方を見直す過程で、「この作業、本当に必要?」「もっと簡単にできるのでは?」という気づきが生まれます。
2つの作業を1つにまとめる、1時間かかっていた仕事を30分に短縮する、といった改善につながります。
これは、体についた余分な脂肪を落として、引き締まった体を作るようなものです。
無駄をそぎ落とすことで、会社全体の動きがスムーズになります。
ベテランも新人も成長できる
新人にとっては、「正しいやり方」が明確になるので、迷わずに仕事を覚えられます。
一方、ベテラン社員にとっても、自分のやり方を振り返る良い機会になります。
「なるほど、こんな方法があったのか」「この方法なら確かにうまくいく」と、新たな発見があるかもしれません。
標準化の5つのステップ
では、実際にどのように標準化を進めればよいのでしょうか。5つのステップに分けて説明します。
ステップ① 現状を見える化する
まずは、「今、どんなやり方で仕事をしているのか」を洗い出すことから始めます。
「Aさんはこうしている」「Bさんは別のやり方をしている」「実はCさんのやり方が一番早い」など、現状を把握します。
おそらく、「こんなにやり方がバラバラだったのか」「この作業、無駄じゃないか」という発見があるはずです。
これは、家の大掃除で押し入れの中身を全部出してみるようなものです。
まず全体を見渡さないと、何を残して何を捨てるべきか判断できません。
ステップ② それぞれのやり方を検討する
次に、洗い出したやり方を比較・検討します。
「どのやり方が一番効率的だろう」
「どのやり方が一番成果につながるだろう」
「誰でもできるやり方はどれだろう」
この検討の際に大切なのは、「誰でもできるか」という視点です。
いくら素晴らしい方法でも、特定の人にしかできないものでは、会社の基準にはなりません。
ステップ③ 最も良いやり方に統一する(標準化)
検討の結果、「これがベスト」というやり方を決めて、会社のルールとして統一します。
ここで重要なのは、そのやり方が次の条件を満たしていることです。
・誰が見ても分かる(曖昧な部分がない)
・誰がやっても同じようにできる(特別な才能がなくてもできる)
この条件を満たさないと、結局「分かる人だけが分かる」という状態に戻ってしまいます。
ステップ④ 会社全体に徹底する(共有化)
決まったやり方を、全員に伝え、全員が習得できるようにします。
「このやり方で仕事をしましょう」と伝えるだけでなく、実際に全員ができるようになるまでフォローすることが大切です。
マニュアルを作る、研修を行う、先輩が後輩に教える、など、会社の規模や状況に合った方法を選びましょう。
ステップ⑤ さらに改良・改善して引き継ぐ(継承化)
標準化は、一度やって終わりではありません。
「もっと良いやり方を見つけた」
「こっちの方が簡単にできる」
こうした改善のアイデアが出てきたら、それを取り入れて、基準をアップデートしていきます。
そして、その改善された基準を次の世代に引き継いでいく。
これが「継承化」です。
事例:ある工務店の取り組み
ここで、実際に標準化に取り組んだ会社の事例をご紹介します。
従業員8名の工務店A社では、現場監督によって仕事の進め方がまったく違っていました。
ベテランの山田さんは「段取り八分」で事前準備を徹底。
一方、中堅の鈴木さんは現場で臨機応変に対応するスタイル。
お客様への報告のタイミングも、書類の書き方も、人によってバラバラでした。
あるとき、山田さんが体調を崩して長期休養することになりました。
すると、山田さんが担当していた現場で次々と問題が発生。
「山田さんはどうやっていたんだ?」と聞いても、誰も正確には分かりません。
この経験をきっかけに、社長は標準化に取り組むことを決意しました。
まず、全員で「現場の進め方」を洗い出しました。
すると、山田さんには「着工前に必ず近隣挨拶をして、工事スケジュールを説明する」という習慣があることが分かりました。
これがクレーム防止に大きく貢献していたのです。
一方で、鈴木さんには「毎日の作業終了時に写真を撮って記録する」という習慣がありました。
これは、後から「言った言わない」のトラブルを防ぐのに役立っていました。
A社では、こうした各自の「良いやり方」を集めて、「現場運営マニュアル」を作成しました。
着工前の近隣挨拶の仕方、お客様への報告のタイミング、毎日の記録の取り方など、誰でも同じようにできる形でまとめたのです。
その結果、新しく入った若手社員も、迷うことなく現場を任せられるようになりました。
また、ベテラン社員同士も「こんなやり方があったのか」と互いに学び合う機会が生まれ、会社全体のレベルが上がったそうです。

まとめ:標準化は「みんなで強くなる」ための仕組み
標準化というと、「マニュアル人間を作るのか」「個性がなくなるのではないか」と思われるかもしれません。
しかし、標準化の本質は「足並みを揃えて、全員で高いレベルを目指す」ことにあります。
野球チームに例えるなら、全員が基本の守備や走塁をきちんとできるようになった上で、それぞれの持ち味を発揮する。
基礎がしっかりしているからこそ、応用ができるのです。
標準化の5つのステップをもう一度整理しておきましょう。
1.見える化:今のやり方を洗い出す
2.検討:どれが一番良いか比べる
3.標準化:最も良いやり方に統一する
4.共有化:全員がそのやり方を習得する
5.継承化:改善しながら次の世代に引き継ぐ
「うちは少人数だから、阿吽の呼吸でやれている」と思っていても、人が増えたとき、誰かが抜けたとき、必ず壁にぶつかります。
今のうちから少しずつ、会社の「レシピ」を整えていく。
それが、会社を長く続けていくための大切な土台になるのです。
まずは、一つの業務から始めてみてはいかがでしょうか。
「この仕事、人によってやり方が違うな」と思うものを一つ選んで、みんなで話し合ってみる。
そこから、標準化への第一歩が始まります。

コメント Comments
コメント一覧
コメントはありません。
トラックバックURL
https://wakaruto.jp/%e3%80%8c%e4%bb%95%e4%ba%8b%e3%81%ae%e3%82%84%e3%82%8a%e6%96%b9%e3%80%8d%e3%82%92%e7%b5%b1%e4%b8%80%e3%81%99%e3%82%8b%e3%81%a8%e3%80%81%e4%bc%9a%e7%a4%be%e3%81%af%e5%bc%b7%e3%81%8f%e3%81%aa%e3%82%8b/trackback/