利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「伝わる名前」と「動かす名前」は、まったく別モノです

「伝わる名前」と「動かす名前」は、まったく別モノです

プロジェクト名が社員を動かす理由

その名前、”情報”で止まっていませんか?

社内で新しい取り組みを始めるとき、まず決めるのが「名前」です。
朝礼で発表して、メールで共有して、掲示板に貼り出す。
ところが、せっかくの施策なのに、なぜか社員の反応が薄い。
参加率も上がらない。
「ちゃんと伝えたのに、なぜ動いてくれないんだろう?」—そんな経験はないでしょうか。

実は、その原因が「名前のつけ方」にあるケースが少なくありません。

たとえば、職場の雰囲気をよくしようと「あいさつ強化月間」という施策名が発表されたとしましょう。
意味はすぐにわかります。
今月はあいさつを頑張りましょう、ということだな、と。
間違ってはいません。
でも、それだけなのです。
「情報としては伝わっている」けれど、「気持ちには届いていない」。
ここに大きな落とし穴があります。

名前の役割は、情報を伝えることだけではありません。
本当に大切なのは、人を「動かす」こと。
もっと言えば、「巻き込む」ことです。

「あいさつ強化月間」と聞いて、「よし、やるぞ!」と前のめりになる人はどれくらいいるでしょうか。
正直なところ、「強化って言われても……」「学校の標語みたいだな」と感じる人のほうが多いかもしれません。
なぜなら、その名前には「参加する意義」や「自分にとってのメリット」がまったく含まれていないからです。

巻き込めない名前は、参加率の低さに直結します。
参加率が低ければ施策は浸透せず、続かない。
やらされ感だけが残り、不満が溜まり、通常業務にまで悪影響が及ぶ。
こうなると、良かれと思って始めた取り組みが、逆にチームの空気を悪くしてしまうのです。

なぜ「説明するだけの名前」では人が動かないのか

ここで少し、私たちの日常を振り返ってみましょう。

スーパーで「栄養補助食品」と書かれた商品と、「一本満足バー」と書かれた商品が並んでいたら、どちらに手が伸びるでしょうか。
「栄養補助食品」は正確な説明ですが、それだけです。
一方、「一本満足バー」には「これ一本で満足できるんだ」という体験のイメージが含まれています。

社内の取り組みも、これと同じです。
名前が「何をするか」の説明で終わっていると、聞いた人の頭の中には「作業の追加」としか映りません。
でも、名前に「なぜやるのか」「やるとどうなるのか」のヒントが入っていると、聞いた人は自分なりに意味を見出しやすくなります。

つまり、名前は「ラベル」ではなく、「入り口」なのです。

名前は「つけたら終わり」ではなく「はじまり」

ここでお伝えしたいのは、名前は「つけたら終わり」ではなく、むしろ「はじまり」だということです。

「あいさつ強化月間」では、あいさつを頑張りましょうという号令しか伝わりません。
共感も興味も湧かない。「へえ、そうですか」で終わってしまう。
そこから会話が広がることも、自発的な参加が生まれることもない。
言い方は厳しいですが、巻き込めない名前は、期待した結果を生まないという意味で、ビジネス的には失敗です。

反対に、良い名前とは何でしょうか。
それは「面白い名前」や「インパクトのある名前」とは少し違います。
大事なのは、その名前に「続き」があるかどうか。
聞いた人が「それって何?」「もっと知りたい」と思えるかどうか。
名前をきっかけに会話が生まれ、共感が広がり、行動につながっていく。
そういう「続きをデザインできている名前」こそが、良い名前なのです。

【事例】ある町の電気工事会社の「声かけリレー」

従業員12名の電気工事会社で、実際にあった話をご紹介します。

この会社では、社員同士のコミュニケーション不足が課題でした。
現場ごとにチームが分かれるため、普段顔を合わせない社員同士の関係が希薄になり、情報共有のミスや連携不足が起きていたのです。

最初、社長が打ち出したのは「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」。
内容は的確です。
でも、社員たちの反応は冷ややかでした。
「活性化って、何をすればいいの?」「結局、飲み会を増やすってこと?」。
名前が大きすぎて抽象的で、何をすればいいのか誰もピンときませんでした。

そこで社長は、アプローチを変えました。新しい名前は「声かけリレー〜ひと言が現場を救う〜」。

仕組みはシンプルです。
朝、現場に出る前に「今日、ひと声かけてほしい相手」をひとりだけ決める。
「○○さん、昨日の配線ありがとう」「△△さん、体調どうですか」—たった一言でいい。
そして、声をかけられた人が翌日、また別の誰かに声をかける。
リレーのようにつないでいく。

名前に「リレー」という言葉が入っていたことで、「自分が止めたらつながらない」という軽い責任感が生まれました。
また、「ひと言が現場を救う」というサブタイトルが、日頃の小さな声かけに意味を与えました。

ある社員は、「”コミュニケーション活性化”って言われてもピンとこなかったけど、”声かけリレー”なら何をすればいいかすぐわかった」と話していたそうです。
さらに、この取り組みがきっかけで、現場間の情報共有がスムーズになり、ある工事では事前の声かけのおかげで配線ミスを未然に防ぐことができた。

名前が変わっただけで、取り組みの「意味づけ」が変わり、人の行動が変わった。
これはまさに、名前が「はじまり」として機能した好例です。

「動かす名前」をつけるための3つのヒント

では、実際にどうすれば「巻き込める名前」をつけられるのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
次の3つを意識してみてください。

「何をするか」だけでなく「なぜやるか」を入れる

「あいさつ強化月間」は「何をするか」だけ。
ここに「なぜやるか」を加えるだけで印象が変わります。
たとえば「”おはよう”から始まる、チームづくり月間」なら、あいさつの先にある目的が見えてきます。

「やった先の良いこと」をイメージさせる

人は「やらなきゃいけないこと」より「やると良いことがあること」に動きます。
先ほどの電気工事会社の例でいえば、「コミュニケーション活性化」ではなく「ひと言が現場を救う」という未来を見せたことがポイントでした。

名前を聞いて「会話」が生まれるかを確かめる

良い名前には、聞いた人が「それってどういうこと?」と聞き返したくなる余白があります。
逆に、聞いただけで「ああ、はいはい」と完結してしまう名前は、会話も行動も生まれにくい。
社内で発表する前に、一人か二人に名前を伝えてみて、反応を確かめてみるのもおすすめです。

まとめ:名前は、最初の「巻き込み装置」

社内の取り組みがうまくいくかどうかは、内容の良し悪しだけでは決まりません。
どんなに良い施策でも、社員が「自分ごと」として受け止めなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。

そして、社員が最初に触れるのが「名前」です。
名前は、いわば取り組みの「第一印象」。
ここで「なるほど、面白そうだな」「自分にも関係ありそうだな」と思ってもらえるかどうかが、その後の参加率や定着率を大きく左右します。

名前をつけるとき、つい「正確に内容を伝えること」に意識が向きがちです。
もちろん正確さは大事です。
でも、それだけでは足りない。
「この名前で、人は動くだろうか?」「続きが生まれるだろうか?」—その問いを持つだけで、つける名前はずいぶん変わってきます。

名前は「つけたら終わり」ではなく、「はじまり」。その意識を持つことが、社内の取り組みを成功に導く、最初の一歩になるはずです。

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