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「反面教師」から学ぶ、中小企業のための差別化戦略

「反面教師」から学ぶ、中小企業のための差別化戦略

ライバルの弱点から勝機を見出す

どれほど「良いお手本」に見えるビジネスであっても、完全無欠な会社はありません。
だからこそ、「あの会社のここがちょっと残念だな」「ここが不便だな」という“至らないところ”を見つけて、あえて反面教師にすることには大きな意味があります。

すでにあるサービスで満たされていない「モヤモヤ」こそが、新しいビジネスのタネになります。
良いお手本の弱点を見極めて、「では、その逆をやってみたらどうなるだろう?」と考えてみる。
これが、今回お伝えしたい「反面教師による発想法」です。

なぜ「近い世界の反面教師」が有効なのか

まったく知らない業界のビジネスを見ても、細かい良し悪しは分かりにくいものです。
一方で、自分の会社と近い世界「同じ業種、同じ地域、同じ価格帯のライバル」であれば、

・日頃から見聞きしている
・お客様として利用したこともある
・現場の苦労も何となく想像がつく

こうした理由から、「良いところ」だけでなく「ここはお客様が困っていそうだな」という弱点にも気づきやすくなります。

そして、その弱点をあえてひっくり返すことで、

・発想しやすい
・ライバルと正面からぶつからずにすむ

という、2つの大きなメリットが生まれます。

メリット①:アイデアを発想しやすい

身近なビジネスを反面教師にすると、アイデアの出発点が作りやすくなります。

1.まず、特徴のあるビジネスをいくつか挙げる
2.「お客様が不便に感じていそうな点」「好き嫌いが分かれそうな点」を洗い出す
3.それを逆さにしてみる

たとえば、

・「予約が取りづらい人気店」→「予約なしでいつでも入れるお店」
・「とても安いが、スタッフが忙しそうで相談しづらい」→「値段は少し高いが、じっくり相談できる」

というように、「反転させる」だけで、発想のきっかけがいくつも生まれます。

これは、日常生活でもよく使う発想法です。
たとえば、「立ち食いそば」の逆は「ゆっくりくつろげるそば屋」ですし、「量が多い定食屋」の逆は「量は少なめだが、健康志向で素材にこだわる定食屋」といった具合です。

メリット②:ライバルと正面から戦わなくてよい

もう一つのメリットは、ライバルと同じ土俵で殴り合わずにすむことです。

今すでにうまくいっている会社は、自社の「上得意さん」を大切にし、そのお客様向けにビジネスの仕組みを最適化しています。
設備投資、人員配置、広告の打ち方、価格設定……すべてが今のターゲットに合わせて組み立てられているわけです。

その状態で、別の会社が、

「あの会社とは逆のタイプのお客様に、逆のコンセプトでサービスを始めた」

としても、既存の会社がすぐに真似するのは簡単ではありません。

・まったく違うやり方(オペレーション)を求められる
・これまで持っていなかった人材や設備が必要になる

いま大事にしているお客様のニーズと矛盾してしまう

といった理由から、「頭では分かっても、実際には動けない」という状況になりやすいのです。

つまり、ライバルを反面教師にして逆のポジションを取ることができれば、そもそも同じお客様を取り合わずにすみます。
それぞれが違うお客様に向き合いながら、共存共栄しやすくなるのです。

業界は「逆、また逆」で発展していく

多くの業界の歴史を見ていくと、

「ある会社が新しい市場をつくる」
→「それとは逆のポジションをとる会社が現れる」
→「さらに、その逆を行く会社が現れる」

という流れが、繰り返し起きています。

大型バイクの例

かつてアメリカでは、オートバイといえば、

・黒い革ジャンの中年男性
・ハーレーダビッドソン
・背筋を伸ばしてどっしり乗る、大きくて重いバイク

というイメージでした。

ここに、日本のホンダが登場します。
ホンダは「反面教師」の発想から、あえて逆を提案しました。

・若者や女性でも気軽に乗れる
・街中の移動に便利な、小さくて扱いやすいオートバイ
・生活の足としてのオートバイ

これにより、「バイク=一部のマニアのもの」から、「誰でも使える実用品」へとイメージを広げ、オートバイ市場を一気に広げました。

すると今度は、ハーレーダビッドソンが逆転の発想で動きます。

・ただの移動手段としてではなく、
・「ハーレーと共に生きるライフスタイル」そのものを売る

という戦略です。
バイクそのもの(モノ)ではなく、「ハーレー仲間とのツーリング」や「ハーレーオーナーである誇り」といった体験(コト)を前面に出したのです。

このように、「ある会社の逆を行く」、さらに「その逆を行く」という形で、新しい価値が次々に生まれていきます。

中小企業でも使える「逆ポジション」の事例

大型バイクの話はスケールが大きいですが、従業員10名前後の会社や個人事業でも、同じ考え方は十分使えます。

例:カフェの場合

近所に人気のカフェがあるとします。
・店内はおしゃれ
・メニューも豊富
・ただし、いつも混んでいて騒がしい
・子ども連れには少し気まずい雰囲気

ここを反面教師にすると、こんな逆のポジションが考えられます。
・子ども連れ歓迎をはっきり打ち出す
・ベビーカーOK、子ども用イス・絵本・ちょっとしたおもちゃを置く
・メニューも「大人用」と「子ども用」を用意する
・店内の音楽や照明も、ゆったり落ち着いた雰囲気にする

同じ「カフェ」でも、
A店:大人がおしゃれに過ごす場所
B店:子育て世代が気兼ねなくくつろげる場所
と、狙うお客様が変われば、共存しやすくなります。

どちらも“正解”であり、同じ土俵で取り合う必要はなくなります。

実践ステップ:反面教師から自社の戦略をつくる

では、実際にご自身のビジネスで「反面教師によるモデリング」を使うには、どうすれば良いでしょうか。
シンプルな4ステップにまとめてみます。

ステップ1:身近な「お手本&反面教師」を3社ほど選ぶ

・同じ業種、同じ地域のライバル
・お客様からよく名前が挙がる会社
・自分が「ここはすごいな」と感じている会社

などを、3社ほどピックアップします。

ステップ2:良い点と「ちょっと不満そうな点」を書き出す

紙を横に二分割して、
・左側:良い点(お客様が喜んでいそうな点)
・右側:弱点・不満になりそうな点

を書き出してみてください。
ここで大切なのは、「お客様の立場で見てどうか」という視点です。

たとえば、
・「いつも混んでいて予約が取りにくい」
・「担当者は優秀だが、相談しづらい雰囲気」
・「説明が専門用語ばかりでよく分からない」
といった、“お客様目線のモヤモヤ”を拾っていきます。

ステップ3:弱点をあえて「逆さ」にする

右側に書いた弱点を、あえて反転させてみます。

・「予約が取りにくい」→「予約が取りやすい」「当日受付OK」
・「相談しづらい」→「雑談も含めて、何でも話しやすい雰囲気」
・「説明が難しい」→「中学生にも分かるレベルの説明」

このとき、「そんなことをしたら、今のライバルとは全然違う会社になってしまうのでは?」という感覚が大事です。
まさにその「全然違う」が、逆ポジションのヒントです。

ステップ4:自社の強み・人員・資金と照らし合わせて調整する

最後に、その逆ポジション案を、自社の現実と照らし合わせて調整します。
・今いるメンバーで、どこまでできるか
・既存のお客様を大切にしながら、何を変えられるか
・すぐに変える部分と、半年〜1年かけて整える部分を分ける

すべてを一気に変える必要はありません。
まずは、「今日から変えられる小さな一歩」から始めて、少しずつ逆ポジションを形にしていくイメージです。

まとめ:逆を行く勇気が、あなたの会社の居場所をつくる

人の欲望には終わりがありません。

・「もっと良くしたい」
・「今とは違う、新しい何かが欲しい」

という思いがある限り、既存のビジネスで満たしきれていないニーズは必ず存在します。

業界の歴史は、「ある会社が新しい価値をつくる」
→「それを反面教師に、逆の価値を提案する会社が現れる」
→「さらにその逆が現れる」
という繰り返しでできています。

だとすれば、私たち中小企業も、その流れを前提にして事業をデザインしてよいはずです。

・今の同業他社と、同じ土俵で消耗戦をするのか
・それとも、あえて「逆のポジション」を取りに行き、自分たちの居場所をつくるのか

反面教師から学ぶとは、「あの会社はダメだ」と批判することではありません。
「この会社が大事にしているお客様はこういう人たちなんだな。
では、うちは別のタイプのお客様を大事にしよう」と、お互いに棲み分けていく知恵です。

身近なライバルを、ただの競争相手ではなく、
「自分たちのポジションを考えるためのヒント集」として眺めてみる。

そこから、あなたの会社ならではの「逆ポジション」が、きっと見えてくるはずです。

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