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「名前」を変えるだけで、チームが動き出す

「名前」を変えるだけで、チームが動き出す

プロジェクト名が組織のやる気を変える理由

〜ワクワクの仕掛け方〜

はじめに:なぜ「名前」が大切なのか

会社の中で新しい取り組みを始めるとき、あるいは日々の業務を改善しようとするとき、最初に決めるのが「名前」です。

「そんなの、後でいいんじゃない?」「中身が大事でしょ」—そう思われるかもしれません。

しかし実は、この「名前」こそが、チームのやる気を左右し、取り組みの成功を大きく左右する重要な要素なのです。

今回は、「名前を変えただけで、チームが見違えるように動き出した」という実例をご紹介しながら、従業員10名前後の会社でも明日から使える「ネーミングの力」についてお伝えしたいと思います。

背景:チームが動かない本当の理由

「うちの従業員は、言われたことしかやらない」
「新しいことを始めても、みんな乗り気じゃない」
「会議で意見を求めても、シーンとしている」

こうした悩みを抱える経営者の方は少なくありません。

原因はさまざまですが、意外と見落とされがちなのが「その仕事や取り組みが、どう呼ばれているか」という点です。

たとえば、「業務改善委員会」「品質管理プロジェクト」「コスト削減活動」。
どれも真面目で、目的もはっきりしています。
しかし、この名前を聞いて「やりたい!」とワクワクする人が、どれだけいるでしょうか。

多くの場合、こうした名前は「会社からの命令」「面倒な仕事が増えた」という印象を与えてしまいます。
すると、従業員の心の中では無意識のうちに「やらされ感」が生まれ、最低限のことだけやって済ませよう、という気持ちになってしまうのです。

これは、能力の問題ではありません。人間の心理として、当然の反応なのです。

事例①:町工場の「不良品ゼロ」への挑戦

ある地方の金属加工工場の話です。従業員12名、創業30年の町工場でした。

この工場では、製品の不良率がなかなか下がらないことが長年の課題でした。社長は何度も「品質を上げよう」と呼びかけ、「品質管理委員会」を立ち上げました。

月に一度の会議では、不良品の数を報告し、原因を分析し、対策を話し合う。
やるべきことはやっていました。
しかし、不良率は一向に改善しません。会議の空気は重く、「また数字を詰められる時間か」という雰囲気が漂っていました。

ある日、社長は発想を変えることにしました。

「品質管理委員会」という名前を、「ゼロへの挑戦者たち」に変えたのです。

そして、会議の進め方も変えました。
不良品の「数」を責めるのではなく、「どうすればゼロに近づけるか」というアイデアを出し合う場にしたのです。

最初は戸惑っていた従業員たちも、次第に変化していきました。

「挑戦者」という言葉が、「管理される側」から「挑む側」へと、自分たちの立場を変えてくれたのです。

ある若手社員は、作業台の配置を変えるアイデアを提案しました。
ベテラン職人は、長年の経験から気づいていた「ヒヤリ」とする瞬間を共有してくれました。
これまで黙っていた人たちが、少しずつ声を上げ始めたのです。

半年後、不良率は以前の3分の1にまで下がりました。

社長は振り返ります。
「やっていることは、正直そんなに変わっていない。でも、みんなの目の色が変わった。『自分たちで何とかしよう』という空気が生まれたんです」

事例②:旅館の「おもてなし」改革

もう一つ、別の業種の例をご紹介しましょう。

山間部にある、客室数15室の小さな旅館。従業員は家族を含めて9名です。

口コミサイトでの評価は悪くないものの、「可もなく不可もなく」という印象が拭えない。
リピーターも思うように増えない。
そんな状況を打破するため、女将は「接客サービス向上プロジェクト」を立ち上げました。

しかし、従業員の反応は冷ややかでした。「今でも精一杯やっているのに、これ以上何をしろというのか」——そんな不満の声が聞こえてきたのです。

女将は考えました。
そして、プロジェクトの名前を「お客様の『また来たい』を増やす作戦会議」に変えました。

さらに、目標も変えました。
「サービスの質を上げる」という漠然としたものから、「お客様から『また来たい』という言葉をいただく回数を数える」という、具体的で前向きなものにしたのです。

すると、従業員たちの意識が変わり始めました。

「サービス向上」と言われると、「今の自分たちが足りない」と否定されているように感じる。
しかし、「『また来たい』を増やす」と言われると、「お客様を喜ばせるゲーム」のように感じられる。
同じことを目指していても、受け取り方がまったく違うのです。

ある仲居さんは、お客様との何気ない会話を覚えておいて、翌朝の朝食時に話題にするようになりました。
調理担当のスタッフは、アレルギーのあるお客様のために、特別メニューを考えるようになりました。

誰に言われたわけでもありません。
「『また来たい』と言ってもらいたい」という気持ちが、自然と行動を変えていったのです。

1年後、口コミサイトの評価は大きく上がり、「必ずまた来ます」というコメントが目に見えて増えました。

なぜ「名前」で人は変わるのか

この2つの事例に共通しているのは、「仕事の中身」は大きく変わっていないという点です。

変わったのは「名前」と、それに伴う「意味づけ」です。

人は、自分のやっていることに「意味」を感じると、驚くほど力を発揮します。
逆に、意味を感じられないと、どんなに正しいことでも体が動きません。

「品質管理委員会」は、「管理される」という受け身の印象を与えます。
「ゼロへの挑戦者たち」は、「自分たちが挑む」という能動的な印象を与えます。

「接客サービス向上」は、「今が足りない」という否定の響きがあります。
「『また来たい』を増やす」は、「喜ばせたい」という肯定の響きがあります。

これは、たとえるなら、子どもに「部屋を片付けなさい」と言うのと、「宝物を見つけやすくしよう」と言うのとの違いに似ています。
やることは同じでも、心の動き方がまったく違うのです。

良い名前の3つの条件

では、チームを動かす「良い名前」には、どんな特徴があるのでしょうか。

「やらされ感」ではなく「やりたい感」を生む

命令や管理を連想させる言葉ではなく、挑戦や冒険、楽しさを連想させる言葉を選びましょう。
「委員会」「管理」「改善」よりも、「チャレンジ」「作戦」「探検」といった言葉のほうが、人の心を動かします。

目指す姿が、ポジティブに描かれている

「不良品を減らす」より「ゼロを目指す」。
「クレームを無くす」より「『ありがとう』を増やす」。
否定形ではなく肯定形で、目指す姿を表現しましょう。
人は「〜しない」より「〜する」のほうが、行動に移しやすいのです。

口に出したくなる、覚えやすい

長すぎる名前、堅苦しい名前は、人の記憶に残りません。
短くて、リズムがあって、つい誰かに話したくなるような名前が理想です。
従業員が自然と口にするようになれば、その名前は「自分たちのもの」になっていきます。

まとめ:小さな工夫が、大きな変化を生む

経営というと、大きな投資や難しい戦略を思い浮かべがちです。

しかし、時には「名前を変える」という小さな工夫が、チームを、会社を、大きく動かすことがあります。

今、あなたの会社で進めている取り組みや、日々の業務。それに、どんな名前がついていますか?

その名前は、従業員の心に響いていますか?「やってみたい」という気持ちを引き出していますか?

もし「なんとなく盛り上がらない」「みんなが乗り気じゃない」と感じたら、ぜひ名前を見直してみてください。

未来を変えるのは行動です。そして、行動を変えるのは、心の持ちようです。

ワクワクする名前は、ワクワクする仕事を生み出します。
そして、ワクワクしながら働く人たちは、お客様にも、その熱量を届けることができるのです。

あなたの会社にも、チームを動かす「魔法の名前」が、きっと見つかるはずです。

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