利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「基本のき」が会社を守る 〜強い組織に共通する意外なほどシンプルな習慣〜

「基本のき」が会社を守る 〜強い組織に共通する意外なほどシンプルな習慣〜

基本を徹底することが強い組織をつくる

はじめに:なぜ今「当たり前のこと」が注目されるのか

「挨拶をきちんとする」「ゴミを見つけたら拾う」「締め切りを守る」。

こう聞くと、「そんなの当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。
小学校で教わるようなことを、なぜ今さら経営の話として取り上げるのか、と。

しかし、長年にわたって多くの企業を見てきた経営者や専門家たちは、口を揃えてこう言います。
「業績が傾き始める会社には、必ずと言っていいほど『基本の乱れ』がある」と。

逆に言えば、厳しい競争を勝ち抜き、何十年も成長を続けている企業には、こうした「人としての基本」が組織の隅々まで浸透しているのです。

これは、大企業だけの話ではありません。
むしろ、従業員10名前後の中小企業や個人事業こそ、この「基本のき」が会社の命運を分けると言っても過言ではないでしょう。

背景:なぜ「基本」が崩れると組織は弱くなるのか

基本は「組織の空気」をつくる

会社には、目に見えない「空気」のようなものがあります。
「うちの会社は何となく明るい」「ピリッとした緊張感がある」「どこかだらしない雰囲気がある」—こうした感覚は、その会社を訪れた人なら誰でも感じ取れるものです。

この「空気」を専門的には「組織風土」や「社風」と呼びますが、難しく考える必要はありません。
要するに、「この会社では何が許されて、何が許されないか」という暗黙のルールのことです。

そして、この空気をつくっているのが、日々の何気ない行動の積み重ねなのです。

たとえば、社長が毎朝、誰よりも早く出社して玄関を掃除している会社を想像してみてください。
そこで働く社員は、自然と「うちの会社では、当たり前のことを当たり前にやるのが大切なんだ」と感じるようになります。

反対に、社長がいつも遅刻してきて、デスクの上は書類が山積み、挨拶もそこそこ—そんな会社では、社員も「まあ、このくらいはいいか」という空気が広がっていきます。

「割れ窓理論」という考え方

アメリカの犯罪学者が提唱した「割れ窓理論」という考え方があります。
これは、建物の窓が一枚割れたまま放置されていると、「この場所は誰も管理していない」というメッセージになり、やがて他の窓も割られ、落書きが増え、最終的には重大な犯罪まで起きやすくなる、という理論です。

組織にも同じことが言えます。
小さな「ほころび」を放置すると、それが当たり前になり、やがてもっと大きな問題へと発展していくのです。

「挨拶くらい、しなくてもいいか」が「報告・連絡も、まあいいか」になり、やがて「納期に少しくらい遅れても大丈夫だろう」「お客様への対応も適当でいいか」となっていく。
こうして、組織は少しずつ、しかし確実に弱っていきます。

事例:「掃除」で会社を立て直した自動車用品店の話

創業者が始めた「一人掃除」

カー用品販売で知られるイエローハット。
この会社の創業者である鍵山秀三郎さんは、「掃除の神様」とも呼ばれる人物です。

鍵山さんが掃除を始めたのは、創業間もない頃のこと。
当時の社員たちは、掃除どころか、挨拶すらまともにできない状態でした。
業績も振るわず、会社の雰囲気は最悪。
「このままでは会社がダメになる」—そう感じた鍵山さんは、ある決断をします。

それは、「自分一人で会社のトイレ掃除を始める」ということでした。

誰に言われたわけでもなく、誰に褒められるわけでもなく、毎朝、黙々とトイレを磨き続けたのです。

10年かかった「浸透」

最初、社員たちは冷ややかでした。
「社長、何やってるんですか」「そんなことより売上を上げましょうよ」—そんな声もあったそうです。

しかし、鍵山さんは続けました。1年、2年、3年……。

すると、少しずつ変化が起き始めます。
最初は一人、また一人と、「自分も手伝います」という社員が現れたのです。
そして、約10年が経った頃、掃除は会社全体の文化として根付いていました。

この頃には、会社の業績も大きく改善していました。
もちろん、掃除をしたから直接売上が上がったわけではありません。
しかし、「当たり前のことを当たり前にやる」という姿勢が社員に浸透したことで、お客様への対応が丁寧になり、仕事の質が上がり、結果として業績向上につながったのです。

小さな会社でも同じことが起きる

「それは大企業の話でしょう」と思われるかもしれません。
しかし、むしろ小さな会社のほうが、この効果は早く、大きく現れます。

10名の会社で社長が変われば、その影響は全員に直接伝わります。
100名の会社なら10分の1、1000名の会社なら100分の1の影響力しかありませんが、小さな会社では社長の行動がそのまま会社の空気になるのです。

実践:基本を「徹底」するための3つのポイント

「よし、うちも基本を徹底しよう」と思っても、ただ「ちゃんとやろう」と言うだけでは、なかなか定着しません。
人は忙しくなると、つい基本をおろそかにしてしまうものだからです。

では、どうすれば基本を組織に根付かせることができるのでしょうか。

ポイント1:まず自分がやる

鍵山さんの例でもわかるように、基本の徹底は「言葉」ではなく「行動」から始まります。

「挨拶をしっかりしろ」と言いながら、自分はスマートフォンを見ながらボソボソと挨拶している—これでは誰もついてきません。

まずは経営者自身が、誰よりも丁寧に挨拶をし、誰よりも時間を守り、誰よりも整理整頓を心がける。
それを黙々と続けることが、何よりも強いメッセージになります。

ポイント2:「見える化」する

基本ができているかどうかは、意外と自分では気づきにくいものです。
だからこそ、定期的に「見える化」することが大切です。

たとえば、月に一度、「挨拶」「整理整頓」「時間厳守」などの項目について、チェックシートで振り返る時間を設けてみてはいかがでしょうか。

大げさな仕組みは必要ありません。
朝礼で「今月の重点項目」を共有し、月末に「どうだったか」を話し合う—それだけでも十分です。

大切なのは、「この会社では基本を大切にしている」というメッセージを、繰り返し発信し続けることです。

ポイント3:「しつこく」続ける

最も難しいのは、これを「続ける」ことです。

最初は盛り上がっても、3ヶ月、半年と経つうちに、だんだんと形骸化していく—これは多くの会社で起きることです。

だからこそ、リーダーには「しつこさ」が求められます。
社員から「また同じことを言っている」と思われても、やると決めたことはやり続ける。
この「ブレない姿勢」こそが、組織に基本を根付かせる最大の力になります。

まとめ:砦を築いてから、城を建てる

経営者には、売上の達成、コストの削減、新規事業の開拓など、やるべきことが山のようにあります。
「基本の徹底」などという地味なことに時間を割いている余裕はない—そう感じる方もいるかもしれません。

しかし、考えてみてください。
どんなに立派な戦略を立てても、それを実行するのは「人」です。
そして、その「人」が集まってできる「組織の空気」が濁っていれば、どんな戦略も絵に描いた餅に終わってしまいます。

お城を建てるには、まず土台となる砦をしっかり築く必要があります。
砦がぐらついていては、どんなに立派な城を建てても、すぐに崩れてしまうでしょう。

「挨拶をする」「ゴミを拾う」「締め切りを守る」。

これらは確かに、小学校で教わるような当たり前のことです。
しかし、この「当たり前」を10人の社員全員が、毎日、当たり前にできている会社は、実はそう多くありません。

だからこそ、これができている会社は強いのです。

遠回りに見えるかもしれませんが、まずは足元の「基本のき」を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
その小さな一歩が、やがて足腰の強い、何があっても揺るがない組織をつくる礎になるはずです。

今日からできること:明日の朝、誰よりも先に「おはようございます」と声をかけてみる。
それだけで、何かが変わり始めるかもしれません。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

コメント Comments

コメント一覧

コメントはありません。

コメントする

トラックバックURL

https://wakaruto.jp/%e3%80%8c%e5%9f%ba%e6%9c%ac%e3%81%ae%e3%81%8d%e3%80%8d%e3%81%8c%e4%bc%9a%e7%a4%be%e3%82%92%e5%ae%88%e3%82%8b%e3%80%80%e3%80%9c%e5%bc%b7%e3%81%84%e7%b5%84%e7%b9%94%e3%81%ab%e5%85%b1%e9%80%9a%e3%81%99/trackback/

関連記事 Relation Entry