利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「真似る力」が会社を強くする—他社から学ぶことを恐れないために

「真似る力」が会社を強くする—他社から学ぶことを恐れないために

他社から学ぶ経営改善の実践法

はじめに

「うちの会社には、特別なノウハウも独自のアイデアもない」と感じている経営者の方は少なくないと思います。
でも、実はそれは多くの優れた会社も同じなのです。

世の中で「仕組み」と呼ばれているものの大半は、他の会社や業界のやり方にヒントを得て作られています。
完全にゼロから生まれた「オリジナルの仕組み」というのは、ほとんど存在しないと言っても過言ではありません。

知恵の源泉は、徹底して「外」に求める。
これが、会社を成長させる一つの大きな鉄則です。

では、なぜ他社を参考にすることが重要なのでしょうか。
それは、「同質の人間同士がいくら議論をしても、新しい知恵は出てこない」という、シンプルだけれど見落とされやすい事実があるからです。

なぜ「身内だけの議論」では限界があるのか

同じ会社で長く働いていると、社員全員がいつの間にか「同じ目線」を持つようになります。
同じ業界の常識を当たり前だと思い、同じ悩みを同じように考えるようになるのです。

これは料理にたとえると分かりやすいでしょう。
和食の料理人だけが集まって「もっとおいしい料理を作ろう」と話し合っても、出てくるアイデアは和食の延長線上にあるものばかりです。
そこにフランス料理やインド料理の発想が入って初めて、新しいメニューが生まれます。

会社の「仕組みづくり」もまったく同じです。
社内の人間だけで考え続けると、どうしても発想が狭くなります。
「前からこうしてきた」「うちの業界ではこれが常識だ」という思い込みが積み重なり、変化のきっかけをつかめないのです。

だからこそ、外に目を向けることが大切になります。
他業種の仕組み、他地域の会社のやり方、海外のビジネスモデル—そういった「異質なもの」に触れることで、自社には思いもよらなかったアイデアが生まれてきます。

「真似る」ことは決して恥ずかしいことではない

日本語に「守破離(しゅはり)」という言葉があります。
武道や茶道の世界で使われる考え方で、まず師匠の型を徹底的に「守る(真似る)」ことから始め、それを土台にして「破る(応用する)」、最後に自分だけの「離れた(独自の)」境地へ至る、という成長のプロセスを表しています。

ビジネスの世界でも同じことが言えます。
まず優れたやり方を徹底的に学び、自社に合わせてアレンジし、やがて独自の仕組みへと育てていく。
この順番こそが、着実に会社を強くする道筋です。

「真似る」を英語にすると「imitate」ですが、これは「imagination(想像力)」と語源が同じとも言われます。
真似ることは、想像力の出発点なのです。

事例:異業種の「仕組み」を持ち込んで変わった工務店

ここで一つの事例をご紹介します。
ある地方の小さな工務店(従業員8名)では、長年「お客さまからの紹介で仕事が来る」という受け身の営業スタイルが続いていました。
新規のお客さまを集めるための仕組みがなく、社長が個人的な人脈だけで頑張っている状態でした。

あるとき社長は、知人に誘われて全く別の業界—地元の美容院チェーンの勉強会に参加しました。
そこで目にしたのが、「ニュースレター」と「定期的なイベント」を組み合わせた顧客維持の仕組みでした。
美容院では、来店客に手書き風のニュースレターを毎月送り、季節のケアイベントへ招待することで、お客さまとの関係を長く続けていたのです。

「これは工務店でもできる」と感じた社長は、さっそく自社向けにアレンジしました。
OB顧客(過去に家を建てたお客さま)に向けて、季節ごとのメンテナンス情報をまとめたニュースレターを送り始め、年に一度「住まいの無料点検イベント」を開催するようにしたのです。

結果は予想以上でした。
久しぶりに連絡をとったOB顧客から「ちょうどリフォームを考えていた」という問い合わせが相次ぎ、翌年のリフォーム受注が前年比で約1.5倍になりました。
しかもそのお客さまが友人に紹介してくれるという好循環も生まれました。

工務店のメンテナンス情報と美容院の顧客フォロー。
一見まったく関係のない業界の仕組みが、少しのアレンジで強力な武器に変わったのです。

どうやって「他社の知恵」を集めるか

では、実際にどうやって外の知恵を集めればいいのでしょうか。
特別なことをする必要はありません。

まず手軽にできるのが、異業種交流会や勉強会への参加です。
同じ業界の集まりも大切ですが、全く違う業種の経営者と話すことで、思いがけないヒントに出会えます。
「あの業界ではこんなやり方をしているのか」という気づきが、自社改革のきっかけになることは珍しくありません。

次に効果的なのが、「いいお客さん」として他社を体験することです。
感動したサービスを受けたとき、「これはどういう仕組みで実現しているのだろう?」と考える習慣をつけるだけで、毎日の生活がビジネスのヒント集に変わります。
旅先で泊まったホテルの接客、よく行くカフェの注文システム、気持ちよかったクリーニング店の対応—そのどれもが、自社に活かせるアイデアの種です。

また、本や雑誌、動画コンテンツからも多くを学べます。
特にビジネス書に載っている事例は、「自社に置き換えたらどうなるか」という視点で読むと、実践につながりやすくなります。

大切なのは「そのまま真似る」のではなく「アレンジする」こと

ただし一点、注意していただきたいことがあります。

他社の仕組みを学ぶとき、「そのまま丸ごとコピーする」のではなく、「自社の状況に合わせてアレンジする」ことが重要です。

先ほどの工務店の例でも、美容院のニュースレターをそのままコピーしたわけではありません。
「定期的にお客さまと接点を持ち続ける」という本質的な考え方を取り入れ、工務店ならではの内容(メンテナンス情報や点検イベント)に作り替えたのです。

どんな仕組みも、自社のお客さまや社員の特性、地域性、規模感に合わせて調整することで、はじめて効果を発揮します。
「真似る力」と「アレンジする力」をセットで磨いていくことが大切です。

まとめ

今回のポイントを整理します。
優れた経営の仕組みのほとんどは、他社のやり方にヒントを得て作られています。
「同質の人間同士の議論」だけでは発想に限界がありますが、外の世界—特に異業種—に目を向けることで、思いがけない突破口が見えてきます。

「真似ることは恥ずかしい」という思い込みは、今日から手放しましょう。
優れた経営者は皆、貪欲に外から学び、それを自社流にアレンジし続けています。

あなたの会社の近くにも、きっとヒントはたくさん転がっています。
今日から少しだけ、「他の業界ではどうしているだろう?」という目線を持って、周りを見渡してみてください。
その小さな好奇心が、会社を大きく変える第一歩になるかもしれません。

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