利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「社会の声」をブランドの力に変える ─ パンテーン「#この髪どうしてダメですか」に学ぶ

「社会の声」をブランドの力に変える ─ パンテーン「#この髪どうしてダメですか」に学ぶ

「社会の声を味方にする」

はじめに ─ 共感が売上を動かす時代

「良い商品をつくっていれば、お客さまは来てくれる」。
そう信じて頑張ってきた方も多いのではないでしょうか。
もちろん品質は大切です。
しかし最近では、「この会社は自分と同じことを大切にしている」という共感が、お客さまの行動を大きく左右するようになっています。

今回は、シャンプーブランド「パンテーン」が社会の声に寄り添い、ブランド再生に成功した事例をご紹介します。

パンテーンが目をつけた「放置された問題」

パンテーンは「あなたらしい髪の美しさで、前向きな一歩をサポートする」という理念を持つブランドですが、当時は売上が長く低迷していました。

転機は、マーケティング責任者・大倉氏の原体験です。
就活時に感じた「就活生らしくあるべき」という同調圧力への違和感。海外駐在を経て日本を見つめ直した大倉氏は、この「同調圧力と個性」をテーマにブランド発信ができないかと考えました。

チームが注目したのが「地毛証明書」の問題です。
2017年、生まれつき茶色い髪の女子高生が黒染めを強要され訴訟を起こした事件は大きなニュースになりましたが、その後、校則を見直す動きは止まったまま。
この「放置された問題」こそ、パンテーンが取り組むべきテーマでした。

成功の3つのポイント

第一に、テーマの範囲設定が絶妙でした。
「地毛証明書」だけでは当事者が限られ、「ブラック校則全般」では髪のブランドから離れてしまいます。
選ばれたのは「髪型校則」。
釣りの網にたとえれば、小さすぎず大きすぎない、ちょうど引き上げられるサイズです。
今の高校生から「私も昔、髪で嫌な思いをした」という大人まで、共感の輪を広げられました。

第二に、フレーズの設計です。
「#この髪どうしてダメですか」は、疑問形で考えるきっかけを与え、当事者の声を代弁しつつ、特定の誰かを攻撃しない。
このバランスがSNSでの拡散を生み、累計18万ツイートを超えました。

第三に、ブランドの立ち位置です。
大倉氏いわく「ブランドは常にきっかけを与える人」。
自ら前面に出るのではなく、問題意識を持つ人が声を上げやすい場をつくった結果、有志の署名活動で約2万人が集まり、東京都教育委員会が都立校での黒染め指導廃止を宣言。
パンテーンのイメージと売上も回復しました。

別の事例 ─ 中川政七商店「日本の工芸を元気にする!」

奈良の中川政七商店は、麻織物の問屋として300年の歴史を持つ中小企業です。
13代目の中川淳氏は「日本の工芸を元気にする!」と掲げ、全国の衰退する工芸産地へのコンサルティングを始めました。
自社の売上に直結しない活動に見えますが、「ものづくりを守りたい」という想いに共感するファンが全国に広がりました。

パンテーンの「髪」と同じように、自社の事業の核である「工芸」を軸に社会との接点をつくった好例です。

自社に活かすヒント

この考え方は、お客さまとの距離が近い中小企業のほうが実践しやすいものです。
まず事業の「核」を確認し、それに関連する社会の困りごとを探してみてください。
工務店なら「空き家問題」、飲食店なら「フードロス」、税理士なら「確定申告への不安」。
そのテーマを発信するとき、解決策を押しつけるのではなく、お客さまが「自分ごと」として考えるきっかけを提供する。
ブログやSNS、地域イベントなど小さな取り組みから始められます。

まとめ

パンテーンの事例から学べるのは3つです。
テーマの範囲を適切に設定すること。
主張ではなく問いかけで発信すること。
そして企業は「きっかけの提供者」に徹すること。
品質を磨くことに加えて、「自分たちは何を大切にしているのか」を社会に向けて発信していく。
それが選ばれ続ける会社への一歩になるはずです。

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