利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「自分も関係したい!」と思わせる名前の力―伝わるコミュニケーションはここから始まる

「自分も関係したい!」と思わせる名前の力―伝わるコミュニケーションはここから始まる

イベント名は「参加したくなる空気」で決める

なぜ「名前ひとつ」がこれほど大事なのか

あなたの会社が新しいイベントや企画を立ち上げるとき、「名前」にどれくらい時間をかけていますか?

「内容さえよければ、名前はなんでもいいだろう」と思っていませんか?

実は、その考えが思わぬ落とし穴になっていることがあります。

どんなに中身が素晴らしくても、名前が「主催者の都合」で付けられていると、見る人は無意識のうちに「これは自分には関係ない」と感じてしまいます。
反対に、名前がうまくできていると、説明を読む前から「ちょっと気になる」「参加してみたい」という気持ちが生まれます。

これは、お店の看板と同じです。
同じ定食屋でも、「○○食堂」という看板より「今日もがんばったあなたへの、ごはん屋さん」と書いてあったほうが、ふらっと入ってみたくなりませんか?
名前には、それだけの力があります。

「大きく見せる」だけでは、人は動かない

ある地方の商工会議所が、地元の中小企業・個人事業主を対象にしたビジネス交流イベントを立ち上げたときの話です。

当初、候補に挙がっていた名前は「地域産業振興フォーラム」「スモールビジネスEXPO」といった、格式を感じさせるものでした。
大きな名前を掲げることで「しっかりした会」「業界をリードする取り組み」というイメージを打ち出そうとしていたのです。

しかし、本当に集まってほしかったのは、大企業の役員や行政の担当者ではなく、日々の経営に悩んでいる町の小さなお店のオーナーや、一人で事業を切り盛りしている個人事業主の方たちでした。

そこで最終的に選ばれた名前が、「うちのお店、どうしよう会議」。

「どうしよう」という言葉には、難しい答えを押しつけるのではなく、「一緒に考えませんか」というメッセージが自然と込められています。
経営の正解は一つではない。
それぞれの立場で悩んでいる人たちが、垣根を超えて話し合える場所—そんな「みんなで考える空気」が、この名前からにじみ出ていました。

「大きなイベントを主催したい」ではなく「みんなで考えることをしたい」。
そのメッセージの転換が、名前をまったく別のものに変えたのです。

「一方通行」になっていないか、確かめてほしいこと

イベントや企画だけではありません。社内のプロジェクト名、新しいサービスの名称、SNSのキャンペーンタイトル……。

こうした「名前をつける場面」で、一度立ち止まって考えてみてください。

「この名前は、誰に向けて書かれているか?」

自分の日記やメモに名前をつけるとき、他の人の気持ちは関係ありません。
「秘密ノート」でも「作戦帳」でも、自分だけが分かればそれでいい。
でも、ビジネスで誰かを巻き込みたいとき、「自分には関係ない」と感じさせる名前は致命傷になります。

コミュニケーションとは、本来、お互いのやり取りです。
情報を「発信する」だけでは、それはコミュニケーションではなく、ただの「告知」です。
相手が「受け取りたい」と思ってくれて初めて、コミュニケーションが成立します。

名前はその最初の「入口」。
入口が自分に関係ないと感じれば、人はドアを開けようとしません。

【事例】飲食店の「会員カード」をこう変えたら、登録数が倍になった

ある地方の飲食店オーナーが、長年運営していたポイントカードを見直すことにしました。

それまでの名称は「○○レストラン 会員カード」。
シンプルで分かりやすいですが、お客様の視点からすると「お店のためのカード」という印象が拭えませんでした。

そこでオーナーは、スタッフと一緒に考えました。
「このカードを持っていると、どんないいことがあるか?」「お客様はどんな気持ちでお店に来てくれるか?」

議論の末に生まれた新しい名称は、「いつもありがとうカード」。

ポイントが貯まると「感謝の一品」がプレゼントされる仕組みにあわせ、「ためるほど、うれしいことが起きるカード」というコンセプトを込めました。

結果、リニューアルから3ヶ月で新規の登録数が約2倍に。
「かわいい名前だから、もらって帰ろうと思った」「なんか温かい感じがして、また来たくなった」というお客様の声も増えました。

中身(ポイント還元率や特典)はほぼ変わっていません。
変わったのは、名前が持つ「空気感」だけでした。
同じ内容のものでも、タイトルや名前を変えることで、ターゲット層からの反応が大きく変わるということは、飲食店に限らず、どんな業種でも起こり得ることです。

まとめ:名前は「自分も関係したい!」というメッセージ

ここまでの話を、3つのポイントに整理します。

名前は「主催者のもの」ではなく「受け取る人のもの」

誰かを巻き込みたいなら、その人が「自分のことだ」と感じられる名前を選ぶことが出発点です。

「大きく見せる」より「一緒にいたい空気」を大切に

権威のある名前は信頼感を生む一方、人を遠ざけることもあります。
特に小さな会社やお店では、「あなたも仲間ですよ」という親しみやすさのほうが、長い信頼関係につながります。

コミュニケーションは双方向。名前はその最初の握手

主催者目線だけでなく、受け取る人がどんな気持ちになるかを想像して言葉を選ぶことが、本当の意味でのコミュニケーションの始まりです。

今、あなたのお店や会社で使っている名前——プロジェクト名、イベント名、サービス名、商品名—を、一度「受け取る側の目線」で見直してみてください。

「これ、自分には関係ないかな……」と感じさせていないか。
反対に「これ、私のことだ!」と思ってもらえるか。

たった一言の名前が変わるだけで、人が動き始めることがあります。
そして、人が動くとき、ビジネスも動き始めるのです。

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