利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「誰に売るか」を決めるだけで、売上が変わる—ターゲット選定の3つの基準

「誰に売るか」を決めるだけで、売上が変わる—ターゲット選定の3つの基準

ターゲット選定の3つの基準

はじめに:セグメントを絞ることで、何かが変わる

「うちの商品は、誰にでも役立てられます」—経営者の方からよく聞く言葉です。
でも実は、「誰にでも」と考えた瞬間に、マーケティングはぼんやりしてしまいます。

お客様のグループ(セグメント)を整理したら、次に大切なのは「そのうち、どのグループを狙うか」を決めること。
これをターゲット選定といいます。

矢を射るとき、的を絞らなければ当たりません。
ターゲットを明確にすることは、限られた時間・お金・人手で最大の成果を出すための第一歩なのです。

今回は、ターゲットを選ぶときに意識すべき3つの基準をご紹介します。
「難しそう」と身構えなくて大丈夫。
一つひとつ、具体的な例とともに見ていきましょう。

基準① そのグループは、市場として十分な大きさがあるか

どれほど素晴らしい商品・サービスでも、買ってくれるお客様がごく少数では、ビジネスとして成り立ちません。
狙うセグメントが「市場として十分な大きさを持っているか」は、最初に確認すべきポイントです。

たとえば、「日本の伝統的な手漉き和紙を愛好するコレクター向けに、希少な産地の一点物を提供する」というビジネスを考えたとします。
こだわりの商品を作ること自体は悪くありません。
しかし、そのお客様が全国でも数十人しかいないとすれば、継続的なビジネスにするのは難しい。
「絞り込みすぎて、市場が小さくなりすぎた」という状態です。

また、見落としがちなのが「お金を持っていて、払う気のあるお客様かどうか」という視点です。
特に法人向けビジネスでは重要な話で、先に商品を納品してから代金が回収できないと、経営を圧迫しかねません。
「気前よく注文してくれる会社」が必ずしも「きちんとお金を払う会社」とは限りません。
お客様の支払い能力・支払い意思をしっかり見極めることが大切です。

事例:地域密着型の子ども向け習い事教室

あるピアノ教室の先生が、「受講者を増やしたい」と考えました。
最初は「音楽に関心があるすべての人」を対象に宣伝していましたが、なかなか集まりません。
そこで対象を「小学校低学年の子どもを持つ保護者」に絞りました。

この層は、地域内にある程度の数がいて、習い事にお金をかける意識も高い。
さらに子ども自身ではなく保護者が申し込むので、支払いも安定しています。
ターゲットを絞ったことで、チラシの配布場所(学校の近く・地域の掲示板)も明確になり、受講者が増えていきました。

基準② 競合の激しさと、自社の強みが生きるか

市場の大きさが確認できたら、次は「そのお客様をめぐって、競合がどれくらいいるか」を考えます。

競争が激しいセグメントに飛び込むと、価格の叩き合いや広告費の消耗戦になりがちです。
一方で、競合が少なくても「自社の強みが評価されない場所」では、選んでもらえません。
大切なのは「競合が少ない×自社の強みが生きる」という交差点を探すことです。

たとえば、あなたの会社が「迅速な対応力」を強みとしているなら、スピードを重視するお客様セグメントを狙うと効果的です。
技術力が強みなら、品質や性能にこだわるお客様に刺さります。
「誰に対しても同じ営業をする」のではなく、「自分たちの強みを一番評価してくれる人に向けて語りかける」ことが、選ばれる企業への近道です。

事例:地方の小さな印刷会社

大手印刷会社との価格競争に疲弊していた地方の印刷会社が、ターゲットを見直しました。
「低価格」で戦うのは難しいと判断し、「急ぎの小ロット印刷に困っている地域の中小企業」に絞ることにしたのです。

大手は小ロットや急ぎ案件を苦手としており、対応が遅い。
そこに目をつけ、「翌日仕上げ」「少部数OK」を打ち出したところ、地域の飲食店や士業事務所からの注文が増えていきました。
競合が少ない領域で、自社の強み(小回りの利く対応力)をフル活用した好例です。

基準③ そのお客様は、あなたの商品・サービスを切実に必要としているか

どんなに素晴らしい商品でも、「あったらいいかも」と思われるより、「これがないと困る!」と思われた方がずっと売りやすい。
これが「価値の必要度の高さ」という視点です。

「ニーズの切実さ」は、マーケティングにおいてとても重要なエネルギーです。
お客様が自分から情報を探し、比較し、購入を決める原動力になるからです。
逆にニーズが薄いと、どれだけ広告を打っても反応が鈍くなります。

ただし、切実なニーズのあるセグメントには、当然ながら競合も目をつけます。
「必要とされている度合いが高い×競合が少ない」というゾーンを見つけることが理想ですが、競合がいるとしても自社の強みで差別化できれば十分勝算があります。

事例:整理収納サービスを提供する個人事業主

片づけが苦手な人全般をターゲットにしていた整理収納アドバイザーが、「引っ越し直後の方」に絞ってみました。
引っ越し後は荷物が多く、収納の仕組みを早く整えたいという切実なニーズがあります。
しかも「引っ越し直後」は時期が明確なので、引っ越し業者やマンション管理会社との提携で顧客に出会いやすい。
ニーズが高く、タイミングも明確なセグメントを見つけたことで、成約率が大きく改善しました。

まとめ:「誰に」を決めることは、「誰かを切り捨てる」ことではない

ターゲットを絞ることに、後ろめたさを感じる方もいるかもしれません。
「せっかくお客様になってくれるかもしれない人を、自分から減らすなんて……」と。

でも実は逆です。
ターゲットを明確にするほど、メッセージは鋭くなり、刺さる人に深く届きます。
「自分のことを言われている気がする」とお客様に感じてもらえると、問い合わせの質も変わってきます。

3つの基準を振り返ります。

・市場の大きさ:そのセグメントに、買う意思と支払い能力のある人が十分にいるか。
・競合と強みのマッチ:競争が激しすぎないか、自社の強みを活かせる場所か。
・ニーズの切実さ:そのお客様は、本当に困っていて、あなたの商品を必要としているか。

この3つが重なるところが、あなたにとっての「狙い目のターゲット」です。
完璧なターゲットを最初から見つけなくて大丈夫です。
まず仮設定して動き、お客様の反応を見ながら少しずつ精度を上げていきましょう。

「誰に売るか」を真剣に考えることは、小さな会社こそ大きな武器になります。
大手のように広告費を大量投下できない分、「ここだ!」という場所に集中できる強さがあるからです。
ぜひ、今日から一度、自分のターゲットを見直してみてください。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

This website stores cookies on your computer. These cookies are used to provide a more personalized experience and to track your whereabouts around our website in compliance with the European General Data Protection Regulation. If you decide to to opt-out of any future tracking, a cookie will be setup in your browser to remember this choice for one year.

Accept or Deny