利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「選ばれる会社」になるために—お客様の手間を減らすことが、最強の差別化戦略になる

「選ばれる会社」になるために—お客様の手間を減らすことが、最強の差別化戦略になる

顧客アクセスを改善してコモディティ化に勝つ

なぜ今、「良い商品」だけでは売れないのか

「うちの商品は品質に自信がある。
なのに、なぜか価格の安い競合に負けてしまう」—そんな悩みを抱える経営者は、今の時代、決して少なくありません。

その背景には、「コモディティ化」という現象があります。
少し難しい言葉ですが、簡単に言えば「どこで買っても、だいたい同じ品質になってしまう状態」のことです。

たとえばコンビニのコーヒーを思い浮かべてください。
かつてはカフェに行かなければ飲めなかった本格的なコーヒーが、今では100円程度でどこでも手に入ります。
製品の質が均一化し、お客様にとって「どこで買っても同じ」になってしまった状態—これがコモディティ化です。

製造業でも、サービス業でも、インターネットや技術の普及によって、以前は差になっていた「品質」や「技術力」が、今では当たり前の水準になってしまいました。
その結果、価格競争に巻き込まれ、利益が削られていく。
多くの中小企業が直面している現実です。

では、コモディティ化が進んだ市場で、どうすれば「選ばれる会社」であり続けられるのでしょうか。

「買いやすさ」こそが差別化になる—ある経営書が示した答え

品質が横並びになった市場で勝ち残るためのヒントが、一冊の経営書に書かれていました。
その指摘はこうです。
「製品やサービスの質に差がなくなったとき、お客様は買いやすい会社、手間をかけずに安全に早く欲しいものが手に入る会社を選ぶ」。

つまり、品質が横並びになったとき、勝負を決めるのは「買う・使う・頼む」という行為のしやすさ—いわば「お客様の手間をどれだけ減らせるか」だというのです。

この考えを実際のビジネスで体現した会社があります。
オフィス用品の通販会社「アスクル」です。

アスクルが変えた「買い方」—「注文の手間」をなくした会社の躍進

アスクルが創業した1990年代、オフィスで使うコピー用紙やボールペン、トナーカートリッジといった消耗品を購入するには、担当営業マンに電話して、見積もりをもらって、発注書を書いて—という手順が必要でした。
品物が届くまでに数日かかることも珍しくなく、「在庫が切れてから注文したのでは間に合わない」という状況が当たり前でした。

商品そのものは、文具メーカーの製品ですから、どこで買っても同じです。
まさにコモディティ化した市場です。

アスクルが目をつけたのは、この「注文の手間」と「届くまでの時間」でした。
カタログを配布して電話一本で注文を受け付け、翌日には届ける—この仕組みを徹底的に整えることで、「商品の質」ではなく「買いやすさと速さ」で差をつけたのです。
社名の「アスクル」は「明日来る」をそのまま名前にしたもので、サービスの本質がそのままブランドになっています。

さらにアスクルはインターネット通販にもいち早く対応し、担当者がパソコンから24時間いつでも注文できる環境を整えました。
欲しいものをウェブで検索して、クリックひとつで注文完了。
翌日には届く。
このシンプルな体験が、特に従業員の少ない中小企業に熱烈に支持されました。
「わざわざ担当者を呼ばなくていい」「注文し忘れても翌日には手元に届く」という安心感が、リピーターを生み出し続けたのです。

競合の文具店や事務用品店も、当然ながら品質の高い商品を扱っていました。
しかし「注文してから届くまでの手間と時間」という点では、アスクルの利便性に追いつくことができませんでした。
コモディティ化した商品市場において、アスクルは「アクセスの良さ」という一点で圧倒的な差別化を実現したのです。

別の事例—地方の工務店が「問い合わせしやすさ」で受注を伸ばした話

同じ発想を、規模の小さな会社でも実践できます。
ある地方の工務店の事例を紹介しましょう。

この工務店は、施工の品質には自信がありましたが、「見積もりをお願いするまでのハードルが高い」とお客様から言われていました。
ホームページを見ても連絡先が分かりにくく、電話しても担当者が現場に出ていてつながらないことが多い。
問い合わせフォームに入力しても返信が翌日以降になる—こうした「小さな不便」が積み重なって、お客様が競合他社に流れていたのです。

そこで社長が取り組んだのは、大がかりな設備投資ではなく、「問い合わせの仕組み」の改善でした。
具体的には、LINEの公式アカウントを開設し、営業時間内はチャットでリアルタイムに返答できる体制を整えました。
また、よくある質問をまとめたQ&Aページをホームページに追加し、お客様が自分で疑問を解決できるようにしました。
さらに、現場スタッフにも簡単な問い合わせ対応の研修を行い、電話がつながらない場面を減らしました。

その結果、問い合わせ数が3カ月で約1.5倍に増加。
「他の会社に比べて、聞きやすかった」「すぐに返事をもらえたから安心できた」という声がお客様から届くようになりました。
施工の品質はもともと高かったのに、「頼みにくい会社」というイメージが機会損失を生んでいたのです。

あなたの会社でも今日からできること

コモディティ化という波は、業種や規模を問わず、すべての会社に押し寄せています。
しかしアスクルや地方工務店の例が示すように、打開策は必ずしも「もっと良い商品を作ること」だけではありません。

お客様が「この会社に頼んでよかった」と感じる体験は、商品そのものだけでなく、「問い合わせたらすぐ返ってきた」「注文が簡単だった」「説明が分かりやすかった」という、購入前後のあらゆる場面にあります。

自社のサービスや商品を購入するプロセスを、一度お客様の目線で見直してみてください。
「問い合わせ先は分かりやすいか」「返答に時間がかかりすぎていないか」「手続きや説明が複雑すぎないか」—こうした”小さな手間”を取り除くことが、品質の横並びが進む時代に、確実に差をつける方法です。

高い技術や良い商品を持っているのに、伝わっていない。
選ばれていない。
そう感じているなら、まずは「お客様が最初に接触する場面」を改善することから始めてみましょう。
それが、あなたの会社を「買いやすい会社」「頼みたい会社」へと変える、最初の一歩になります。

まとめ

品質が横並びになった時代、お客様が会社を選ぶ決め手は「買いやすさ・頼みやすさ」にシフトしています。
アスクルは「翌日配達」と「手軽な注文体験」によって、商品の差がほとんどないオフィス用品市場で圧倒的な支持を集めました。
規模が小さな会社でも、問い合わせの仕組みや返答スピードを整えるだけで、同じ効果を生み出すことができます。
「良い商品」は必要条件。
しかしそれだけでは不十分な時代に、「選ばれ続ける会社」になるための鍵は、お客様の”小さな不便”を取り除く意識と行動にあります。

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