独自性を伝えることで顧客を引き付ける方法
はじめに:なぜ「安さ」だけでは選ばれないのか
「うちの商品は品質がいいのに、なかなか売れない」「価格を下げても、思ったほどお客様が増えない」―こうした悩みを抱えている経営者の方は少なくありません。
実は、お客様が「この人から買いたい」「この会社に頼みたい」と思うかどうかは、価格や品質だけでは決まりません。
お客様の心を動かすのは、「なぜ、あなたから買う必要があるのか」という問いに対する明確な答えがあるかどうかなのです。
これを言い換えると、「独自性」と「優位性」がしっかり伝わっているかどうか、ということになります。
今回は、この「独自性」と「優位性」について、具体的な事例を交えながらお話しします。
「独自性」と「優位性」とは何か
まず、言葉の意味を整理しておきましょう。
独自性とは、「他にはない、あなただけの特徴」のことです。
たとえば、同じパン屋さんでも、「地元の農家から直接仕入れた小麦だけを使っている」とか、「お客様一人ひとりの健康状態に合わせたパンを焼いている」といった、他店にはない特徴があれば、それが独自性になります。
優位性とは、「お客様にとって、他よりも優れている点」のことです。
これは必ずしも「安い」「早い」といった分かりやすいものだけではありません。
「相談しやすい」「アフターフォローが丁寧」「専門知識が深い」なども、立派な優位性です。
この二つが明確に伝わっていないと、お客様から見れば「どこで買っても同じ」ということになってしまいます。
そうなると、結局は価格競争に巻き込まれてしまい、利益を削りながら戦い続けることになってしまうのです。
なぜ「魂」を伝えることが大切なのか
では、どうすれば独自性を生み出せるのでしょうか。
その答えの一つが、「なぜ、あなたはその仕事をしているのか」という想い、つまり「魂」を伝えることです。
ここで言う「魂」とは、大げさなものではありません。
「この仕事を始めたきっかけ」「お客様に届けたい価値」「仕事を通じて実現したいこと」―そうした、あなたの中にある素朴な想いのことです。
たとえば、同じ税理士事務所でも、「ただ申告書を作る」のと、「経営者が本業に集中できるように、お金の心配を減らしたい」という想いを持って仕事をするのでは、お客様への伝わり方がまったく違ってきます。
商品やサービスの内容は、競合他社も似たようなものを提供できます。
しかし、「なぜ、それをやっているのか」という想いだけは、絶対に真似ができません。
あなたの経験、価値観、人生観から生まれた想いは、世界に一つだけのものです。
それを伝えることで、あなたのビジネスは完全に独自のものになるのです。
「マインドシェア」という考え方
「魂」を伝えて独自性を確立すると、何が起きるのでしょうか。
ここで、「マインドシェア」という考え方をご紹介します。
マインドシェアとは、「お客様の頭の中で、あなたがどれだけの存在感を占めているか」ということです。
たとえば、「コーラ」と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるブランドがあるでしょう。
「スマートフォン」と聞けば、特定のメーカーを思い浮かべる方も多いはずです。
これがマインドシェアです。
大企業のような大規模な広告を打てなくても、あなたの「魂」が伝わっていれば、特定のお客様の頭の中で、あなたは「その分野といえばこの人」という存在になれるのです。
そうなれば、お客様は何か困ったときに、真っ先にあなたのことを思い出してくれます。
価格で比較されることなく、「あなたに頼みたい」と言ってもらえるようになります。
事例:町の電器店が大型量販店に勝った理由
ここで、一つの事例をご紹介しましょう。
ある地方都市に、創業40年になる小さな電器店があります。
周囲には大型の家電量販店が何軒もあり、価格では到底太刀打ちできません。
普通に考えれば、廃業してもおかしくない状況です。
しかし、この電器店は今も繁盛しています。なぜでしょうか。
この店の店主は、こんな想いを持っていました。
「この町には一人暮らしの高齢者が多い。家電が壊れても、自分で量販店に行くのは大変だ。
説明書を読んでも分からないことも多い。
私は、この町のお年寄りが安心して暮らせるように、家電の『かかりつけ医』になりたい」
この想いを実践するために、店主は次のようなことを続けてきました。
・テレビのリモコンの使い方が分からないという電話にも、すぐに駆けつける
・エアコンの掃除や、電球の交換といった小さな仕事も喜んで引き受ける
・一人暮らしのお客様には、定期的に様子を見に行く
・新しい家電を買うときは、お客様の生活に本当に必要かどうかを一緒に考える
こうした姿勢が口コミで広がり、「家電のことで困ったら、あの店に電話すればいい」という認識が町中に浸透しました。
この電器店が売っているのは、家電製品そのものではありません。
「安心して暮らせる生活」を売っているのです。
大型量販店は、この電器店と同じ商品を、もっと安く売ることができます。
しかし、この店主が持っている「町のお年寄りの暮らしを支えたい」という想いと、それに基づいたサービスは、決して真似できません。
まさに、「魂」を伝えることで独自のポジションを築き、価格競争から抜け出した好例と言えるでしょう。
独自化がもたらす「新しい市場」
この電器店の例から分かるように、独自性を確立することは、単に競争に勝つということではありません。
そもそも競争しなくてよい場所に移動するということなのです。
先ほどの電器店は、「家電を安く売る」という市場で戦うことをやめました。
代わりに、「高齢者の暮らしを家電を通じて支える」という、まったく新しい市場を自ら作り出したのです。
この新しい市場には、大型量販店は入ってきません。
なぜなら、彼らのビジネスモデルは「大量に安く売る」ことで成り立っているからです。
一人ひとりのお客様に寄り添うサービスは、彼らには提供できないし、提供しようともしないでしょう。
これが、独自化の本当の意味です。
独自化とは、他社と違うことをするのではなく、自分だけの市場を創り出すことなのです。
あなたの「魂」を見つける三つの問い
では、どうすれば自分の「魂」を見つけられるのでしょうか。
次の三つの問いを、自分自身に投げかけてみてください。
なぜ、この仕事を始めたのか?
最初のきっかけを思い出してみましょう。
お金のためだけではない、何かがあったはずです。
「こんな人の役に立ちたかった」「こんな問題を解決したかった」という想いが、必ずあるはずです。
お客様にどんな変化を届けたいのか?
あなたの商品やサービスを使ったお客様に、どうなってほしいですか?
「便利になる」だけでなく、「安心する」「自信が持てる」「時間が生まれる」など、お客様の生活や気持ちにどんな変化をもたらしたいのかを考えてみましょう。
どんなお客様と一緒に歩んでいきたいのか?
すべての人を相手にする必要はありません。
あなたの想いに共感してくれる人、あなたが心から応援したいと思える人は、どんな人でしょうか。
この三つの問いに対する答えが、あなたの「魂」であり、独自性の源泉になります。
まとめ:選ばれる存在になるために
最後に、今回のポイントを整理しておきましょう。
・お客様が「あなたから買いたい」と思うかどうかは、「独自性」と「優位性」が伝わっているかどうかで決まる
・独自性を生み出す最も確実な方法は、「なぜ、その仕事をしているのか」という「魂」を伝えること
・「魂」を伝えることで、お客様の頭の中で特別な存在(マインドシェア)を占めることができる
・独自化は、競争に勝つことではなく、競争しなくてよい「新しい市場」を創り出すこと
価格を下げたり、サービスを増やしたりすることは、競合他社もすぐに真似できます。
しかし、あなたの経験や想いから生まれた「魂」だけは、誰にも真似できません。
ぜひ一度、立ち止まって考えてみてください。
あなたは、なぜその仕事をしているのですか?
その答えこそが、あなたのビジネスを唯一無二のものにする鍵なのです。
今日からできる一歩
上の三つの問いに対する答えを、紙に書き出してみましょう。
最初は言葉にしにくくても、書いているうちに少しずつ形になってきます。
それを、ホームページやパンフレット、名刺の裏など、お客様の目に触れる場所に載せてみてください。

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