お客様が本当に「欲しい」ものは何でしょう?

ベネフィットと顧客負担

お店や会社を経営していると、「どうすれば、もっとお客様に喜んでもらえて、売上も上がるんだろう?」と誰もが考えますよね。
その答えを見つけるための、一番大切な考え方が「ベネフィット」です。
難しく聞こえるかもしれませんが、中身はとてもシンプルです。

ベネフィットとは、一言でいえば「お客様が手に入れる、嬉しい未来」のことです。

ドリルを買いに来た人が、本当に欲しいものは?

ここに、とても有名な例え話があります。
あなたが電動ドリルを売っているとします。
お客様は「ドリルをください」と言ってお店にやってきます。

このとき、お客様が本当に欲しいものは、ピカピカの「ドリル」という機械そのものでしょうか?

いいえ、違いますよね。
お客様が本当に欲しいのは、壁に棚を取り付けるための「穴」です。
もっと言えば、「家族の写真を飾って、温かい雰囲気のリビングにする」という、嬉しい未来が欲しいのかもしれません。

この「穴」「温かいリビング」こそが、お客様にとっての「ベネフィット」なのです。

私たちは商売を始めると、ついつい自分の商品(ドリル)の性能やデザインの良さばかりを説明してしまいがちです。
でも、お客様の心に響くのは、「このドリルを使えば、こんなに簡単に理想の穴が開けられますよ」「このドリルがあれば、ご家族が喜ぶ素敵なリビングが作れますよ」というメッセージなのです。

お客様は、心の中で「天秤」にかけている

お客様が商品を買うとき、心の中では無意識に「天秤」を使っています。

  • 天秤の片方には…
    商品やサービスから得られる「嬉しいこと(ベネフィット)」を乗せます。
    (例:素敵なリビング、悩みの解決、楽しい時間など)
  • もう片方には…
    そのために支払う「大変なこと(負担)」を乗せます。
    (例:商品の代金、お店に行く手間、使い方を覚える時間、面倒な手続きなど)

そして、「嬉しいこと」の皿が「大変なこと」の皿よりもグッと重く傾いたとき、お客様は「買おう!」と決断するのです。

あなたの会社ができる、たった2つのこと

この天秤を「嬉しいこと」の方に傾ける方法は、実はたった2つしかありません。

「嬉しいこと」の皿を、もっと重くする(ベネフィットを高める)

これが一番の王道です。商品の価値を上げるのはもちろん、例えば、

  • とても丁寧で気持ちの良い接客をする
  • 商品の使い方を分かりやすくまとめた手紙を添える
  • お店の居心地を良くする

など、お金をかけなくても「ここにして良かった!」と思ってもらえる工夫は沢山あります。
お客様の「嬉しい!」を一つでも多く増やすことを考えてみましょう。

「大変なこと」の皿を、軽くしてあげる(負担を減らす)

意外と見落としがちなのがこちらです。例えば、

  • 営業時間を少しだけ延ばして、仕事帰りに寄りやすくする
  • キャッシュレス決済を導入して、支払いを簡単にする
  • 専門用語を使わず、分かりやすい言葉で説明する

といった工夫で、お客様の「面倒だな」「大変だな」を減らすことができます。

値下げも、このお皿を軽くする一つの方法です。
しかし、体力勝負の値下げは、会社の利益を削り、従業員のお給料を減らすことにも繋がりかねません。
まるで、自分たちの食事を減らして、無理に走り続けるようなものです。
まずは値下げ以外の方法で、お客様の負担を軽くできないか考えてみましょう。

まとめ:商売の基本は、とてもシンプル

マーケティングというと難しく聞こえますが、本質はシンプルです。

  •  お客様が本当に手に入れたい「嬉しい未来(ベネフィット)」は何かを考える
  •  お客様がそれを手に入れるまでの「手間や時間、不安」をできるだけ軽くしてあげる

この2つを常に考え、実行していくこと。
それが、お客様に愛され、売上を伸ばしていくための最も確実な方法なのです。