
顧客体験を売る
お店に立つと、どうしても「この商品をどう売ろうか」と、モノばかりに目がいってしまいがちですよね。
でも、少しだけ立ち止まって考えてみませんか?
あなたがその商品に込めた想いを。
どんなお客様の笑顔を思い浮かべていますか?
そして、なぜこの仕事をしているのでしょうか?
多くの方が、商品を売ることに一生懸命です。
しかし、お客様が本当に心惹かれ、お金を払ってでも手に入れたいと願うのは、商品そのものではなく、その先にある「素敵な体験」なんです。
「体験を売る」って、どういうこと?
たとえば、ケーキ屋さんは、ただ小麦粉と砂糖でできたお菓子という「モノ」を売っているのでしょうか?
いいえ、違いますよね。
お誕生日や記念日という特別な一日を、もっと輝かせる「幸せな時間」を売っているのかもしれません。
ケーキを囲む家族の笑顔、そのものを売っているのです。
カメラ屋さんはどうでしょう。
カメラという機械や、写真を印刷した紙を売っているだけではありません。
お子様の成長や、家族旅行の思い出という、二度と戻らない「宝物を未来に残すお手伝い」をしているのです。
これが、「体験を売る」ということです。
あなただけの「宝物」を見つける魔法の質問
では、あなたのお店だけの「特別な価値」はどうすれば見つかるのでしょうか?
難しく考える必要はありません。次の3つの質問に、素直に答えてみてください。
- この商品は、誰を笑顔にしたいですか? (ターゲット)
- その人を、どんな風に幸せにできますか? (提供する価値)
- お客様は、商品を使うことで、どんな素敵な体験ができますか? (体験)
この答えこそが、他の誰にも真似できない、あなただけの「特別な価値(=お客様が喜ぶ本当の理由)」になるのです。
視点を変えれば、ただの「モノ」も「特別な価値」に変わる
「うちの商品はごく普通だから…」なんて思わないでください。
ほんの少し視点を変えたり、何かを組み合わせたりするだけで、商品は特別な価値を持つようになります。
たとえば、ある花屋さんの話です。
バレンタインといえば、女性が男性にチョコレートを贈る日。だから「花束は売れない」と諦めていました。
しかし、その店主は考え方を変えました。
花束に、小さなチョコレートとシャンパンをセットにしたのです。そして、こんな言葉を添えました。
「ご存知ですか?ヨーロッパでは、花・チョコレート・シャンパンは『愛を伝える三種の神器』。あなたの本気が伝わる、最高のギフトです。」
これはもう、ただの花束ではありません。
「愛を伝える最強のギフト」という新しい物語が生まれた瞬間です。
結果、この商品はいつもの5倍も売れたそうです。
モノの組み合わせと、新しい物語。
これだけで、商品は生まれ変わり、お客様にとって「ぜひ欲しい!」と思える特別な価値が宿るのです。
価値は「伝わって」初めて存在する
しかし、どれだけ素晴らしい価値を見つけても、それがお客様の心に届かなければ、残念ながら「存在しない」のと同じです。
道端に落ちている石ころのように、誰の目にも留まりません。
お客様があなたのお店・商品を選んでくれるためには、「私が探していたのはこれだ!」と気づいてもらう必要があります。
そのための「選ぶ理由」を、こちらからそっと示してあげることが大切なのです。
では、どうすれば上手にお客様の心に届けられるのでしょうか?
そのための、5つのヒントをご紹介します。
- 【たった一人に語りかける】
「みんな」に向けた言葉は、結局誰の心にも響きません。
「こんなことで悩んでいる、〇〇さん」というように、たった一人のお客様に向けて語りかけることで、想いは深く、強く伝わります。 - 【「買ってください」を言わない】
売り込みは、お客様の心を閉ざしてしまいます。
そうではなく、お客様の気持ちに寄り添い、「こうすれば、もっと毎日が楽しくなりますよ」と、未来の素敵な体験を想像させてあげましょう。 - 【あなたの「好き・楽しい」を見せる】
あなたが仕事を楽しんでいる気持ちは、不思議とお客様に伝染します。
楽しそうな人の周りには、自然と人が集まってくるものです。
あなたの情熱を、どんどん発信してください。 - 【「物語」を語る】
商品開発での苦労話や、お客様との心温まるエピソード。
人はそんな「物語」に心を動かされ、共感し、あなたのファンになります。 - 【新しい「意味」をプレゼントする】
先ほどの花屋さんのように、「これは〇〇な時にぴったりですよ」「こんな風に使うと、もっと素敵ですよ」と、お客様も気づいていない新しい使い方や価値を教えてあげましょう。
いかがでしたでしょうか。
小難しい言葉は一度忘れて、「お客様にどんな素敵な体験を届けられるか?」という視点で、ぜひご自身のビジネスを見つめ直してみてください。