お客様の「心の中の指定席」を確保する、たった一つの方法

ポジショニングで顧客の心をつかむ

あなたの商品やサービス、本当に届けたい人にその魅力、伝わっていますか?
「良いものを作っているのに、なぜか売れない…」その悩み、もしかしたら「伝え方」にあるのかもしれません。

今回は、あなたのお店や会社がお客様にとって「特別な存在」になるためのヒント、「ポジショニング」について、分かりやすく解説します。

「ポジショニング」って、一体なに?

「ポジショニング」と聞くと、難しく感じるかもしれませんね。
でも、やることはとてもシンプルです。

一言でいえば、「お客様の心の中に、あなたの商品やお店の『指定席』を作ること」。

商品を無理に変える必要はありません。
例えば、パッケージを少し変えたり、新しい名前をつけたり、値段を見直したり…といった工夫で、お客様の頭の中にある「イメージ」を、こちらが望む場所に置かせてもらう、という考え方です。

【たとえるなら…】

クラス替えで新しい教室に入った時を思い出してください。
たくさんの生徒がいる中で「あの人は、足が速い人」「あの人は、絵が上手な人」と、一人ひとりに無意識にあだ名やキャッチフレーズをつけていませんでしたか?
ポジショニングとは、いわばビジネスの世界で、お客様に覚えてもらいやすい「最高のあだ名」を自分たちで名乗る活動なのです。

なぜ今、ポジショニングが必要不可欠なのか?

その答えは、私たちが「情報の大洪水」の時代に生きているからです。

今は、テレビ、スマホ、雑誌…ありとあらゆる場所から、ものすごい量の情報がひっきりなしに押し寄せてきます。
まるで、四六時中、土砂降りの雨の中にいるようなものです。

人は、そんな大雨の中では、自分に関係のない情報の雨粒を、傘をさして必死に避けます。本能的に、自分にとって必要な情報しか見ようとしないのです。

人の心には「シャッター」がある

さらに、人の心には、こんな頑固な一面があります。

  • 一度「これだ!」と決めたら、なかなか意見を変えない。

いつも行く定食屋さんが「一番おいしい」と思っている人に、「もっとおいしい店がありますよ!」と大声で宣伝しても、「いや、私はここがいいんだ」と、なかなか聞き入れてもらえません。

  • 知らないことには興味を持つが、「あなたの考えは間違いだ」と言われると反発する。

「こんな便利な新商品が出ましたよ!」というニュースには耳を傾けても、「あなたが今使っている商品は、実は損ですよ」と言われると、なんだか嫌な気持ちになりますよね。

広告の世界では、この「心のシャッター」を無理やりこじ開けようとして、多くのお金が無駄になっています。
小さな会社が、体力のある大企業と同じように「とにかく大きな声で叫ぶ」という戦い方をしても、勝ち目はありません。

届けたい人にだけ届けばいい。それが小さな会社の戦い方

では、どうすればいいのでしょうか? 答えは、「視点を180度変える」ことです。

私たちが「何を伝えたいか」は、いったん横に置きましょう。
大切なのは、「お客様が、私たちのメッセージをどう受け取るか」。
矢印を自分からではなく、常にお客様の側から考えるのです。

そのために必要なのが、「お客さんを絞る」こと。

情報という大雨が降るジャングルで生き残るには、「誰にでもいい顔をする」のをやめて、「たった一人のあなたに届けたい!」と、伝える相手をはっきりと決めることが重要です。

【解決策は、お客様の心の中にある】

あなたの商品やサービスの答えは、社内の会議室にあるのではありません。お客様の心の中にあります。

  • 「子育てで忙しいお母さん」の心の中には、どんな悩みがあるだろう?
  • 「仕事で疲れたサラリーマン」は、週末に何を求めているだろう?

お客様の頭の中を想像し、「〇〇といえば、あのお店だよね!」と思ってもらえるような、分かりやすい旗を立てるのです。それが、あなただけの「指定席」になります。

例:「ラーメン屋さん」なら…

  • ×「誰にでも愛される、こだわりのラーメンです!」
  • ○「野菜不足のサラリーマンに告ぐ!一日分の野菜がとれる、罪悪感ゼロのラーメン!」

第一印象がすべてを決める
この情報社会では、一度ついたイメージを後から変えるのは、本当に大変です。
「あの店は、なんだか入りにくい」「あの商品は、高そうだ」という第一印象は、なかなか覆せません。

だからこそ、最初にどう見せるか、どう伝えるかに細心の注意を払う必要があります。

たくさんの情報を発信するより、たった一つでも強烈に記憶に残る「心の中の指定席(ポジション)」を築くこと。
それこそが、情報の大洪水の中でもお客様に選ばれ続ける、小さな会社の賢い戦い方なのです。