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お花屋さんの手紙と売上UP戦略

お花屋さんの手紙と売上UP戦略

お花屋さんからのサンキューレター

このたびは「フラワーショップ 緑(みどり)」をご利用いただき、誠にありがとうございます。
店長の田中咲希(さき)でございます。

当店は昭和50年、私の母がこの町で始めた小さなお店が始まりです。
親子二代、花一筋。母が大切にしてきた「花への想い」は私に受け継がれ、40年以上の時を重ね、現在は私たちに引き継がれています。

長年かけて築いてきた、こだわりは今も変わりません。切花や枝ものは、とにかく新鮮なものを週3回、私自身が市場で目利きして仕入れます。

お花の次に重要なのは、やはり「生産者さんとの繋がり」です。
一般的なお花だけではなく、近隣の農家さんが丹精込めて育てた、珍しい野の花やこだわりの枝ものも直接仕入れています。
アレンジメントだけではなく、ご自宅用の一輪挿しにも同じお花を使っています。
アレンジメントでは、この可憐な花たちに、お客様の「想い」を乗せることを大切にしています。
その他、とても手紙には書き切れませんが、このようなこだわりを随所に持ち続けています。花への愛情だけが取り柄の、昔ながらの花屋なのです。

しかし、二代目の私が引き継いだのは技術だけではありません。
来店されると「素敵に作ってくれてありがとう」「贈った相手が喜んでくれたよ」と言っていただけるお客様こそ、私が母から引き継いだ最も大切な財産です。

このとっても大切なお客様方に、当店のお花を通じて心温まる時間をすごしていただき、その瞬間が、心に残るとっておきの思い出としていただきたい。
それが、私たちの心からの願いなのです。

お時間があるときには、また「緑」へお越しください。 そして、どうぞゆっくりと花を眺めていってくださいね。

追伸
何かのお祝いや記念日(誕生日、結婚記念日など)にご利用の際には、ひと声おかけください。
よりいっそう心を込め、その大切な瞬間にふさわしい特別なお花をお作りします。

なぜこの手紙が「売上UP」に繋がるのか

この手紙は、単なる「ありがとうございました」というお礼状ではありません。
これは、お客様に「次も、あなたのお店で買いたい」と思わせる、非常に強力なマーケティングツールです。

特に私たちのような従業員10名未満の中小企業・個人店にとって、大手の安売りには価格で勝てません。
だからこそ、「価格」以外の理由で選ばれる必要があります。 この手紙には、そのための重要な要素が4つ詰まっています。

「モノ」ではなく「ストーリー」を売る(信頼の構築)

「昭和50年創業」「親子二代」 人は、単なる「商品(寿司や花)」を買うのではありません。
その背景にある「物語(ストーリー)」に心を動かされてお金を払います。

「創業〇年」「親子〇代」という歴史は、「こんなに長く続いているなら、地域で信頼されているに違いない」という強力な証拠になります。
初めてのお客様も、これを読めば「良い店を選んだ」と安心し、リピーターになる可能性が高まります。

「こだわり」を伝え、価格競争から抜け出す

「市場で目利き」「生産者から直接仕入れ」「想いを乗せる」

なぜ、あなたのお店の花は、スーパーの花より高いのでしょうか? その「理由」を具体的に伝えています。
「うちは良い花です」と言うだけでは伝わりません。
「市場で直接選んでいる」「農家さんから仕入れている」と具体的に書くことで、商品の「価値」がお客様に伝わります。

価値が伝われば、お客様は「このクオリティなら、この値段でも納得だ」と感じます。
これが、「安くないと売れない」という悪循環から抜け出すための第一歩です。

最も強力な武器:「お客様」を主役にする(ファン化)

この手紙の一番のキモは、ここです。
「素敵に作ってくれてありがとう」「贈った相手が喜んでくれたよ」と言っていただけるお客様こそ、私が母から引き継いだ最も大切な財産です。

これは、経営学でいう「CRM(顧客関係管理)」の究極の形です。

お店が伝えたいのは「うちの花は綺麗ですよ」ではなく、「『贈った相手が喜んでくれたよ』と笑顔で伝えてくれる「あなた(お客様)」こそが、うちの宝物です」というメッセージです。

これを言われて、嬉しくないお客様はいません。 「自分は単なる客じゃない。このお店の大切な一員なんだ」と感じてもらえます。

こうなると、お客様は「お客さん」から「ファン」に変わります。

ファンになったお客様は、

繰り返し来店してくれます(=LTV(顧客生涯価値)の向上)

友人や家族に「あのお店、いいよ!」と紹介してくれます(=口コミによる新規客の獲得)

これが、売上を安定的に上げるための最も重要な仕掛けです。

「次」の来店を具体的に提案する(アップセル)

「お祝いや記念日に」「特別な花をお作りします」

手紙の最後にある「追伸(P.S.)」は、非常に巧みです。
これは「アップセル(より単価の高い商品を買ってもらうこと)」へのお誘いです。

「また来てください」だけでは、お客様はいつ、何のために行けばいいか分かりません。
しかし、「お祝いの時は言ってね」と具体的に伝えることで、
「あ、そうか。来月の妻の誕生日は、ここのお花にしようかな」
と、次の来店の「きっかけ」を具体的にイメージさせることができます。
「お祝い」は、普段の利用よりも高単価になりやすいため、客単価UP=売上UPに直結します。

まとめ

この手紙が素晴らしいのは、「売り込み」を一切していないのに、結果として「売上UP」につながるよう設計されている点です。

歴史とこだわりで「信頼」を勝ち取り、お客様を主役にすることで「ファン」にし、追伸で「次の高単価な来店」をそっと後押しする。

これは、大手には真似できない、お客様一人ひとりと向き合う中小企業だからこそできる、最強の「おもてなし」戦略です。

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