利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

アイデアを生み出す頭の使い方 ―拡げて絞る思考のリズム―

アイデアを生み出す頭の使い方 ―拡げて絞る思考のリズム―

アイデア出しの頭の使い方

なぜ、良いアイデアが浮かばないのか

「新しいサービスを考えたいけれど、なかなか良いアイデアが浮かばない」「会議で意見を求められても、ありきたりなことしか言えない」。
そんな経験はありませんか。

実は、アイデアが出ないのは、あなたの発想力が乏しいからではありません。
多くの場合、頭の使い方のリズムを知らないだけなのです。

私たちの脳は、じっとひとつのことを考え続けるようにはできていません。
むしろ、あちこちに飛び回りながら、少しずつ答えに近づいていくような働き方をします。
この脳の自然な動きを理解して、うまく活用すれば、今までよりもずっと楽に、良いアイデアを生み出せるようになります。

アイデアは「拡げる」と「絞る」の往復運動

アイデアや企画につながる頭の使い方には、はっきりとしたリズムがあります。
それは、拡げて絞って、また拡げて絞るという伸縮活動です。

この「拡げる」と「絞る」を、別々のタイミングで行うことが、とても大切になります。

拡げるときには、とにかく奔放に。
「こんなこと無理だろう」「予算が足りない」「今までやったことがない」といった壁があっても、いったん無視して拡げていきます。
この段階では、実現可能性は考えなくていいのです。

「うちは小さな会社だから」「私には経験がないから」と、最初から枠をはめてしまうと、面白いアイデアの芽を自分で摘んでしまうことになります。
拡げるときは、子どものように自由に、あらゆる可能性を考えてみましょう。

一方、絞るときはシンプルに。
たくさん出したアイデアの中から、本当に大事なもの、実現できそうなもの、お客様に喜ばれそうなものを選んでいきます。
ここではむしろ、現実的な視点が必要になります。

この「拡げる」と「絞る」を何度も繰り返すことで、最初は漠然としていたアイデアが、だんだんと具体的な企画に育っていくのです。

脳は放射線状に働く

ここで、もう少し脳の働き方について見てみましょう。

どうやら頭というのは、拡げてまとめて、という動き方をするときには、放射線状に働くらしいのです。
あるいは、あちらこちらに飛びながら進んでいくらしいのです。

思い当たりませんか?
たとえば、今日の大事な打ち合わせのことを考えていたのに、なぜか今朝見た折り込みチラシの内容が目に浮かぶ。
「あ、そういえばあのお店、セールやってたな」と思ったかと思うと、また打ち合わせの話に戻ってくる。あの感じです。

かといって、打ち合わせのことを忘れてしまったわけではなくて、すぐまた戻ってくる。
これは、脳が無意味に脱線しているのではなく、実はいろいろな情報を結びつけようとしている証拠なのです。
もっと不思議なこともあります。それは、関係性のない、いくつかの問題の答えが立て続けに出てくることです。

たとえば、ずっと考えていた商品の価格設定の答えが浮かんだかと思うと、次の瞬間には「そうだ、あの取引先への返事はこう書けばいいんだ」というアイデアが湧いてくる。
さらには「従業員の◯◯さんの悩みには、こう声をかけてみよう」という答えまで出てくる。

これらは一見バラバラですが、実は脳の中では同時並行で処理されていたのです。
意識の表面には一つずつしか浮かんできませんが、脳の奥では複数の問題が、まるでコンロの上でいくつもの鍋が煮えているように、同時に「煮込まれて」いるのです。

ある喫茶店オーナーの事例

実際のビジネスの場面で、この「拡げて絞る」思考がどう役立つのか、ある喫茶店のオーナーの例をご紹介しましょう。

地方都市で小さな喫茶店を営むAさん(40代)は、平日の午後の客足が落ちることに悩んでいました。
「何か新しいことを始めないと」と思いながらも、なかなか良いアイデアが浮かびません。

ある日、Aさんは思い切って「拡げる」時間を作ることにしました。
ノートを開いて、「午後の喫茶店で何ができるか」を、どんなに突飛でも構わないから書き出してみたのです。

最初は「ケーキセットの割引」「コーヒーのおかわり無料」といった、よくあるアイデアでした。
でも「壁を無視して拡げる」と決めたので、書き続けます。

「読書会」「英会話カフェ」「手芸教室」「占いコーナー」「ペット同伴OK」「仮眠スペース」「1人カラオケ」……。
笑ってしまうようなアイデアも含めて、30個以上書き出しました。

そして、一晩寝かせてから「絞る」作業をしました。
現実的に考えて、スペースや予算、自分のスキルで実現できそうなものは何か。
お客様が本当に喜んでくれそうなものは何か。

最終的にAさんが選んだのは「平日午後限定の、静かに過ごせる読書タイム」でした。
スマホの使用を控えてもらい、BGMも小さめにして、読書や勉強に集中できる空間を提供する。
コーヒーのおかわりは1杯まで無料にして、長居してもらう。

この企画は、近くの図書館が改装工事で閉まっていたタイミングも幸いして、想定以上に好評でした。
「家だと集中できない」という在宅ワーカーや、「カフェはうるさくて勉強できない」と思っていた資格試験の受験者が、常連になってくれたのです。

興味深いのは、Aさんが「この読書タイムのアイデアは、思いついた瞬間がよく覚えていない」と話していたことです。
30個以上のアイデアを書き出して、数日間頭の片隅に置いておいたら、ある朝突然「そうだ、静かな時間を作ればいいんだ」とひらめいたそうです。

これはまさに、脳があちこちに飛びながら、いろいろな情報を結びつけた結果だと言えます。
おそらく「図書館が改装中」という情報、「最近カフェがうるさいという声を聞いた」という記憶、「自分は静かな空間が好き」という感覚などが、無意識のうちに結びついたのでしょう。

実践してみよう:明日から始められる3つのステップ

では、この「拡げて絞る」思考を、あなたのビジネスにどう取り入れればいいでしょうか。
明日からでも始められる方法をご紹介します。

ステップ1:拡げる時間を確保する

まず、週に1回でいいので、30分程度「拡げる」ための時間を作りましょう。
この時間は、実現可能性を一切考えず、自由にアイデアを出すだけの時間です。

紙とペンを用意して、今抱えている課題について「もし予算も時間も無限にあったら、何をするか」「もし自分が魔法使いだったら、どう解決するか」といった問いを立てて、思いつくまま書き出します。

スマホは別の部屋に置き、誰にも邪魔されない環境を作ってください。

ステップ2:脳が飛ぶのを歓迎する

アイデアを考えているときに、全然関係ないことが頭に浮かぶことがあります。
これを「集中力が切れた」と責めないでください。

むしろ、それは脳が活発に働いている証拠です。
「ああ、今、脳があちこち飛んでいるな」と観察して、また元の課題に戻ればいいのです。

時には、その「関係ないこと」の中に、思わぬヒントが隠れていることもあります。

ステップ3:絞るのは別の日に

拡げた日と、絞る日は分けましょう。
少なくとも一晩は寝かせることをおすすめします。
脳は、寝ている間も情報を整理し続けています。
朝起きたときに「そうだ、あれとこれを組み合わせればいいんだ」とひらめくのは、脳が夜中に働いてくれた結果なのです。

絞るときは、実現可能性、予算、効果、自分の強み、お客様のニーズなど、現実的な視点で評価していきます。

まとめ:あなたの脳を信頼しよう

アイデアを生み出すことは、特別な才能ではありません。
脳の自然な働き方を理解して、そのリズムに合わせて考えることができれば、誰でも良いアイデアを生み出せます。

大切なのは、拡げるときは壁を無視して奔放に、絞るときはシンプルにという、この2つのモードをはっきり分けることです。

そして、脳があちこち飛び回ることを責めないこと。
それは脳が一生懸命、いろいろな情報を結びつけようとしている証拠なのです。

小さな会社を経営していると、日々の業務に追われて、じっくり考える時間を取るのが難しいかもしれません。
でも、週に30分でいいのです。自由に拡げる時間を作ってみてください。

最初はうまくいかないかもしれません。
でも続けるうちに、自分なりのリズムが見つかります。
そして、ある日突然「これだ!」というアイデアが降りてくる瞬間が訪れるでしょう。

その瞬間は、あなたの脳が、見えないところで一生懸命働き続けてくれた結果です。
自分の脳を信頼して、ゆっくりと、でも確実に、一歩ずつ進んでいきましょう。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry