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コミュニティづくりで会社を元気にする方法

コミュニティづくりで会社を元気にする方法

コミュニティづくりで最初に決めるべきこと

―「何のために集まるのか」を最初に決めることの大切さ―

なぜ今、「コミュニティ」が注目されているのか

最近、「コミュニティ」という言葉をよく耳にするようになりました。
SNSの普及もあり、お客様同士がつながったり、同じ志を持つ経営者が集まったりする場が増えています。

中小企業や個人事業の経営者にとって、コミュニティづくりは決して大企業だけの話ではありません。
むしろ、地域に根ざした商売をされている方や、特定の分野に強みを持つ会社こそ、コミュニティの力を活かせる可能性があります。

たとえば、常連のお客様が自然と集まる「場」をつくることで、口コミが広がりやすくなります。
また、同業者や異業種の経営者と定期的に情報交換する「仲間の輪」があれば、一人で悩まなくて済むようになります。

ただし、コミュニティは「つくれば自然にうまくいく」というものではありません。
家を建てるときに設計図が必要なように、コミュニティにも「設計」が必要です。
その設計を怠ると、せっかく人が集まっても長続きしなかったり、何となく盛り上がらないまま終わってしまったりします。

では、どうすればうまくいくコミュニティをつくれるのでしょうか。

コミュニティづくりの「3つのステップ」

コミュニティをつくるときは、次の3つのステップを順番に進めていくことが大切です。

【ステップ1】方向性を決める

まず最初に、「このコミュニティは何のためにあるのか」「誰のためのものなのか」をはっきりさせます。
いわば、コミュニティの「北極星」を決める作業です。

【ステップ2】具体的な企画を立てる

方向性が決まったら、どんな活動をするのか、いつ・どこで・どのように集まるのかを具体的に計画します。

【ステップ3】参加者を集める

企画ができたら、いよいよ声をかけて人を集めます。
SNSでの告知、チラシの配布、既存のお客様へのお声がけなど、方法はさまざまです。

この3つのステップの中で、特に大切なのが最初の「方向性を決める」というステップです。

なぜ「方向性」が一番大切なのか

コミュニティづくりを始めようとすると、多くの方が「どんなイベントを開こうか」「SNSで何を発信しようか」といった具体的な活動内容に意識が向きがちです。

気持ちはよくわかります。
目に見える「形」をつくりたくなるのは自然なことです。
しかし、ここに落とし穴があります。

「何のためにやっているのか」という根っこの部分があいまいなまま活動を始めてしまうと、コミュニティ全体がぼんやりとしたものになってしまいます。

これは、目的地を決めずに車を走らせるようなものです。
最初のうちはドライブ気分で楽しいかもしれませんが、そのうち「どこに向かっているんだろう」と不安になり、同乗者(参加者)も「いつまで乗っていればいいの?」と疑問を感じ始めます。

方向性があいまいなコミュニティでは、次のような問題が起きやすくなります。

・参加者が「自分がここにいる意味」を感じられなくなる
・運営する側も「次は何をすればいいのか」が分からなくなる
・活動がマンネリ化し、徐々に人が離れていく
・新しい参加者に「このコミュニティは何なのか」を説明できない

逆に言えば、方向性さえしっかりしていれば、多少企画がうまくいかなくても立て直しができます。
「私たちはこれを目指しているんだ」という共通認識があれば、参加者も一緒に知恵を出してくれるものです。

【事例】町の畳店が始めた「和の暮らし研究会」

ある地方都市で、創業60年の畳店を営むAさん(50代)の話をご紹介します。

Aさんの会社は従業員5名の小さな畳店です。
近年、洋室化が進み、畳の需要は年々減少していました。
「このままではじり貧だ」と危機感を感じていたAさんは、お客様とのつながりを深めるためにコミュニティをつくることを思い立ちました。

最初、Aさんは「畳についてのイベントを開こう」と考えました。
畳の張り替え実演会や、い草の香りを楽しむワークショップなど、いくつかの企画案を出しました。

しかし、いざ準備を始めてみると、「果たしてこれで人が集まるだろうか」「一度来てもらっても、次につながるだろうか」という不安が出てきました。

そこでAさんは、いったん立ち止まって考えました。
「そもそも、自分は何を伝えたいのだろう。お客様に何を届けたいのだろう」と。

数週間かけて自問自答した結果、Aさんはこう考えるようになりました。

「畳を売りたいのではない。畳のある暮らし、日本の住まいの心地よさを次の世代に伝えたいんだ」

この気づきをもとに、Aさんは「和の暮らし研究会」というコミュニティを立ち上げました。
畳だけでなく、障子、ふすま、土壁、縁側のある暮らしなど、日本の住文化全体をテーマにしたのです。

方向性が明確になったことで、企画もスムーズに決まっていきました。

・月に一度、古民家を訪ねる見学会
・地元の建具職人や左官職人を招いた座談会
・子ども向けの「ミニ畳づくり体験教室」

参加者は、畳を買いたい人だけではなくなりました。
「日本の住まいに興味がある人」「古いものを大切にしたい人」「子どもに和の文化を伝えたい親御さん」など、幅広い層が集まるようになったのです。

会を始めて2年が経った頃、嬉しい変化がありました。
参加者同士が自然とつながり、「うちもそろそろ畳を張り替えようかな」「知り合いにAさんの店を紹介したよ」という声が増えてきたのです。

Aさんはこう振り返ります。
「最初から『畳を売るためのイベント』として始めていたら、きっとうまくいかなかったと思います。『和の暮らしの良さを伝えたい』という想いを軸にしたからこそ、共感してくれる人が集まってくれたのだと思います」

方向性を決めるときのヒント

では、実際に方向性を決めるとき、どんなことを考えればよいのでしょうか。
次の3つの問いを自分に投げかけてみてください。

このコミュニティを通じて、誰を幸せにしたいか

お客様なのか、同業者なのか、地域の人々なのか。
「誰のため」を明確にすると、活動の内容が自然と見えてきます。

参加した人に、どんな気持ちになってほしいか

「元気をもらえた」「仲間ができた」「新しい発見があった」など、参加者の心にどんな変化を届けたいかを考えてみましょう。

3年後、このコミュニティがどうなっていたら嬉しいか

少し先の未来を想像することで、目指すべき姿が具体的になります。

これらの問いに対する答えは、すぐに出なくても構いません。
むしろ、じっくり時間をかけて考えることが大切です。
この「考える時間」こそが、コミュニティの土台をつくる大事な投資なのです。

まとめ:急がば回れ、まずは「方向性」から

コミュニティづくりというと、つい「何をするか」「どう集めるか」という具体的な行動に目が向きがちです。
しかし、本当に大切なのは、その前段階にある「何のためにやるのか」という方向性を定めることです。

目的地がはっきりしていれば、道に迷っても戻ってこられます。仲間と一緒に「あっちじゃない?」と相談しながら進むこともできます。

逆に、目的地があいまいなままでは、どんなに素敵なイベントを開いても、参加者の心に残るものにはなりにくいものです。

「急がば回れ」という言葉があります。コミュニティづくりにおいても、まずは立ち止まって「自分たちは何を目指すのか」をじっくり考えることが、結果的に成功への近道になります。

ぜひ、あなたの会社やお店ならではの「北極星」を見つけてみてください。その星を目指して歩き始めれば、きっと素敵な仲間が集まってくるはずです。

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