利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

会議やイベントの本当の目的を見つける方法 ―「何のために」ではなく「なぜ」を問い直す―

会議やイベントの本当の目的を見つける方法 ―「何のために」ではなく「なぜ」を問い直す―

会議やイベントの本当の目的を見つける

はじめに:形骸化した会議や行事に心当たりはありませんか?

毎週月曜日の朝礼、年に一度の顧客感謝イベント、四半期ごとの社員研修。
経営者の皆さんの会社でも、定期的に開催されている会議や行事があるのではないでしょうか。

しかし、ふと立ち止まって考えてみてください。
「なぜその会議を開いているのか」と聞かれたら、明確に答えられますか?
多くの場合、「前からやっているから」「業界の慣習だから」という答えになってしまうのではないでしょうか。

実は、会議やイベントが形骸化してしまう最大の原因は、「何のために集まるか」だけを考えて、「なぜ集まるのか」という根本的な問いを忘れてしまうことにあります。
今回は、この「なぜ」を見つけるための具体的な方法をご紹介します。

視点を一段高くする「ズームアウト」という考え方

最初にご紹介するのは、自分の立ち位置から一歩引いて、より広い視野で物事を見る「ズームアウト」という方法です。

例えば、ある小さなパン屋さんの店主が「あなたの仕事の目的は何ですか」と聞かれて、「美味しいパンを作ることです」と答えたとします。
一見、正しい答えのように思えますね。
しかし、この答えでは「どんな商品を開発すればいいか」「どんなサービスを提供すればいいか」という具体的な指針にはなりません。

ところが、もし「この街で暮らす人たちの朝を、少しでも豊かにすること」と答えたらどうでしょう。
突然、お店の可能性が広がります。単にパンを売るだけでなく、焼きたての香りで朝の幸せを感じてもらったり、常連さん同士が顔を合わせて挨拶できる場を作ったり、忙しい朝でもホッとできる一言を添えたりと、様々なアイデアが生まれます。
これこそが、お客様に愛されるお店づくりの第一歩になるのです。

この「ズームアウト」は、会社経営にも応用できます。
たとえば、「月例会議の目的は何か」と聞かれて「売上報告と課題共有」と答えるのと、「チーム全員が会社の方向性を理解し、自分の役割を再確認する場」と答えるのでは、会議の進め方がまったく変わってきます。

深く掘り下げて本質を見つける

次にご紹介するのは、「なぜ」を何度も繰り返して、本質にたどり着く方法です。

例として、多くの会社で行われている「月曜朝礼」について考えてみましょう。

最初の問い: なぜ月曜日に朝礼をするのだろう?
答え: 週の始まりだし、昔からやっているから。
ここで終わってしまうと、ただの慣習です。
さらに掘り下げてみます。

次の問い: どうして週の始まりに集まるのだろう?
答え: 一週間の予定を確認したいから。
まだ表面的です。
もっと深く問います。

さらに問う: どうして一週間の予定を確認する必要があるのだろう?
答え: お互いの動きが分からないと、連携がうまくいかない。お客様に迷惑をかけることもあるから。
ようやく具体的な理由が見えてきました。
も、まだ続けます。

もっと問う: なぜ連携がうまくいくことが大切なのだろう?
答え: 少人数のチームだからこそ、一人ひとりが会社全体の動きを把握していないと、お客様に最高のサービスを提供できない。また、お互いが何をしているか分かることで、困ったときに助け合える。チームとしての一体感も生まれる。

さらに問う: なぜそれが重要なのだろう?
答え: 大企業と違って、私たちの強みは「顔の見える関係」と「柔軟な対応力」。そのためには、全員が情報を共有し、同じ方向を向いて動ける状態を作ることが何より大切だから。

ここまで来ると、単なる「恒例の朝礼」ではなく、「少人数チームの強みを最大限に活かすための情報共有と士気向上の場」という本質が見えてきます。
この本質が分かれば、朝礼の内容も自然と変わります。
単に予定を読み上げるだけでなく、今週のお客様対応で気をつけるポイントを共有したり、メンバー同士で「今週助けてほしいこと」を相談し合ったりと、工夫が生まれるでしょう。

店舗リニューアルから学ぶ、本質を見つける力

もう一つ、実際にあった事例をご紹介します。

ある美容室を経営している方が、店舗のリニューアル計画について相談に来たときのことです。
「このリニューアルの目的は何ですか?」と尋ねたところ、彼女の答えは「客数を増やして、売上を上げたい」というものでした。

気持ちは分かります。
でも、これでは具体的にどんなリニューアルをすればいいか見えてきません。
それに正直なところ、どんな経営者も同じことを考えているでしょう。

そこでさらに質問しました。
「どうして客数を増やしたいのですか? 今のお客様について、何か感じていることはありますか?」

彼女は少し考えて、パッとひらめいたような表情になりました。
「実は、常連のお客様が高齢化していて、若いお客様がなかなか定着しないんです。でも、よく考えたら、若いお客様が求めているのは『短時間で気軽に来られる美容室』なのかもしれない。仕事帰りにサッと寄れて、リラックスできる場所」。

これなら意味があります。
この洞察をもとにリニューアルをデザインすることができます。
たとえば、営業時間を夜遅くまで延長したり、予約なしでも利用できる「クイックカット」メニューを作ったり、待ち時間にスマホで仕事ができるようなカウンター席を設けたり――そんなアイデアが生まれるのです。

中小企業での実践例:顧客感謝イベントの再設計

それでは、皆さんの事業に直接関わる例を考えてみましょう。
多くの会社で行われている「顧客感謝イベント」を題材にします。

従業員8名の工務店を経営するAさんは、毎年11月に顧客感謝イベントを開催していました。
最初は「なぜやるのか」と聞かれて、「お客様への感謝を伝えるため」と答えました。

しかし、これでは具体的な内容が決まりません。そこで掘り下げてみました。

問い: なぜ感謝を伝えたいのですか?
答え: お客様のおかげで会社が成り立っているから。
問い: 感謝を伝えることで、何を実現したいのですか?
答え: お客様との関係を長く続けたい。
問い: なぜ長く続けたいのですか?
答え: リフォームや修繕など、家は継続的にメンテナンスが必要だから。何か困ったときに、まず当社を思い出してほしい。
問い: それはなぜ大切なのですか?
答え: 地域の人たちが、安心して長く住める家づくりをサポートしたい。お客様の「暮らし」を長期的に支えるパートナーでありたいから。

ここまで掘り下げると、イベントの方向性が見えてきます。
単に飲食を提供するだけのイベントではなく、「家のメンテナンスミニ講座」や「お客様同士の困りごと相談会」、「地域の大工さんとの交流タイム」など、「長く安心して住める」というテーマに沿った内容にできます。

Aさんは実際にこのコンセプトでイベントを再設計したところ、参加者から「単なる営業イベントではなく、本当に役立つ情報が得られた」という声が多く寄せられ、イベント後の問い合わせも増えたそうです。

あなたの集まりが、社会に何をできるかを考える

最後に、もう一歩視野を広げてみましょう。
あなたの会議やイベントが、社会全体のどんな問題解決に役立つかを考えてみるのです。

もちろん、すべての会議にそこまで求めるのはやりすぎかもしれません。
しかし、たとえば地域で「若者が地元に定着しない」という問題があるとしたら、あなたの会社の新入社員歓迎会を「地域の若手経営者と新社会人の交流会」として地域に開くこともできます。
異なる会社の若者同士がつながることで、地域への愛着が生まれるかもしれません。

あるいは、「技術継承が進まない」という業界の課題があるなら、社内勉強会を地域の同業者にも開放して、ベテラン職人の技を共有する場にすることもできます。

このように、自分たちの集まりを少し広い視点で捉え直すと、新しい可能性が見えてくるのです。

まとめ:明日からできる「なぜ」の問い直し

「なぜ集まるのか」を見つける方法として、今回は三つのアプローチをご紹介しました。

一つ目は「ズームアウト」。目の前の作業から一歩引いて、より高い視点から目的を捉え直すこと。
二つ目は「掘り下げる」。「なぜ?」を何度も繰り返して、自分の信念や価値観にたどり着くまで問い続けること。
三つ目は「社会への視点」。自分たちの集まりが、より大きな問題解決にどう貢献できるかを考えること。

次回、定例会議や恒例イベントを開くときには、ぜひ一度立ち止まって「なぜこれをやるのか」と自問してみてください。
その答えが「前からやっているから」だけなら、掘り下げるチャンスです。

本当の「なぜ」が見つかれば、会議やイベントは自然と活気づきます。
参加者の目の色が変わり、具体的なアイデアが生まれ、結果として事業の成長にもつながっていきます。

形だけの集まりから、意味のある集まりへ。
その転換の鍵は、あなたの中にある「なぜ」を見つけることなのです。

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