
経営における一つの大きな分かれ道
社長、あなたは今、経営における一つの大きな分かれ道に立っているのかもしれません。
それは、新しく仲間になった従業員や、これから仕事を任せる相手を前にしたとき、
- 「まず信じてみよう。何か問題が起きたらその時に考えよう」
- 「本当に大丈夫だろうか?安心できるまでは、慎重に様子を見よう」
このどちらの道を選ぶか、という選択です。
実はこの最初の心の持ち方が、会社の未来を大きく左右するのです。
ここで、ある会社の社長が大切にしていた「天秤(てんびん)」の話をご紹介します。
彼は何かを選ぶとき、「上手くいった時に得られるもの」と「失敗した時に失うもの」を、いつも天秤にかけて考えていました。
まず「相手を信じる」道を選んだ場合
こちらは、畑に「期待の種」をまくようなものです。
- 天秤のプラスの皿(得られるもの)
あなたが従業員を「君ならできる!」と信じて仕事を任せたとします。
任された相手は「期待に応えたい!」とその気になり、持っている以上の力を発揮してくれることがよくあります。
まるで、太陽の光をたっぷり浴びた種がグングン芽を伸ばし、予想以上に立派な実りをもたらしてくれるようなものです。
従業員が大きく成長し、会社に素晴らしい利益をもたらしてくれる。
これこそが、この道を選んだ時の最高のご褒美です。 - 天秤のマイナスの皿(失うもの)
もちろん、期待通りにいかないこともあります。
信じた相手が失敗したり、最悪の場合、裏切ったりすることもあるかもしれません。
大切に育てた作物が、嵐でダメになってしまうようなものです。
確かに、その時はがっかりし、傷つくでしょう。
しかし、会社が傾いてしまうほどの致命的な損害でなければ、その失敗は「次に活かせる勉強代」と考えることもできます。
まず「相手を疑う」道を選んだ場合
こちらは、常にブレーキをかけながら進むような、慎重な道です。
- 天秤のプラスの皿(得られるもの)
常に疑いの目を向けていれば、もし相手が本当に信頼できない人物だった場合に「ほら、やっぱりな」と心の準備ができています。がっかり感は少なくて済みますし、大きな失敗を未然に防げるかもしれません。 - 天秤のマイナスの皿(失うもの):
しかし、この道で失うものは、会社の未来にとって「致命的」だと、その社長は言います。
なぜなら、本当に優秀で、やる気のある人ほど、「自分は信頼されていないんだな」と感じると、どんどん力を発揮できなくなってしまうからです。
せっかく良い種を持っているのに、日陰に置かれて芽を出せないようなもの。そして、やがて「ここでは自分は輝けない」と、もっと自分を信じてくれる会社へと去っていってしまいます。
やる気のある人材が、その可能性を発揮できずに辞めてしまうこと。
これこそが、小さな会社にとって最も恐ろしい損失ではないでしょうか。
【結論:どちらの道が、あなたの会社を豊かにしますか?】
だからこそ、その社長は「まず信じるほうに賭ける」と決めていました。
人を信じることで得られる「従業員の成長と活躍」というご褒美は、何物にも代えがたい会社の財産になります。
一方で、信じた結果の失敗は、次に活かせる貴重な経験となります。
反対に、人を疑うことで避けられるリスクは小さく、失うもの(優秀な人材とその未来)はあまりにも大きいのです。
もちろん、誰かれ構わず盲目的に信じる、という意味ではありません。
しかし、会社の未来を本気で考えるなら、まずは社長から「信じて任せてみる」という土壌を作ることが大切です。
その信頼が、やがてあなたの会社を支える、一本の大きな木を育てるはずです。