利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

思考が、あなたの会社をつくっている―経営者の「頭の中」が現実を変える理由

思考が、あなたの会社をつくっている―経営者の「頭の中」が現実を変える理由

思考が人生と経営を形作る理由

はじめに

「自分の考え方なんて、売上には関係ない」

そう思っている経営者の方も多いかもしれません。
数字を追いかけ、お客さまの対応をこなし、スタッフの管理もしながら、毎日目の前の仕事に追われる。
そんな日々の中で、「自分が何を考えているか」などという話は、どこか精神論っぽくて、現実離れして聞こえるかもしれません。

でも、今から100年以上前にイギリスの著述家ジェームズ・アレンが書き残したこんな言葉があります。
「人間の心で行われる思考は、人生の一切をつくる」

これは単なる精神論ではありません。
経営という視点から読み解くと、この言葉には、小さな会社を動かすうえで非常に重要な本質が含まれています。

背景:なぜ「思考」が経営に影響するのか

人は1日に数万回の思考をしていると言われています。
そのほとんどは無意識のうちに行われていて、「うちの会社は小さいから無理だ」「どうせ値上げしたらお客さんが離れる」「あのスタッフはまた同じミスをするだろう」……こういったつぶやきが、頭の中を絶えず流れています。

問題は、この「心のつぶやき」が、実際の行動に直結しているということです。

たとえば、値上げを検討しているとします。
しかし心の中に「値上げしたらお客さんに嫌われる」という思い込みがあると、どうなるでしょうか。
交渉の場でつい弱気になる。
説明が後ろ向きになる。
最終的に「やっぱりやめておこう」と決断を先送りにする。

これは意志が弱いからではありません。
思考が行動を決め、行動が結果をつくっているからです。

逆に言えば、思考が変われば、行動が変わり、結果も変わる。
ジェームズ・アレンが言いたかったのは、まさにこのことです。

事例:ある整体院院長の「思考の転換」

神奈川県で整体院を営む50代の院長、田村さん(仮名)のケースを紹介します。

田村さんは、腕には自信がありました。
口コミで来てくれたお客さまからの評価も高く、リピート率も悪くない。
でも、経営はずっと苦しかった。
スタッフは2名、売上は毎月ギリギリ。
新規集客のための広告を打っても、費用対効果が見えにくく、なかなか思い切れない状態が続いていました。

あるとき、田村さんは知人の紹介で経営勉強会に参加しました。
そこで講師からこんな問いを投げかけられます。

「あなたは今、お客さまのことをどんなふうに見ていますか?」

田村さんは少し考えて答えました。
「体の不調を抱えて困っている方々です」と。

講師は続けて聞きます。
「では、あなたのサービスを受けた後のお客さまはどうなっていますか?」

「痛みがなくなって、仕事や日常生活に戻れるようになります」

「それはつまり、あなたの施術はその人の人生を変えているということですね。
それに見合った対価を請求することに、遠慮する必要はありますか?」

この一言が、田村さんの頭の中に刺さりました。

それまで田村さんは、無意識のうちに「整体はぜいたく品だから、高くしたら来てもらえない」と思い込んでいました。
でも実際には、自分の施術によって仕事に復帰できた方、育児ができるようになった方、睡眠が改善された方が何人もいた。

思考が変わったことで、田村さんは行動を変えました。
まず、施術のメニューを整理して、単価の高いコースを新設。
ホームページの文章も「価格の安さ」ではなく「あなたの日常を取り戻す」というメッセージに変えました。
スタッフへの説明の仕方も変わり、チーム全体の接客姿勢が前向きになりました。

結果、半年後には客単価が1.4倍に。
新規よりもリピートと紹介が増え、広告費を下げながら売上は増えるという、以前とは真逆の状態になりました。

変わったのは、まず田村さんの「頭の中」でした。

経営者の思考が、組織全体に伝わる

もう一つ、見落とされがちな点があります。
それは、経営者の思考は、スタッフにも伝染するということです。

「どうせうちの規模では限界がある」と思っている経営者のもとでは、スタッフも知らず知らずのうちに「ここはそういう会社だ」という空気を吸い込みます。
新しいアイデアを出しても「どうせ無理」と感じる組織になっていく。

一方で、「まだまだよくできる、変えられる」という思考を持った経営者のもとでは、スタッフも「提案してみよう」「試してみよう」という雰囲気が生まれやすくなります。

経営者の言葉、表情、判断の速さ、何に時間とお金を使うか―これらすべてが、経営者の思考を反映しています。
スタッフはそれを肌で感じ取り、自分たちの行動基準にしていきます。

10名以下の小さな組織であれば、なおさらその影響は大きい。
経営者が変われば、会社全体が変わる。
これは比喩ではなく、現実です。

まとめ:今日から使える「思考の点検」習慣

「思考が現実をつくる」という言葉は、気合いや根性の話ではありません。
自分の頭の中にある「無意識の思い込み」に気づき、それを見直すことで、行動と結果が変わるという、非常に実践的な話です。

一つ、簡単な習慣をご提案します。

毎朝、もしくは週に1度、次の問いを自分に投げかけてみてください。
「今の私は、どんな前提で経営しているか?」
・お客さまに対して、どんなイメージを持っているか
・自分の会社の可能性を、どこまで信じているか
・スタッフに対して、どんな期待を持っているか

これを紙やスマホのメモに書き出すだけで十分です。
書いてみると、「あ、私はこんなふうに思い込んでいたのか」という発見が必ずあります。

思考は目に見えません。
だからこそ、意識しなければ変わらない。
でも、意識さえすれば、今日からでも変えられます。

あなたの会社の未来は、今この瞬間のあなたの思考の中に、すでに芽吹いています。

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