顧客視点で競合を見つける
はじめに:同業者だけを見ていませんか?
「うちの競合は、近所にある同じ業種のお店です」
経営者の方とお話ししていると、こんな答えが返ってくることがよくあります。
確かに間違いではありません。
でも、それだけを見ていると、大切なお客様を他の会社に奪われてしまうかもしれません。
今日は、本当の競合を見つける方法についてお話しします。
難しい経営理論ではありません。
お客様の立場に立って考えれば、誰でも実践できる方法です。
なぜ「本当の競合」を知ることが大切なのか
商売を続けていくためには、お客様に選ばれ続けることが必要です。
そのためには「お客様は、なぜうちではなく他を選ぶのか」を知らなければなりません。
ところが、多くの経営者は「同じ業種の会社」だけを競合だと考えがちです。
ラーメン店ならラーメン店、美容院なら美容院、税理士なら税理士。
確かにそれらは競合ですが、実はそれだけではないのです。
お客様は商品やサービスそのものではなく、「その商品やサービスで得られる価値」にお金を払っています。
そして、同じ価値を提供してくれる相手なら、業種が違っても選択肢に入るのです。
顧客が求める「価値」から考える
身近な例として「町の書店」で考えてみましょう。
書店の競合は本屋だけ?
「うちは書店だから、競合は近くの他の書店だ」と考えるのは自然です。
でも、お客様の視点で見ると、違う景色が見えてきます。
書店に来るお客様は、何を求めているのでしょうか?
・知識や情報を得たい(ビジネス書を買うビジネスパーソン)
・暇つぶしや娯楽がほしい(通勤電車で読む小説を探す会社員)
・子どもを楽しませたい(休日に絵本を探す親子)
・贈り物を選びたい(友人の誕生日プレゼントを探す人)
・静かに過ごす場所がほしい(カフェ併設の書店で本を読みたい人)
こう考えると、書店の競合は本屋だけではないことがわかります。
知識や情報を得たい人にとっては、Amazonなどのネット書店、YouTubeの解説動画、オンライン講座なども選択肢です。
暇つぶしや娯楽がほしい人なら、NetflixやSpotifyなどの動画・音楽配信サービス、ゲームアプリも競合になります。
子どもを楽しませたい親にとっては、図書館、公園、室内遊び場、YouTubeキッズなども選択肢に入るでしょう。
贈り物を選びたい人には、ギフトショップ、雑貨店、お菓子屋さんも競合です。
静かに過ごしたい人にとっては、カフェ、図書館、公園のベンチも同じ価値を提供します。
つまり、「本を売る会社」という枠で考えると見えないライバルが、「お客様の求める価値」という視点で見るとたくさん見えてくるのです。
もう一つの事例:クリーニング店の場合
もう一つ、違う例も見てみましょう。「クリーニング店」の場合です。
クリーニング店の経営者が「うちの競合は近所のクリーニング店」とだけ考えていたら、どうなるでしょうか?
お客様がクリーニング店に求める価値を考えてみます。
・衣類をきれいにしたい
・自分で洗えないものを洗いたい
・時間や手間を節約したい
・大切な服を傷めずに洗いたい
・すぐに仕上げてほしい
この価値から考えると、競合は次のように広がります。
衣類をきれいにしたい人にとっては、コインランドリー、最新のドラム式洗濯機、宅配クリーニング、家事代行サービスも選択肢です。
時間や手間を節約したい人なら、「洗濯不要」を謳うウォッシャブルスーツやシワになりにくいシャツを買う、という選択もあります。
つまり、衣料品メーカーも間接的な競合です。
すぐに仕上げてほしい人には、即日仕上げのクリーニング店、アイロン不要の衣類、そもそもクリーニングが必要ない服を選ぶという選択肢があります。
このように、「お客様がどんな価値を求めているか」で考えると、思いもよらない競合が見えてきます。
競合を知る一番の方法:お客様に聞く
では、自分の会社の本当の競合を知るには、どうすればよいのでしょうか?
答えは簡単です。お客様に聞けばよいのです。
お客様は、あなたの商品やサービスを選ぶとき、必ず他の選択肢と比較しています。
その選択肢こそが、あなたの本当の競合なのです。
具体的な質問例
次のような質問を、日々の会話の中でさりげなく聞いてみましょう。
「今日、うちを選んでいただいた理由は何ですか?」
「うちを知る前は、どうされていましたか?」
「うちが休みだったら、どうされますか?」
「似たようなサービスで、他に検討されたものはありますか?」
これらの質問への答えに、本当の競合が隠れています。
例えば、あなたが飲食店を経営していて、お客様に聞いたとします。
・「手早く食べられるから選んだ」→ コンビニ、立ち食いそば、牛丼チェーンが競合
・「家族でゆっくり食事したかった」→ ファミリーレストラン、回転寿司、フードコートが競合
・「一人でゆっくり本を読みながら食事したかった」→ カフェ、図書館のカフェ、自宅が競合
同じお店でも、お客様によって競合が違うことがわかります。
お客様の声を聞いて見えてくること
お客様に聞くことで、こんなメリットがあります。
思わぬ強みに気づく
「うちは場所が駅から遠くて不便だ」と思っていたのに、お客様からは「静かでゆっくりできるから好き」と言われた。こんな発見があります。
改善すべき点がわかる
「本当は◯◯があればいいのに」という声を聞けば、それが次の改善のヒントになります。
新しいサービスのヒントが得られる
お客様が「他にこんなことで困っている」と話してくれれば、新しいサービスを考えるきっかけになります。
今日から始められる3つのステップ
では、具体的にどう行動すればよいのでしょうか。
ステップ1:お客様との会話を意識する
今日から、お客様と話すときに「なぜうちを選んでくれたのか」を聞いてみましょう。
アンケートでなくても、雑談の中で構いません。
ステップ2:答えをメモする
聞いた内容を、簡単でよいのでメモに残します。
スマホのメモ帳でも、手帳でも何でも構いません。
ステップ3:パターンを見つける
1週間、1ヶ月とメモを続けると、似たような答えが集まってきます。
それが、お客様があなたの会社に求めている価値です。
そして、その価値を提供できる他の会社が、本当の競合なのです。

まとめ:お客様の目線で競合を見る
本当の競合は、「同じ業種の会社」とは限りません。
お客様が求める価値を提供できる、すべての選択肢が競合になり得ます。
難しく考える必要はありません。
お客様に「なぜうちを選んでくれたのか」「他にどんな選択肢があったか」を聞けばよいのです。
その答えの中に、あなたの会社の本当の競合が見えてきます。
そして、本当の競合がわかれば、どこで勝負すべきか、何を磨くべきかも見えてきます。
今日から、お客様の声に耳を傾けてみてください。
そこには、あなたの会社を成長させるヒントがたくさん隠れているはずです。
お客様が一番よく知っているのです。
だから、お客様に聞けばわかるのです。
