競合商品との差別化と広告戦略の考え方
はじめに:なぜ「強みの打ち出し方」が大切なのか
商売をしていると、必ず競合他社の存在を意識する場面があります。
「あそこのお店より、うちは何が優れているんだろう?」「大手と比べて、うちの商品はどうアピールすればいいんだろう?」
そんなふうに考えたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、この「競合と比べたときの自社の見せ方」には、ちょっとしたコツがあります。
それは、自分の強みを前面に出し、苦手な部分はあえて強調しないという考え方です。
「それって、お客さんを騙すことにならないの?」と思われるかもしれません。
でも、決してそうではありません。
これは、お客さんに「何を基準に選ぶか」という選択肢を提示している行為なのです。
今回は、この考え方について、具体例を交えながらわかりやすくお伝えします。
競合分析の基本:相手の「強み」と「弱み」を知る
まず、競合他社と自社を比較するときの基本的な考え方をお話しします。
たとえば、掃除機の市場を例に考えてみましょう。
高性能掃除機のブランドとして有名な「ダイソン」があります。
ダイソンの掃除機は、吸引力の強さやデザイン性の高さで定評があります。
「吸引力が変わらない」というキャッチコピーを覚えている方も多いでしょう。
これがダイソンの「強み」です。
では、ダイソンの「弱み」は何でしょうか?
調べてみると、それはおそらく「価格」です。
家電量販店やインターネット通販で買える掃除機の中には、ダイソン製品の数分の一の価格で手に入るものもたくさんあります。
ここで大切なのは、相手の弱みは、自分にとっての強みになり得るということです。
もしあなたが「価格の安さ」を売りにした掃除機を販売するなら、ダイソンを意識した上で、自社の強みである「お手頃価格」を前面に打ち出すことが効果的です。
「言うこと」と「言わないこと」を選ぶ
では、実際に広告を作るとしたら、どうすればいいでしょうか?
価格が強みの商品なら、たとえば「コードレスで軽量、7,980円」といったメッセージが考えられます。
このとき、あえて触れないほうがいい情報もあります。
それは、たとえば「吸引力の数値」や「バッテリー持続時間」です。
なぜでしょうか?
もし吸引力がダイソンより弱いとしたら、それを強調する必要はありません。
わざわざ自分の弱みを声高にアピールする必要はないのです。
一方、ダイソンのテレビCMを見ると、価格については一切触れていません。
なぜなら、価格はダイソンにとって「あまり強調したくない部分」だからです。
代わりに、吸引力の強さやスタイリッシュなデザインといった強みを前面に出しています。
これは、お客さんを騙しているわけではありません。
「価格を重視するか、性能を重視するか」という選択肢をお客さんに提示しているのです。
お客さんは、自分の価値観やニーズに合わせて、どちらを選ぶかを決めることができます。
「安くてそこそこ使えればいい」という人もいれば、「少し高くても最高性能のものがほしい」という人もいます。
それぞれのニーズに応えられるように、自社の強みを明確に伝えることが、広告の役割なのです。
身近な事例で考えてみましょう:町のクリーニング店と大手チェーン店
もう少し身近な例で考えてみましょう。
あなたの町に、昔からある個人経営のクリーニング店があるとします。
一方で、最近は大手チェーンのクリーニング店も増えてきました。
大手チェーン店の強みは何でしょうか?
・価格が安い(ワイシャツ1枚100円など)
・店舗数が多くて便利
・仕上がりが早い
では、大手チェーン店の弱みは?
・対応がマニュアル的になりがち
・特別な素材や難しいシミへの対応が限られる
・一人ひとりの要望に細かく応えにくい
個人経営のクリーニング店がこの状況で戦うなら、どうすればいいでしょうか?
「大手より安くします!」と価格競争を挑むのは、あまり得策ではありません。
規模の違いから、どうしても不利になりやすいからです。
そこで考えるべきは、自分の強みを明確にすることです。
たとえば、個人店の強みはこんなところにあるかもしれません。
・長年の経験で培った職人の技術
・シルクや革製品など、デリケートな素材への対応
・「このシミを落としてほしい」という細かい相談ができる
・仕上がりの丁寧さ
これらを活かした広告を考えるなら、こんなメッセージはいかがでしょうか。
「30年の職人技で、大切な一着をお預かりします」
「他店で断られたシミ、ご相談ください」
このとき、「価格」についてはあえて触れません。
なぜなら、それは自分にとって不利な土俵だからです。
逆に、大手チェーン店の広告を見ると、「職人技」とか「デリケート素材への対応」といったことはあまり言いません。
それよりも「安い」「早い」「便利」という自分たちの強みを前面に出しています。
お互いが、自分の得意なところで勝負している。 これが、健全な競争のあり方です。
「USP」という考え方
ここで、マーケティングの世界でよく使われる言葉を一つご紹介します。
それは「USP」というものです。
USPとは、英語の「Unique Selling Proposition」の略で、日本語にすると「独自の売り」とか「他にはない強み」という意味です。
難しく考える必要はありません。
要は、「うちの商品・サービスを選ぶ理由は何か?」ということです。
先ほどのクリーニング店の例で言えば、
・大手チェーン店のUSPは「安さと便利さ」
・個人店のUSPは「職人技と丁寧な対応」
というふうに整理できます。
大切なのは、自分のUSPを明確にして、それをお客さんに伝えることです。
すべての面で他社より優れている必要はありません。
一つでも「これだけは負けない」というものがあれば、それを徹底的にアピールするのです。
「言わないこと」は嘘ではない
ここで改めて強調したいのは、弱みを言わないことは、嘘をついているわけではないということです。
お客さんは賢い消費者です。
安いものを選べば、高級品と同じ品質は期待できないことをわかっています。
逆に、高いお金を払えば、それなりの価値があることも知っています。
広告の役割は、「この商品は、こういう価値を提供します」ということを明確に伝えることです。
すべての情報を網羅的に伝えることではありません。
もちろん、嘘をついたり、お客さんを騙したりするのは論外です。
でも、自分の強みを前面に出して、弱みについてはあえて触れないというのは、まったく問題のない戦略です。

まとめ:自分の「土俵」で勝負しよう
今回のポイントを整理すると、以下のようになります。
競合の強みと弱みを分析する
相手が何を得意としているか、逆に何が苦手かを把握しましょう。
相手の弱みは、あなたにとってのチャンスかもしれません。
自分の強み(USP)を明確にする
「うちを選ぶ理由は何か?」を一言で言えるようにしましょう。
すべてで勝つ必要はありません。
一つの強みを徹底的に磨くことが大切です。
広告では、強みを前面に出す
自分にとって有利なことをしっかり伝えましょう。
不利なことをわざわざ強調する必要はありません。
これは「騙し」ではなく「選択肢の提示」
価格を重視するか、性能を重視するか。
それを選ぶのはお客さんです。
自分の強みを明確に伝えることで、「こういう価値を求める人には、うちがぴったりですよ」というメッセージを届けるのです。
中小企業や個人事業の経営者の方にとって、大手と真っ向から勝負するのは難しい場面も多いでしょう。
でも、自分だけの強みを見つけて、それを上手に伝えることができれば、十分に戦っていけます。
ぜひ、「自分の土俵」を見つけて、そこで勝負することを心がけてみてください。

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