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経営の羅針盤:「誰に」が決まれば、すべてが決まる

経営の羅針盤:「誰に」が決まれば、すべてが決まる

ターゲット設定の重要性:成功への道しるべ

ビジネスにおいて「誰をお客様にするか(ターゲット)」を決めることは、航海でいう「目的地」を決めるのと同じです。
ここがハッキリしていれば、どんな商品を、いくらで、どうやって届けるかは自然と決まってきます。

逆に、ここが曖昧だと、船(会社)はどこへ向かえばいいか分からず、海の上で迷子になってしまいます。
最悪の場合、座礁(倒産)してしまう危険さえあるのです。

「みんな」を狙うと失敗する? ~雑誌の事例から~

分かりやすい例として、出版業界の話をしましょう。
2000年頃、「シニア向け雑誌」が100誌以上も創刊されましたが、そのほとんどが姿を消しました。
生き残ったのは『ハルメク』や『サライ』など、ごくわずかです。

なぜ、多くが失敗したのでしょうか?

それは、「60歳以上なら誰でもいい」というように、対象を広くぼんやりと設定してしまったからです。
60歳といっても、バリバリ働いている人もいれば、趣味に没頭したい人もいます。
全員に好かれようとした結果、中身が薄まり、誰の心にも響かない「よくある雑誌」になってしまったのです。

一方で、成功した『ハルメク』は何をしたのか?

彼らはターゲットを「通販が好きで、アクティブな60〜70代の女性」と、強烈に絞り込みました。
「通販好き」という具体的な人物像に絞ったからこそ、雑誌の中に魅力的な通販カタログを組み込み、そこで独自の健康食品や洋服を売ることで、売上の8割を作るという独自の成功モデルを築くことができたのです。

「お客様を分ける」と「選ぶ」の違い

マーケティング(売れる仕組みづくり)の世界には、少し難しい言葉ですが「セグメンテーション(細分化)」と「ターゲティング(絞り込み)」という考え方があります。
これを料理に例えてみましょう。

セグメンテーション(分ける)

大きなホールケーキ(市場全体)を、「ショートケーキ好き」「チョコ好き」「甘さ控えめ派」などの切り口でナイフを入れて切り分ける作業です。

ターゲティング(選ぶ)

切り分けたケーキの中から、「よし、ウチの店はこの『甘さ控えめ派』の人たちに一番美味しいケーキを届けよう!」と、自分たちが勝負する一切れを選ぶことです。

切り分け方は自由です。「年齢」で切ることもできれば、「住んでいる場所」で切ることもできます。細かく切ろうと思えば、いくらでも細かくできます。

「狭すぎず、広すぎず」の絶妙なバランス

ここで重要なのが「どのくらいの大きさのケーキ(市場)を選ぶか」というバランス感覚です。

小さすぎると…(細かく分けすぎる)

「〇〇市の××町に住む、左利きの30代男性」のように絞りすぎると、お客様の数が少なすぎて商売になりません。
よほど高額な商品を売らない限り、手間ばかりかかって儲けが出ないのです。

大きすぎると…(広く狙いすぎる)

逆に「60歳以上全員」のように大きすぎると、先ほどの雑誌の失敗例のように、ライバルも多く、誰にも刺さらない商品になってしまいます。

有名なコンサルティング会社(BCG)は、この「お客様の顔が見える具体性」と「商売として成り立つ規模」のちょうど良いバランスを見つけることこそが、戦略の要(かなめ)だと言っています。

社長が「誰に」を示さないと、現場は迷走する

最後に、これは組織運営(人のマネジメント)の話でもあります。

社長がターゲットを明確に示さずに、ただ「とにかく売ってこい!」と号令をかけたらどうなるでしょうか?
営業担当者は、どこに行けばいいか分かりません。
「誰でもいいから買ってくれ」と手当たり次第に回って断られ続けたり、行きやすい馴染みの客先でお茶を飲んで時間を潰したり…。
そのうち疲弊して、「この会社には未来がない」と辞めてしまうかもしれません。

「ウチのお客様は、こういう人だ! だから、ここにアプローチしよう!」

社長が指差したその先に、全社員の力を集中させること。
これこそが、小さな会社が生き残り、勝つための経営の第一歩なのです。

ご提案

いかがでしたでしょうか?
専門的な内容も、このように「雑誌の失敗例」や「ケーキの切り分け」に例えると、従業員の皆様にもイメージしやすくなるかと思います。

【次のステップとして】
御社の現在の「ターゲット(理想のお客様像)」が、現場の従業員の方にも伝わる言葉になっているか、チェックしてみてください。

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