利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「心理的安全性」が会社を強くする—肩書きを外して、チームの力を引き出す方法

「心理的安全性」が会社を強くする—肩書きを外して、チームの力を引き出す方法

グーグルに学ぶ、風通しの良い職場づくり

はじめに

あなたの会社では、社員が会議で自由に意見を言えていますか?

「こんなことを言ったら笑われるかな」「上司に反論したら、あとで評価が下がるかも」—そんな空気が漂っている職場は、実は多くの成果を取りこぼしています。

今回ご紹介するのは、世界を代表するIT企業・Googleが実践している「チームの動き方」です。
難しい経営理論ではありません。
社員10名前後の中小企業でも、明日からすぐに意識できる話です。

Googleのチームは、幼稚園児に似ている

Googleの社員の働き方は、スパゲッティとマシュマロで塔をつくる幼稚園児にたとえられることがあります。

どういうことでしょうか。

この「スパゲッティタワー」は、チームビルディングの実験として有名です。
マシュマロを頂点に、乾燥スパゲッティを組み合わせてできるだけ高い塔を建てる、というゲームです。
ビジネススクールの学生やコンサルタントが挑戦すると、多くの場合、最初に役割分担を決め、計画を立て、誰がリーダーかを確認してから作業を始めます。
結果として、時間が足りなくなったり、塔が崩れたりすることが少なくありません。

一方、幼稚園児のチームはどうでしょう。
誰がボスかなど気にせず、とにかく「やってみる→崩れる→直す」を繰り返します。
失敗を恐れず、わいわい言いながら手を動かす。
その結果、幼稚園児のほうが高い塔を建てることが多いという、驚きの結果が出ています。

Googleのチームは、まさにこの幼稚園児のような動き方をしています。
肩書きや役職よりも「一緒に考えて、試してみる」ことを大切にしているのです。

なぜ、そんな動き方ができるのか—「帰属のシグナル」という考え方

Googleの創業者であるラリー・ペイジは、難しい問題に直面すると社員を挑発して、あえて活発な議論を引き起こすことで知られています。
批判を恐れずに意見をぶつけ合う文化が、会社全体に根付いているのです。

毎週金曜日に開かれる全社会議では、参加者全員がほぼ同じ時間だけ話し、同じ時間だけ聞きます。
誰か一人が場を支配するのではなく、全員が対等に参加する場です。

コミュニケーションの特徴も独特です。
長々とした説明より、短い言葉で素早くやりとりする。
お互いの目を見ながら、エネルギッシュに言葉を交わす。

これらはすべて、「帰属のシグナル」と呼ばれるものです。
帰属とは「自分はここにいていい」という感覚のこと。
「このチームのメンバーとして認めてもらえている」という安心感が、社員の力を最大限に引き出す土台になります。

Googleの職場には、この帰属のシグナルがあふれています。
お互いに近い距離で働き、誰もが安心して自分の仕事に没頭できる環境—これがイノベーションの源泉になっているのです。

事例:地方の小さな食品メーカーで起きた変化

抽象的な話だけでは実感しにくいと思いますので、ある中小企業の事例をご紹介します。

従業員12名の地方食品メーカー・Sさんの会社の話です。
Sさんは製造と営業を兼ねる職人気質の社長で、「自分が正しい判断をして、社員に指示を出す」というスタイルで長年経営してきました。

しかし、ある時期から売上が伸び悩み始めました。
新商品のアイデアが出ず、既存商品の改良も停滞。
何より気になったのは、社員が会議でほとんど発言しないことでした。
「何か意見はあるか?」と聞いても、シーンとしてしまう。

Sさんが経営者向けセミナーで「心理的安全性」という言葉を聞いたのは、そのころのことです。
「安心して意見を言える職場かどうかが、チームの成果を左右する」という話に、思い当たる節がありました。

Sさんが最初に変えたのは、週1回の朝礼の進行です。
それまでは自分が話して終わりだった朝礼を、「一人ひとりが一言ずつ近況報告をする場」に変えました。
内容は仕事の話でなくてもいい。
「週末に行ったラーメン屋がおいしかった」でも構わない。

最初はぎこちなかったものの、2ヶ月ほど経つと変化が現れました。
製造担当のパートスタッフから「お客さんにもっと使いやすいよう、袋の開け口を変えたほうがいいのでは」という提案が出たのです。
それまでなら絶対に出なかった意見でした。
Sさんはすぐに採用し、翌月から改良版を販売。顧客からの好評がSNSで広まり、その商品が前年比130%の売上を記録しました。

Sさんが変えたのは、難しい仕組みではありません。
「社員が話せる場を作り、小さな意見でも真剣に受け止める」という姿勢を示しただけです。

小さな会社だからこそ、できることがある

Googleのような大企業の話を聞くと、「うちみたいな小さな会社には関係ない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし実は逆です。

従業員が10名前後であれば、社長が全員の顔と名前を知っています。
全員が同じ空間で働き、毎日顔を合わせることもできます。
大企業がどれほどお金をかけても作れない「近さ」が、最初から手の届く場所にあるのです。

大切なのは、その「近さ」を活かすことです。

たとえば、こんなことから始めてみてください。

会議では、社長が最後に話す。
社長が先に結論を言ってしまうと、社員は「正解を探す」モードになり、自分の意見を出しにくくなります。
まず社員に発言させ、社長はそれを聞いてから意見を加えるようにするだけで、会議の空気は大きく変わります。

失敗を責めない場をつくる。
「なぜ失敗したんだ」より「次はどうすればいいか」に焦点を当てる言葉がけを習慣にしましょう。
失敗を隠す文化は、やがて大きなミスにつながります。

雑談の時間を意図的につくる。
仕事の話だけでなく、日常の会話ができる雰囲気が、職場の「帰属感」を高めます。
休憩室でのちょっとした会話が、実はチームの絆を育てているのです。

まとめ:肩書きより「安心感」が、会社の力を引き出す

Googleが実践している働き方の本質は、難しいシステムや仕組みではありません。
「誰もが安心して意見を言える場をつくること」—その一点に尽きます。

肩書きや役職を越えて、お互いが対等に話し合える文化。
失敗を責めるのではなく、一緒に試行錯誤できる雰囲気。
「この場にいていい」という安心感が職場に満ちているとき、社員は本来の力を発揮します。

幼稚園児がわいわいと塔を作るように、あなたの会社でも、社員みんなが夢中になって仕事に取り組む場をつくることができます。
そのためにまず必要なのは、高価なツールでも、精巧な制度でもなく、社長自身が「話しかけやすい空気」を意識的につくることではないでしょうか。

小さな変化が、大きな成果につながる。
そのことを、Googleのチームはスパゲッティとマシュマロで教えてくれています。

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