利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「わかってはいるけど、できない」を終わりにする—差別化・発信・仕組みを日常に組み込む方法

「わかってはいるけど、できない」を終わりにする—差別化・発信・仕組みを日常に組み込む方法

「大事なのに続かない」を変える—差別化・発信・仕組みを日常に落とし込む方法

知識は増えた。でも、何も変わっていない。

このシリーズをここまで読んでくださった方は、すでにかなりのことを「知って」います。

差別化の大切さ、自分の強みの見つけ方、発信の組み立て方、お客さんとの関係を育てる仕組みの設計—これだけのことを理解していれば、経営の方向性はかなりはっきりしてきているはずです。

でも、ここで正直に問いかけさせてください。

「知っていること」と「やっていること」の間に、大きな溝はありませんか?

「大切なのはわかった。でも、日々の仕事に追われて、なかなか手がつけられない」—これが、多くの経営者の本音だと思います。

今回は、このシリーズの締めくくりとして、「知っていること」を「やり続けていること」に変えるための、具体的な方法をお伝えします。
難しい話は一切ありません。
今日から使える、シンプルな考え方です。

なぜ「わかっているのにできない」のか

まず、なぜ「わかっているのにできない」状態が生まれるのかを整理しておきます。

原因は、意志の弱さでも、やる気の問題でもありません。
ほとんどの場合、原因は二つです。

一つ目は、「いつやるか」が決まっていないこと。
「時間があるときにやろう」と思っていることは、永遠に「時間があるとき」が来ません。
忙しい経営者の時間は、何もしなければすべて目の前の仕事に埋まってしまいます。

二つ目は、「何から始めるか」が大きすぎること。
「差別化を徹底しよう」「発信を本格的に始めよう」という目標は、方向性としては正しくても、行動の入口としては大きすぎます。
大きすぎる目標は、踏み出すための第一歩が見えにくく、結果として何もしないまま時間が過ぎていきます。

この二つを解決することが、今回のテーマです。

「週のリズム」に組み込む

最も効果的な方法は、差別化・発信・仕組みに関わる行動を、「週のリズム」の中に組み込んでしまうことです。

特別な時間を新たに生み出そうとすると、続きません。
すでにある日常の流れに、小さな行動を「くっつける」ことで、無理なく習慣になっていきます。

たとえば、こんなイメージです。

月曜の朝10分:その週の「発信ネタ」を一つ決める

先週の仕事の中で印象に残ったこと、お客さんに聞かれたこと、自分が工夫したこと—その中から一つ選んで、メモ帳に一行書き留めておく。
完成した文章を書く必要はありません。
「ネタを決める」だけです。

水曜の昼休みに15分:発信を一つ仕上げる

月曜に決めたネタを、短い文章にします。
長くなくていい。
3〜5文で十分です。
「今日はこんな仕事をしました。こんな工夫をした理由は……」それだけで立派な発信になります。

金曜の終業前5分:お客さんリストを一人見直す

今週対応したお客さんの中で、「次の接点」をいつ、どんな形で持つかを確認する。
来月フォローの連絡を入れる方をカレンダーに登録する。
それだけです。

合計30分。
週にたった30分のルーティンで、発信と仕組みの両方が動き始めます。

事例:配管工事の一人親方が「3ヶ月で変わった」こと

ある一人親方の配管工事業者の話をご紹介します。

技術には自信があり、お客さんからの評判も良い。
でも、仕事は紹介か、たまたま電話帳で見つけてもらうか、という状態が長く続いていました。
「何か発信したほうがいいのはわかってるけど、現場から帰ると疲れていて何もできない」というのが正直なところでした。

そこで試したのが、「現場から帰る車の中」を使う方法です。

現場の片付けを終えて車に乗り込んだ直後、その日の仕事で印象に残ったことをスマートフォンに音声入力でメモするようにしました。
「今日は古い建物の配管交換で、こういう状態になっていた。こういう理由でこうなるから、築何年の建物を持っている人は注意が必要」といった内容です。
音声入力なので、文章を考える必要はありません。
しゃべるだけです。

そのメモを、週に一度だけ見返して、短い文章に整えてSNSに投稿する。
これだけを3ヶ月続けました。

変化は、3ヶ月目から出始めました。
「投稿を見ていた知人から紹介された」という問い合わせが入り、「以前お願いした者ですが、友人も困っているので紹介したい」という連絡が来るようになりました。
投稿の内容が「この人は詳しい、信頼できる」という印象をつくっていたのです。

特別なことは何もしていません。
帰りの車の中での5分と、週に一度の15分。
それだけが積み重なった結果です。

「差別化・発信・仕組み」を一つの流れで回す

ここで、このシリーズ全体を振り返りながら、三つの柱がどうつながっているかを整理しておきます。

差別化は、「あなたじゃないとダメ」と言ってもらえる理由をつくることでした。
強みを言葉にして、自分のポジションを明確にする作業です。
これは、一度しっかりと時間をかけて考えれば、頻繁に見直す必要はありません。
最初の土台づくりとして、月に一度、自分の強みやポジションを確認する時間を設けるだけで十分です。

発信は、その強みを外の世界に届ける作業でした。
週のリズムに組み込んで、小さく定期的に続けることが鍵です。
上手かどうかより、続いているかどうかが大切です。

仕組みは、縁のできたお客さんとの関係を育て続ける流れのことでした。
カレンダーにあらかじめ登録しておくことで、忙しいときでも「次の接点」が自動的に訪れる状態をつくります。

この三つは、実は順番につながっています。
差別化で「選ばれる理由」をつくり、発信で「知ってもらう」きっかけをつくり、仕組みで「長く選ばれ続ける」関係を育てる。
一つひとつは小さなことでも、三つが揃って回り始めると、経営の安定感がまったく変わってきます。

「完璧なスタート」より「小さな今日」

最後に、一番大切なことをお伝えして締めくくりにしたいと思います。

このシリーズを読んで、「よし、全部やろう」と思ってくださった方がいたとしたら、少しだけ立ち止まってください。

全部一度に始めようとすると、ほぼ確実に続きません。
「完璧に準備が整ったら始める」という考え方も、同じ理由で危険です。
完璧な準備が整う日は、来ないからです。

大切なのは、今日一つだけ始めること。

「今日のお客さんとの会話の中で、印象に残ったことを一行メモする」「来週連絡しようと思っていたお客さんの名前をカレンダーに入れる」「自分の強みを一行で書いてみる」—どれか一つで構いません。

小さなことに見えるかもしれません。
でも、その一つが、明日の一つにつながります。
一週間続けば習慣の芽が生まれ、一ヶ月続けば手応えが生まれ、半年続けば確かな変化が現れます。

経営は、大きな決断よりも、小さな行動の積み重ねで変わっていくものです。

あなたの会社には、すでに磨けば光る強みがある。
それを伝える言葉がある。
そして、長く関係を続けたいと思ってくれているお客さんがいる。

あとは、動くだけです。
今日、一つだけ。

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