社員やお客様の心を動かす、社長自身の「物語」の力

社長の物語で信頼を築く

会社を動かすのは、立派な計画書やデータだけではありません。
社長である「あなた」という人間を、社員やお客様に信頼してもらうことが、すべての始まりです。

では、どうすれば信頼を勝ち取れるのでしょうか。
そのカギは、2つの「物語」を語ることにあります。

  1. 「私は何者か」という物語(自己紹介の物語)
  2. 「私はなぜこのビジネスをしているのか」という物語(志の物語)

この2つの物語を、ご自身の言葉で語ること。
これが、人の心を動かすための第一歩です。
なぜなら、人は理屈だけで動くのではなく、「この人なら信じられる」という感情で動く生き物だからです。

人は、知らない人を警戒する「心のシャッター」を持っている

考えてみてください。
初めて会う営業マンが、素晴らしい商品を熱心に説明してきたら、私たちはどう思うでしょうか。
「何か裏があるんじゃないか」「うまい話には気をつけろ」と、無意識に身構えてしまいますよね。

これは、心に「シャッター」を下ろして、自分を守ろうとする本能的な働きです。

社長と社員、あるいは社長とお客様の関係も同じです。
あなたがどんな人で、どんな想いで仕事をしているのかが伝わらない限り、相手は心のシャッターを閉ざしたままです。
その状態で、いくら「会社の目標は…」「この商品のメリットは…」と熱弁しても、相手の心には響きません。
むしろ、「社長は自分の利益のために、私たちを動かそうとしているんだろう」と、あらぬ憶測をされてしまうことさえあるのです。

心のシャッターを開ける魔法、それが「物語」

では、どうすれば相手の心のシャッターを開けることができるのでしょうか。

それは、まるで一緒に体験したかのような気持ちにさせる「物語」の力を使うのです。
立派な経歴書や難しいデータを見せるだけでは、あなたの「人柄」は伝わりません。

失敗談や弱みを正直に話してみる。

「完璧すぎる人」には、なかなか本音を言えないものです。
社長が「昔はこんな失敗もしたんだよ」と笑いながら話してくれれば、社員は「この社長も自分たちと同じ人間なんだ」と親近感を抱きます。
「自分の弱みを見せてくれるくらい、私たちのことを信頼してくれているんだな」と感じ、安心して心を開いてくれるでしょう。

「儲けたい」という気持ちも、正直に語る。

「社会のために」という立派な建前だけでは、人は動きません。
「この事業を成功させて、会社を大きくしたい。
そして、頑張ってくれているみんなの給料を上げて、家族を安心させたいんだ」。
このように、社長自身の夢(利己的な動機)と、社員への想い(利他的な動機)の両方を正直に語ることが大切です。
人は、社長が自分の利益を追求することを気にしません。
それどころか、その夢に「自分たちも含まれている」と分かれば、喜んで応援したいと思うものです。
大切なのは、嘘をつかず、誠実であることです。

物語を語るときの、たった一つの大切な心構え

最後に、最も大切なことをお伝えします。
それは、聞く相手への「敬意」です。

たとえ相手が自分より若くても、経験が浅くても、決して見下すような態度をとってはいけません。
「どうせ、こんな話をしても分からないだろう」という気持ちは、言葉にしなくても必ず相手に伝わります。
そうなれば、どんなに素晴らしい物語も色あせてしまい、ただ不快感だけが残るでしょう。

あなたの物語を聞いてくれる相手は、あなたのビジネスにとってかけがえのないパートナーです。
常に敬意を払い、真摯な姿勢で語りかけること。

そうすれば、あなたの物語は相手の心に深く届き、「この社長のためなら、一肌脱ごう!」という固い信頼関係を築くことができるはずです。