会社の「今」の姿は、いわば過去を映し出す鏡です。

もし今、会社の資金繰りが苦しかったり、売上が伸び悩んでいたりするとしたら、それは「今日、突然問題が起きた」のではありません。
鏡に映った今の姿は、これまでの行動や決断が積み重なった「結果」に過ぎないのです。

それは、健康診断の結果と似ています。
もし良くない結果が出たとしたら、問題は診断を受けた「今日」にあるのではなく、これまでの食生活や運動習慣といった「過去の生活習慣」にありますよね。
会社もまったく同じです。

では、未来の結果を変えるために、経営者は何をすべきなのでしょうか。

経営者の最も大切な仕事は、船の「船長」に例えることができます。
船長は、自らエンジンを修理したり、甲板を磨いたりする必要はありません。
船長にしかできない重要な役割は、「この船はどこへ向かうのか(会社の未来)」という目的地を決め、そこへたどり着くための航路(戦略)を描くことです。
そして、様々な選択肢の中から会社全体にとって最善の航路を選び、部署という壁を越えて、船の進むべき方向を一つにまとめることです。

もし船長がこれまでと同じ航路を選び続ければ、船はいつも同じ場所にしかたどり着けません。
今とは違う目的地(未来)に到着したいのであれば、今とは違う新しい航路を選ばなければならないのです。

「でも、自分は現場の細かい仕事は苦手で…」と感じる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。船長が船の構造の全てを細部まで知っている必要がないのと同じで、経営者が全ての仕事を完璧にできる必要はありません。

例えば、広告のデザインを経営者が自ら作る必要はないのです。
むしろ、作らない方がいいでしょう。経営者の仕事は、広告を作る担当者に「私たちの船は、あっちの港を目指している。だから、その港にいる人たちに響くようなメッセージを考えてほしい」と、会社の進むべき方向性を明確に伝えることです。

そして、出来上がってきた広告を見て、「デザインがおしゃれだね」「キャッチコピーが良いね」といった感想を言うことではありません。
「素晴らしい出来栄えだけど、我々が目指す港(ターゲット)に、このメッセージは届くだろうか? 方向性が少し違うかもしれない」と、会社の航路(戦略)に合っているかどうかをチェックすることこそが、経営者にしかできない重要な役割なのです。

社員一人ひとりが、それぞれの持ち場で懸命に船を漕いでくれています。
その素晴らしい力を、会社という船が目指す目的地に向かって正しく進む力に変えること。

それこそが、未来を創る経営者の仕事なのです。