「誰の、どんなお困りごとを解決するのか?」という視点
なぜ「街の電器屋さん」は生き残っているのか?
本当に売れてないんだったら、もっと数が減っていてもいいはずです。
これはとても大切な視点です。
多くの方が、「商売は『安さ』と『品揃え』で決まる」と思い込みがちです。
もしそれが全てなら、街の電器屋さんはとっくの昔に、巨大な家電量販店との体力勝負に負けて、姿を消しているはずです。
でも、現実はそうではありません。
なぜなら、お客さんの中には「安さ」や「品揃え」とは別のものさしで、お店を選んでいる人たちがいるからです。
量販店ができないこと、街の電器屋さんができること
家電量販店: 「売ること」が仕事の中心です。
たくさんの種類の商品を、安く、効率よく売ることを目指しています。
そのため、修理のような手間がかかること、特に他のお店で買ったかもしれない商品のサポートは「対象外」になりがちです。
街の電器屋さん: 「売ること」はもちろんですが、それ以上に「お客さんの“お困りごと”を解決すること」を仕事にしています。
「照明器具の修理でハンダ付けして5分で直してくれた」というのは、まさに「お困りごと解決」ですよね。
これは、大きな量販店では絶対に真似のできない、「かゆいところに手が届く」サービスです。
誰が「お困りごと解決」を求めているのか?
家電量販店よりも値段が多少高くても気にしないということは、お金にはそんなに困っていないはずです。
それよりも、最近の家電製品のことがよくわからない中高年層にとって困ったときに助に来てくれることのほうが重要だということです。
これは経営の言葉で「ターゲットを絞る」と言います。
例えるなら、「すべての人に好かれる」のを目指すのではなく、「特定の人に熱烈に愛される」ことを目指す戦略です。
家電量販店が狙うお客さん: 「とにかく安く欲しい」「新しい機能や性能を自分で比べて選びたい」という、比較的若い層や、家電に詳しい人たち。(広い土俵)
街の電器屋さんが狙うお客さん: 「使い方がわからない」「配線がチンプンカンプン」「ちょっと壊れたけど、どこに頼めばいいの?」という、家電が苦手な中高年やシニア層。(狭いけれど、悩みが深い土俵)
今の家電は複雑すぎます。
説明書を読んでもさっぱり分からない、という方は本当に多い。
そういう方々にとって、街の電器屋さんは「家電を売るお店」ではなく、「家電の“困った”をなんでも相談できる、頼れるご近所さん」なのです。
小さな会社の「戦い方」のお手本
私たちのような小さな会社やお店は、資金力も、人の数も、大企業には絶対に勝てません。
だから、家電量販店と同じ「安さ」や「品揃え」の土俵で戦おうとした瞬間に、負けが決定してしまいます。
街の電器屋さんが教えてくれるのは、「戦う土俵をずらしなさい」ということです。
大手が「面倒くさい」あるいは「儲からない」と思ってやらない、狭いけれど、誰かが深く困っていること。
これを見つけ出し、徹底的にサポートしてあげる。
そうすれば、「多少高くても、あなたにお願いしたい」「あなたじゃないとダメなんだ」と言ってくれる、熱烈なファン(常連さん)が必ず生まれます。
街の電器屋さんは、まさに「家電が苦手なシニア層」という特定のお客さんを見つけ、その方々の「困った!」を解決するという、小さな会社のお手本となる戦い方をしているわけです。

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