「強いチームづくり」の核心
なぜ人は「上司の顔色」を異常に気にするのか?
人類の脳は、対人関係のシグナルを読み取る能力がとても高く、特に自分より上の立場の人からの評価を気にしているそうです。
ここでお伝えしたいのは、「部下が社長(上司)の顔色をうかがうのは、当たり前の本能だ」ということです。
オオカミと羊の例え
大昔、人間は群れで生活していました。
群れから追い出されることは、オオカミに食べられる「死」を意味しました。
現代の会社も、ある意味同じです。
従業員にとって、社長や上司は「群れのリーダー」。そのリーダーから「お前はいらない」と思われること(=拒絶されること)は、脳にとって「死ぬかもしれない」というレベルの最大の恐怖なんです。
だから、従業員は本能的に「社長は今、機嫌がいいか?」「自分は評価されているか?」と、アンテナを張り巡らせています。
これは、彼らが臆病だからではなく、生き残るための本能です。
10人未満の会社では、社長との距離が物理的にも心理的にも近いため、この「アンテナ」の感度は大企業よりもっと高くなっています。
チームを強くする「安心の合図」とは?
心理的安全性を構築するカギは、脳と恐怖感の深い結びつきを理解すること。
帰属のシグナルを1回か2回送るだけではまったく足りない。
人間の脳は、一貫したメッセージが何度も送られてくることを求めている。
「心理的安全性」とは、簡単に言えば「この場所(チーム)では、何を言っても大丈夫だ」という安心感のことです。
そして、「帰属のシグナル」とは、「君はここの仲間だ」「君は必要だ」という『安心の合図』のことです。
植物への水やり
この『安心の合図』は、植物への水やりに似ています。
1回だけドバっと大量の水をやっても、根腐れするだけで育ちません。
「昨日は水をやったけど、今日はやらない」では、枯れてしまいます。
大切なのは、「毎日、欠かさず、適度な水(=安心の合図)を与え続けること」です。
社長が「昨日はすごく褒めてくれたのに、今日は挨拶しても無視された」…これでは、従業員の脳は「危険だ!」とアラームを鳴らし、恐怖で縮こまってしまいます。
一貫性(いつも変わらないこと)が、何よりも重要なのです。
信頼を築くのは大変。でも、壊すのは一瞬。
だからこそ、帰属意識を築くのはこんなにも難しく、しかも壊れるときは一瞬で壊れてしまいます。
『どんな愚か者でも納屋を壊すことはできるが、納屋を建てるには腕のいい大工が必要だ』ということです。
これは、そのまま「信頼関係」に置き換えられます。
レンガ積みの家
チームの信頼関係は、レンガを一つひとつ積んで家を建てるようなものです。
社長と従業員が、毎日コツコツと「ありがとう」「助かるよ」「いいね」という小さなレンガ(=安心の合図)を積み上げて、やっと頑丈な家(=強いチーム)ができます。
時間も手間もかかります。
しかし、家を壊すのは簡単です。
ハンマーの一振り、つまり社長のたった一度の「ひどい叱責」や「裏切り」で、積み上げてきた信頼は一瞬でガラガラと崩れ落ちます。
あなたの会社に「健太さん」と「和也さん」はいませんか?
健太さんはほんの数回『非帰属のシグナル』を送っただけで、チームの和を乱すことができた。
それに対して和也さんは、さりげない言動で、『ここは安全だ』というメッセージを一貫して送り続けた。
10人未満の会社では、たった一人の言動がチーム全体に強烈な影響を与えます。
健太さん
「非帰属のシグナル」とは、「お前は仲間じゃない」という『拒絶の合図』です。
・誰かが発言したときの「ため息」や「鼻で笑う態度」
・挨拶をされても、PC画面を見たまま返事をする
・「そんなことも知らないの?」という見下した言葉
これが「健太さん」の行動です。
健太さんが一人いるだけで、「ここは安全じゃない」という危険信号がチーム全体に広がり、みんなが恐怖で口をつぐみ、パフォーマンスは一気に下がります。
和也さん
逆に「和也さん」は、『安心の合図』を泉のようにわき出させる人です。
・相手の目を見て、うなずきながら話を聞く(=傾聴)
・「手伝ってくれてありがとう」「助かったよ」(=感謝)
・「〇〇さんは、どう思う?」(=意見の尊重)
・「失敗しても大丈夫、次いこう」(=許容)
和也さんがいると、「この関係を大切に思っている」というメッセージが伝わり、チームは「ここは安全だ」と安心します。
社長へ:今日からできる「最強のチームづくり」
10人未満の会社では、良くも悪くも、社長自身が最強の「健太さん」にも「和也さん」にもなれます。
社長が健太さんになればチームは一瞬で崩壊し、社長が和也さんになれば、従業員は安心して能力を最大限に発揮します。
仕組みや制度で縛る大企業と違い、社長の「毎日の小さな言動」こそが、中小企業の最強の人材育成であり、チームビルディングです。
まずは、社長自身が会社で一番の「和也さん」になること。
今日から「ありがとう」「助かるよ」「どう思う?」を、意識して一貫して伝えてみてください。それこそが、強いチームを作る一番の近道です。

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