利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「褒める」は会社の宝探し—相手を想像する力が、ビジネスチャンスを開く

「褒める」は会社の宝探し—相手を想像する力が、ビジネスチャンスを開く

褒めることで見つかるビジネスチャンス

はじめに:商売も人間関係も「想像力」がカギになる

商売がうまくいく会社と、そうでない会社。その違いはどこにあるのでしょうか。

商品の質? 価格? 立地?

もちろん、どれも大切です。
でも、それだけでは説明がつかないことがあります。
同じような商品を、同じような価格で売っているのに、繁盛するお店とそうでないお店がある。

その差を生んでいるのは、「相手のことをどれだけ想像できるか」という力ではないでしょうか。

お客様は何に困っているのか。
何を不安に思っているのか。
何があれば安心するのか。
目の前に見えていることだけでなく、その奥にある気持ちまで想像できるかどうか。

これは商売だけの話ではありません。
社員との関係、取引先との関係、家族との関係。
あらゆる人間関係において、「相手の見えない部分を想像する力」が、関係の深さを決めていきます。

そして実は、「褒める」という行為は、この想像力を磨く最高のトレーニングになるのです。

「褒める」とは、見えない価値を見つけること

「褒める」と聞くと、相手を気持ちよくさせるための言葉、というイメージがあるかもしれません。
もちろん、それも大切な役割です。
でも、褒めることの本当の意味は、もっと深いところにあります。

それは「相手の中にある、まだ見えていない価値を発見すること」です。

たとえば、宝石の原石を想像してみてください。
山の中に転がっている石は、見る人が見なければただの石です。
でも、その奥に眠る輝きに気づいた人が「これはダイヤモンドの原石だ」と言葉にした瞬間、それは宝物になります。

褒めるという行為も、これと同じです。

社員の何気ない行動、現場で当たり前に行われていること。
表面だけを見れば「普通のこと」に見えます。
でも、その奥にある工夫や心遣いに気づいて言葉にできれば、それは会社の財産に変わります。

見えない部分を見ようとする。
相手の立場に立って想像する。
その姿勢があるからこそ、本当に価値のある「褒め」ができるのです。

背景:「見えない部分を見る力」が経営を変える

表面だけを見ていては、本当の強みに気づけない

私たちは日々、目に見えるものに追われています。
売上の数字、クレームの件数、締め切り、在庫。
どれも大切ですが、これらは「結果」であって「原因」ではありません。

本当に経営を良くしていくためには、その結果を生み出している「見えない部分」に目を向ける必要があります。

なぜお客様はうちを選んでくださるのか。
なぜあの社員の対応は評判がいいのか。
なぜこの商品だけリピートが多いのか。

答えは、数字の奥に隠れています。
そして、それを見つけ出す力こそが、次の一手を生み出す力になるのです。

深く見る力を持つ人は、同じ景色を見ていても、違うものが見えています。
それは特別な才能ではありません。
「相手の立場で想像してみよう」という意識を持つだけで、少しずつ身についていく力です。

「褒め」は見えない価値を照らす懐中電灯

私たちの目は、放っておくと問題点ばかりを探してしまいます。
「あの対応はまずかった」「この数字が足りない」。
毎日の仕事の中で、こうした会話が多くなっていないでしょうか。

これは人間の本能として自然なことです。
でも、経営においてはこれだけでは不十分です。

本当に会社を伸ばすのは、すでに現場にある「できていること」を見つけて、それを増やしていくこと。
褒めるという行為は、暗いところばかり照らしていた懐中電灯の向きを、明るいところに変えるスイッチのような役割を果たします。

良い褒め言葉は「発見のメモ」になる

「今日の電話対応、相手の話を最後まで聞いてから答えてたね。あれで相手も安心したと思うよ」

こんなふうに具体的に褒めると、何が起きるでしょうか。

言われた本人は嬉しいだけでなく、会社としても「こういう対応がお客様に喜ばれるんだ」という発見になります。

つまり、良い褒め言葉は「うちの会社の良いやり方」を見つけるメモのようなもの。
このメモが増えていくと、会社全体の「勝ちパターン」ができあがっていきます。

一人の社員の見えにくい工夫を、言葉にして光を当てる。その積み重ねが、会社の強みを育てていくのです。

「当たり前」の中にこそ、宝が眠っている

「うちは特別なことはしていないよ」

多くの経営者がそうおっしゃいます。
でも、その「特別ではないこと」の中にこそ、大きな価値が隠れていることが多いのです。

大手のファストフードチェーンが選ばれる理由を考えてみてください。
革新的なメニューでしょうか。
それとも「いつ行っても同じ味」「店内がきれい」「注文してすぐ出てくる」という当たり前の安心感でしょうか。

コンビニエンスストアが生活に欠かせない存在になったのも、「近くにある」「欲しいものがだいたい揃う」「いつでも開いている」という、一つひとつは地味な価値の積み重ねです。

当たり前のことは、空気のように見えなくなります。
でも、お客様はちゃんと感じ取っています。
その「見えにくい価値」に気づける会社は、価格競争に巻き込まれずに選ばれ続けることができます。

注意点:相手を縛る「褒め」は逆効果

ここで一つ、気をつけていただきたいことがあります。
褒め方を間違えると、かえって相手を苦しくさせてしまうことがあるのです。

「○○さんは優しい人だから、きっとこの仕事も引き受けてくれると思ってたよ」

一見、褒めているように聞こえます。
でも言われた側はどう感じるでしょうか。
「断れない」「期待に応えなければ」とプレッシャーを感じてしまうかもしれません。

これは相手を想像しているようで、実は自分の都合を押し付けている言葉です。

本当に相手の立場に立った褒め方とは、相手が気づいていない努力や工夫を見つけて、言葉にして返すことです。
×「君は優しいね」
○「さっきの電話で、相手の話を最後まで聞いてから答えてたね。あれで相手も安心したと思うよ」

相手が「人知れず頑張ってきたこと」「大事にしてきたこと」を見つけて、好意的に伝える。
これは相手への贈り物であり、同時に、現場の強みを発見する行為でもあります。

事例:町のクリーニング店が「見えない価値」で選ばれるようになった話

ここで、ある小さなクリーニング店の話をご紹介します。

従業員5名のクリーニング店B社。
店主の山田さん(仮名)は、近くに大手チェーン店ができてから売上が少しずつ減り、悩んでいました。

「うちは値段では勝てない。技術には自信があるのに、なぜお客様が減るんだろう」

ある日、山田さんは常連のお客様から何気ない一言をもらいました。

「ここは関根さん(スタッフの名前)がいつも私の服を覚えていてくれるから安心なのよね」
山田さんは最初、「そんなの当たり前だろう」と思いました。
関根さんはベテランのパートスタッフで、常連さんの服の好みや注意点を自然と覚えているだけです。

でも、ここで山田さんは「お客様の立場」を想像してみました。

クリーニングに出すとき、お客様は何を感じているのだろう。
大切な服を預ける不安。
仕上がりへの不安。
「前に言ったこと、覚えてくれているかな」という不安。

そう考えると、関根さんの「覚えている」という行動は、お客様の見えない不安を毎回小さく解消していたことに気づきました。

山田さんは関根さんにこう伝えました。

「関根さんがお客様の服を覚えているのは、うちの大きな強みだよ。お客様が安心して預けられる理由になっている。ありがとう」

褒めたのは「記憶力が良い」という性格ではありません。
「お客様のことを覚えて、それを対応に活かしている」という行動です。

次に山田さんは、この「見えにくかった強み」を形にしました。

お客様ごとの「カルテ」を作り、服の特徴や注意点、過去のやり取りを記録するようにしました。
関根さんが自然とやっていたことを、誰でもできる仕組みにしたのです。

さらに、この取り組みを「一着一着、お客様のことを覚えています」というキャッチフレーズにして、店頭のポップやチラシに使いました。

すると、変化が起きました。

常連のお客様が知人を紹介してくださるとき、以前は「あそこは関根さんが覚えていてくれるのよ」という言葉でした。
それが「あそこはお客様のことをちゃんと覚えてくれるお店なのよ」に変わったのです。

一人の社員の見えにくい工夫が、お店全体の「選ばれる理由」になりました。

価格ではなく、「安心して預けられる」という見えない価値で選ばれるようになり、客単価も少しずつ上がっていきました。

まとめ:「見えない部分を見る力」を磨く3ステップ

最後に、今日から実践できる方法を3つにまとめます。

ステップ1:褒める対象は「性格」より「行動」

「あなたは真面目だね」ではなく、「あの場面で○○していたのが良かったね」と、具体的な行動を見つけて褒めましょう。

行動を褒めると、本人も何が評価されたか分かりますし、他の人にも広げやすくなります。
「真面目」は再現できませんが、「具体的な行動」は再現できます。

ステップ2:「当たり前」の奥を想像して、価値を掘り起こす

「うちは普通だよ」と思っているところに、実は宝が埋まっています。

お客様の立場に立って想像してみてください。
お客様はなぜうちを選んでくださるのか。
何に安心を感じているのか。
何があるから戻ってきてくださるのか。

お客様からの何気ない一言、クレームの裏にある本当の期待、常連さんが戻ってきてくださる理由。
表面的な情報の奥を想像することで、見えてくるものがあります。

ステップ3:見つけた強みを「仕組み」と「言葉」にする

褒めて終わりではもったいない。見つけた強みは、次の2つに変えましょう。

一つは「仕組み」です。良い行動を、誰でもできるルールやマニュアルにします。

もう一つは「言葉」です。
お客様に伝わる説明文やキャッチフレーズにします。
お客様が誰かに紹介するときに、使いやすい言葉を用意しておくのです。

ここまでやると、一人の社員の見えにくい工夫が、会社全体の利益につながる流れができあがります。

おわりに:深く見る力は、誰でも磨ける

商売も人間関係も、「相手のことをどれだけ想像できるか」で結果が変わります。

目に見えることだけを追いかけていては、本当の価値には気づけません。
相手の立場に立って、見えない部分を想像する。
その姿勢があるからこそ、他の人が気づかない強みを発見でき、それがビジネスチャンスにつながっていきます。

そして、この「深く見る力」は、特別な才能ではありません。
「相手は何を感じているだろう」と想像する習慣を持つだけで、少しずつ身についていきます。

「褒める」という行為は、その最高のトレーニングです。

今日から、社員やお客様の何気ない一言に耳を傾けてみてください。
表面的な言葉の奥にある気持ちを想像してみてください。

そこに、次のビジネスチャンスのタネが眠っているはずです。

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