意義目標がチームを変える
はじめに:目標を立てているのに、なぜチームが動かないのか
「売上目標は伝えている」「やるべき作業も指示している」―それなのに、スタッフが受け身で、言われたことしかやらない。
そんな悩みを抱えていらっしゃる経営者の方は多いのではないでしょうか。
実は、この問題の原因は「目標の種類」にあるかもしれません。
目標には大きく分けて3つの種類があります。
「行動目標」「成果目標」、そして「意義目標」です。
多くの会社では、最初の2つは設定されているものの、3つ目の「意義目標」が抜け落ちていることが少なくありません。
この記事では、3つの目標の違いと、なぜ「意義目標」がチームに活力を与えるのかを、具体的な事例を交えてお伝えします。
3つの目標とは何か?―料理に例えて考える
まず、3つの目標の違いを、料理に例えて整理してみましょう。
行動目標は「レシピ通りに作る」ことです。「玉ねぎを5分炒める」「塩を小さじ1杯入れる」といった、具体的な手順や作業のことを指します。
成果目標は「美味しいカレーを完成させる」ことです。最終的に達成すべき結果、数値で測れるゴールのことです。
意義目標は「家族に笑顔で食卓を囲んでもらう」ことです。なぜその料理を作るのか、その先にある目的や価値のことを指します。
会社の目標に置き換えると、こうなります。
・行動目標:「1日10件、お客様に電話をかける」「毎週、チラシを500枚配る」
・成果目標:「今月の売上500万円」「新規顧客を10件獲得する」
・意義目標:「地域のお客様の暮らしを、もっと快適にする」「お客様の不安を安心に変える」
行動目標・成果目標だけでは何が起きるのか
「作業の奴隷」になるケース
行動目標しか設定されていないチームでは、メンバーは「言われたことをこなす」ことが仕事になります。
「1日10件電話をかける」という目標だけが与えられると、電話をかけること自体が目的になってしまいます。
相手が不在でも「かけた」とカウントし、会話の質は二の次。
なぜ電話をかけるのか、その先に何があるのかを考えなくなります。
これでは、まるで機械のように作業をこなすだけの状態です。
本人も仕事にやりがいを感じられず、成長も止まってしまいます。
「数字の奴隷」になるケース
一方、成果目標しか設定されていないチームでは、メンバーは「とにかく数字を達成する」ことに追われます。
「売上500万円」という目標だけが与えられると、どうにかして数字を作ろうとします。
お客様に必要のない商品を無理に勧めたり、値引きを乱発したり。
短期的には数字が上がっても、お客様との信頼関係は崩れ、長期的にはマイナスになることも少なくありません。
数字に追われるあまり、「何のために仕事をしているのか」を見失ってしまうのです。
意義目標があると何が変わるのか
では、ここに「意義目標」を加えると、どうなるでしょうか。
意義目標とは、「私たちは何のために存在するのか」「お客様にどんな価値を届けたいのか」という、仕事の根本的な目的を言葉にしたものです。
意義目標があると、メンバーは「何をやるべきか」だけでなく「なぜやるべきか」を理解できます。
すると、指示されていないことでも「これをやったらお客様に喜ばれるのではないか」と、自分で考えて動けるようになります。
いわば、意義目標は「羅針盤」のような役割を果たします。
行動目標が「地図上のルート」、成果目標が「目的地」だとすれば、意義目標は「なぜその目的地を目指すのか」という旅の理由です。
理由が分かっていれば、道に迷っても、別のルートを自分で見つけることができます。
【事例】地域の工務店で起きた変化
ある地方都市で、従業員8名の小さな工務店を営むAさんの話をご紹介します。
Aさんの会社では、「月間の受注件数5件」という成果目標と、「毎週、見込み客に3回は連絡を入れる」という行動目標を設定していました。
しかし、スタッフたちは「とにかく契約を取ること」に必死になり、お客様の本当のニーズを聞く余裕がありませんでした。
見積もりを出しても「検討します」と言われて終わることが多く、成約率は伸び悩んでいました。
そこでAさんは、スタッフ全員を集めて話し合いの場を設けました。
「私たちは何のために家を建てているのだろう?」という問いかけから始まり、2時間ほどの対話の末、こんな意義目標が生まれました。
「この街で暮らす家族の、20年後の笑顔をつくる」
この意義目標を共有してから、スタッフの動きが変わり始めました。
あるスタッフは、お客様との打ち合わせの際に「お子さんが大きくなったとき、この家でどんな思い出を作りたいですか?」と質問するようになりました。
すると、お客様から「実は子ども部屋の配置で悩んでいて……」と本音が出てきて、より深い提案ができるようになりました。
別のスタッフは、引き渡し後のお客様に「住み心地いかがですか?」と定期的に連絡を取るようになりました。
すると、「友人が家を建てたいと言っているので紹介したい」という紹介案件が増えてきました。
さらに、若手スタッフから「地域の住宅相談会を開いてはどうか」というアイデアが出てきました。
「20年後の笑顔をつくる」という意義目標があったからこそ、「今すぐ契約にならなくても、地域の方々の役に立ちたい」という発想が生まれたのです。
結果として、1年後には成約率が1.4倍に向上し、紹介案件も大幅に増えました。
何より、スタッフが「やらされ仕事」ではなく、自分の仕事に誇りを持って取り組むようになったことが、Aさんにとって一番の収穫だったそうです。
意義目標を設定するためのヒント
では、どうすれば自社の意義目標を設定できるのでしょうか。
いくつかのヒントをお伝えします。
「お客様にどんな価値を届けたいか」を問いかける
商品やサービスそのものではなく、その先にある「お客様の状態の変化」を考えてみてください。
例えば、クリーニング店であれば「服をきれいにする」ではなく「お客様が清潔感のある装いで、自信を持って人前に出られるようにする」かもしれません。
スタッフと一緒に考える
経営者が一人で決めるのではなく、スタッフと対話しながら言葉にすることをお勧めします。
自分たちで考えた目標だからこそ、「自分ごと」として受け止められます。
シンプルで覚えやすい言葉にする
難しい言葉や長い文章は避け、誰もがすぐに思い出せる言葉にしましょう。
朝礼で唱和できるくらいの短さが理想です。
日常の判断基準として使う
意義目標は、額に飾って終わりではありません。
「この対応は、意義目標に沿っているだろうか?」と、日々の判断基準として活用することで、初めて意味を持ちます。

まとめ:「何のために」がチームを変える
今の時代、言われたことだけをこなすチームでは、変化の激しい環境を乗り越えることが難しくなっています。
一人ひとりが自分で考え、自発的に動けるチームをつくることが、中小企業の競争力の源泉です。
そのために必要なのが「意義目標」です。
・行動目標は「何をするか」を示す
・成果目標は「どこまで達成するか」を示す
・意義目標は「なぜやるのか」を示す
この3つが揃ったとき、メンバーは単なる作業者ではなく、同じ志を持った仲間として動き始めます。
ぜひ一度、「私たちのチームは、何のために存在しているのだろう?」という問いを、スタッフの皆さんと一緒に考えてみてください。
その対話から生まれる言葉が、チームを大きく変えるきっかけになるかもしれません。

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