利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「誰の本音を探るか」がビジネスの成否を分ける

「誰の本音を探るか」がビジネスの成否を分ける

お客様の心をつかむための、ターゲット絞り込みの考え方

はじめに:なぜ「誰に聞くか」が大切なのか

商品やサービスを売るとき、「お客様が本当に求めているものは何だろう?」と考えることは、とても大切です。
この「お客様の本当の気持ち」のことを、マーケティングの世界では「インサイト」と呼びます。

インサイトとは、簡単に言えば「お客様自身も気づいていないかもしれない、行動の裏にある本音」のことです。
たとえば、「このお店に通う理由は、料理がおいしいから」と言っていたお客様が、実は「店主との何気ない会話で元気をもらえるから」という本音を持っていた、というようなことです。

ここで重要なのが、「誰の本音を探るか」をきちんと決めることです。
「すべてのお客様の平均的な意見」を聞いても、ぼんやりとした答えしか得られません。
むしろ、具体的な「ある一人のお客様」の気持ちを深く理解することで、多くの人に響くヒントが見つかるのです。

背景:「みんなの意見」では見えないもの

よくある失敗として、「なるべく多くの人の意見を集めよう」と考えてしまうことがあります。
たしかに、数をたくさん集めれば安心感はあります。
しかし、たくさんの意見を平均化すると、どうしても「当たり障りのない答え」になりがちです。

たとえるなら、「好きな食べ物は?」と100人に聞いて平均を取ると、「カレーライス」や「ラーメン」といった無難な答えになるでしょう。
でも、あなたのお店が「本格スパイスカレー専門店」なら、「スパイス料理が大好きで、毎週カレーを食べ歩いている人」の意見のほうが、ずっと参考になるはずです。

つまり、聞く相手を絞ることで、より深く、より役立つ本音が見えてくるのです。

ターゲットを絞る3つのステップ

では、具体的にどうやって「聞く相手」を決めればよいのでしょうか。
3つのステップで考えてみましょう。

ステップ1:まず「買ってくれそうな人」に絞る

最初に考えるべきは、「自社の商品やサービスを実際に使ってくれそうな人は誰か?」ということです。

極端な例ですが、高級腕時計について意見を聞くとき、「時計に興味がなく、スマートフォンで時間を確認すれば十分」という人に聞いても、あまり意味がありません。
やはり、「腕時計が好きで、いい時計を身につけたいと思っている人」に聞くべきでしょう。

このように、まずは「お金を払ってくれる可能性がある人」を大まかに特定することが出発点です。

ステップ2:さらに具体的に絞り込む

次に、その中からさらに具体的に絞り込んでいきます。

たとえば、「腕時計が好きな人」の中でも、「すでに高級時計を持っていて、次の一本を探している人」なのか、「初めて高級時計を買おうとしている人」なのかで、気持ちはまったく違います。

どちらの人の本音を知りたいかによって、聞き方も変わってきます。

ステップ3:複数のグループがある場合は分けて考える

商品によっては、まったく違うタイプのお客様がいる場合もあります。

たとえば、あるカフェのお客様が「仕事の合間にパソコン作業をしたいビジネスパーソン」と「友人とおしゃべりを楽しみたい主婦」の両方だったとします。
この2つのグループは、カフェに求めるものが違うはずです。

こういう場合は、それぞれのグループに分けて本音を探ることが有効です。
そして最後に、「両方に共通する気持ち」を見つけられれば、どちらのお客様にも響くメッセージが作れます。

事例:地域の学習塾が「聞く相手」を変えて成功した話

ある地方都市で、個人経営の学習塾を営むAさんの話をご紹介します。

Aさんの塾は、小学生から高校生まで幅広く受け入れていました。
生徒数は伸び悩んでおり、「どうすればもっと生徒が集まるだろう」と悩んでいました。

最初、Aさんは「保護者全般」にアンケートを取りました。
すると、「授業料が手頃だといい」「先生の質が大事」「通いやすい場所がいい」といった、ごく一般的な回答ばかりが集まりました。
これでは、何をどう改善すればいいのかわかりません。

そこでAさんは、聞く相手を絞ることにしました。

塾の入会データを見直すと、「中学1年生の4月〜5月」に入会する生徒が最も多いことがわかりました。
つまり、「中学に上がるタイミングで塾を探し始める家庭」が、最も重要なターゲットだったのです。

そこでAさんは、「中学1年生になったばかりのお子さんを持つ保護者」に絞って、じっくり話を聞くことにしました。

すると、こんな本音が見えてきました。
「小学校までは何とかなっていたけど、中学になると急に勉強が難しくなると聞いて不安」
「最初でつまずくと取り戻せないんじゃないかと心配」
「でも、うちの子が塾についていけるかどうかも不安」

つまり、保護者の本音は「中学の勉強についていけなくなる前に、早めに手を打ちたい。でも、塾選びを失敗したくない」という気持ちだったのです。

この発見を受けて、Aさんは塾のチラシを作り直しました。

従来は「成績アップ!」「志望校合格!」といった言葉を並べていましたが、新しいチラシでは「中学の勉強、最初の3ヶ月が勝負です」「まずは無料体験で、お子さんに合うかどうか確かめてください」というメッセージに変えました。

結果、問い合わせが増え、入会率も上がりました。

さらにAさんは、「塾に通っていない家庭」と「すでに他の塾に通っている家庭」にも話を聞きました。
塾に通っていない家庭からは、「まだうちの子には早いかも」「塾に行かせると、勉強嫌いになりそうで怖い」という声がありました。

一方、他の塾に通っている家庭からは、「今の塾は宿題が多すぎて子どもが疲れている」「成績は上がったけど、勉強が楽しそうではない」という声がありました。

どちらにも共通していたのは、「子どもに勉強を嫌いになってほしくない」という気持ちでした。

この共通の本音をもとに、Aさんは塾の方針を「勉強の楽しさを知ってもらう塾」として打ち出すことにしました。
これにより、塾に通っていなかった家庭からの入会も増え、他塾からの転塾も増えたのです。

まとめ:ターゲットを絞ることで、本当のニーズが見えてくる

ここまでの内容を整理しましょう。

「みんなの意見」ではなく「特定の誰か」の本音を探る

平均的な意見からは、平均的な答えしか得られません。
具体的な一人の気持ちを深く理解することで、多くの人に響くヒントが見つかります。

買ってくれそうな人から絞り込む

自社の商品やサービスを実際に使う可能性がある人に焦点を当てましょう。
そこからさらに具体的に絞り込むことで、より深い本音が見えてきます。

複数のグループがいる場合は分けて考える

違うタイプのお客様がいる場合は、それぞれの本音を別々に探りましょう。
そして最後に、両方に共通する気持ちを見つけられれば、幅広いお客様に響くメッセージが作れます。

「使っている人」と「使っていない人」の両方に聞く

すでにお客様になっている人からは、満足している点や改善してほしい点がわかります。
まだお客様になっていない人からは、何がハードルになっているかがわかります。
両方の声を聞くことで、より効果的な打ち手が見えてきます。

明日からできること

最後に、すぐに実践できるヒントをお伝えします。

まずは、「最近、自社の商品やサービスを初めて使ってくれたお客様」に話を聞いてみてください。
「なぜ、うちを選んでくれたのですか?」
「選ぶとき、何が不安でしたか?」
「実際に使ってみて、思っていたのと違ったことはありますか?」

こうした質問を通じて、お客様の本音に近づくことができます。

大切なのは、「平均的な答え」を求めるのではなく、「一人ひとりの具体的な気持ち」に耳を傾けることです。
そこから見つかった本音が、あなたのビジネスを次のステージに導いてくれるはずです。

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