顧客に思い出してもらえる経営戦略
はじめに:なぜ、あなたのお店は「思い出してもらえない」のか
「チラシを配ったのに、全然反応がなかった」
「ホームページを作ったけど、問い合わせが来ない」
こんな経験をお持ちの経営者の方は多いのではないでしょうか。
実は、これには明確な理由があります。
そして、その理由を理解すると、「どうすればお客様に選ばれるのか」が見えてきます。
今回は、ある地域密着型の整体院の取り組みをヒントに、「お客様に思い出してもらえるお店」になるための考え方をお伝えします。
「晴れた日の傘」の話
埼玉県のある住宅街で整体院を営む院長は、こんな例え話をしてくれました。
「晴れた日に『この傘、よかったらどうぞ』と渡されても、多くの人は受け取りません。たとえ無料であっても、です。荷物になるし、今は必要ないですから。でも、突然の土砂降りでずぶ濡れになりそうなとき、傘を売っている人がいたら?少し高くても買いたくなりますよね」
これは、とても大切なことを教えてくれています。
つまり、同じ商品やサービスでも、お客様が「欲しい」と思っているタイミングかどうかで、価値がまったく変わるということです。
考えてみてください。
体の調子が良いときに「腰痛に効く整体がありますよ」と言われても、「今は必要ないかな」と思いますよね。
でも、ある朝ギックリ腰になったら、「どこか良い整体院はないかな?」と必死で探すはずです。
お店には「お客様のタイミング」がわからない
ここで問題になるのが、お店側には「お客様がいつ欲しくなるか」がわからないということです。
傘のメーカーは、いつ雨が降るかある程度は予測できます。
でも、「誰が」「どこで」傘を必要とするかまではわかりません。
だからこそ、コンビニにも駅の売店にも、いつでも傘が置いてあるのです。
「雨が降ったときに、すぐ手に取ってもらえるように」と。
先ほどの整体院の院長も、同じ悩みを抱えていました。
「お客様がいつ腰や肩を痛めるのか、いつ体のメンテナンスをしたくなるのか、私たちには把握できません。かといって、大企業のように街中に看板を出したり、テレビCMを流したりする広告費は使えません」
では、どうすればいいのでしょうか?
この整体院が選んだのは、お金をかけずに「接触の回数」を増やすという方法でした。
月2回のニュースレター、季節ごとの健康情報ハガキ、LINE公式アカウントでの定期配信、そして地道なポスティング。
一つひとつは小さな取り組みですが、これを何年も続けてきたのです。
その結果、この整体院は開業から8年間、毎年着実に売上を伸ばし続けています。
新規のお客様の多くが「ずっとチラシを見ていて、気になっていました」「LINEの情報が役に立っていて」と言って来院されるそうです。
「1回配って終わり」では意味がない理由
ここで、多くの経営者が陥りがちな落とし穴についてお話しします。
チラシやDMを作って配布したとき、「商圏にはすべて配り終わったから、もういいだろう」と考える方が意外と多いのです。
でも、ちょっと想像してみてください。
あなたの家に、まったく知らない美容院のチラシが入っていたとします。
じっくり見ますか?
おそらく、見ないですよね。
仮に目を通したとしても、「今の美容院で満足しているから」と思えば、すぐに忘れてしまうでしょう。
ところが、そんなあなたでも、いつか「新しい美容院を探したい」と思うタイミングが来ます。
担当のスタイリストさんが辞めてしまったとき、引っ越しをしたとき、今の美容院の予約が取りにくくなったとき……。
そのタイミングは、必ず来ます。
ただ、いつ来るかは、お店にはわからないのです。
「ピザ屋さんの名前」が思い浮かぶ理由
ここで、ひとつ質問です。
「近所のピザの宅配店といえば?」
おそらく、すぐに1つか2つの店名が思い浮かんだのではないでしょうか。
では、なぜ思い出せたのでしょう?
そう、何度も何度も、チラシがポストに入っていたからです。
あなたが満腹のときも、「うちは出前なんか取らない」と思っていたときも、繰り返しチラシが届いていた。
その積み重ねが、あなたの記憶に残っているのです。
決して、ピザ屋さんの店構えが印象的だったわけではありません。
そして、いざ「今日はピザが食べたいな」と思ったとき、あなたは古新聞の束からそのチラシを探し出す可能性が高い。
探せば見つかります。
ぜなら、それほど頻繁に届いているからです。
もし、そのチラシが数年前に1回だけ届いたものだったら?
おそらく、見つからないでしょうし、そもそも思い出すこともないでしょう。
【事例】地域密着の工務店が「忘れられない存在」になった方法
ここで、別の業種の事例をご紹介します。
ある地方都市で小さな工務店を営むAさんの話です。
Aさんの工務店は、新築よりもリフォームや修繕を中心に手がけていました。
ただ、リフォームというのは、お客様が「今すぐ欲しい」と思うものではありません。
「いつかキッチンを新しくしたいな」
「そろそろ外壁の塗り替え時期かな」
こんなふうに、漠然と考えてはいても、「今日やろう」とはならない。
だからこそ、お客様が「やろう」と決めたタイミングで思い出してもらえるかどうかが勝負になります。
Aさんが始めたのは、月1回のニュースレターでした。
内容は、リフォームの宣伝ばかりではありません。
季節の暮らしの知恵、簡単にできる住まいのお手入れ方法、スタッフの日常のちょっとした話……。
読んでいて「ちょっと役に立つ」「親しみがわく」と思ってもらえる内容を心がけました。
最初は反応がほとんどありませんでした。
「意味があるのかな」と不安になったこともあったそうです。
ところが、続けること1年半。
少しずつ問い合わせが増え始めました。
「ずっとニュースレターを読んでいました。そろそろリフォームを考えていて……」
「毎月届くので、なんだか安心感があって」
こんな声が届くようになったのです。
Aさんは言います。
「お客様がリフォームを決意するタイミングは、私たちにはわかりません。でも、そのときに『あ、あの工務店に相談しよう』と思い出してもらえるかどうか。それは、それまでの積み重ねで決まるんだと実感しました」
今では、ニュースレターを楽しみにしてくれているお客様も多く、紹介での依頼も増えているそうです。
大切なのは「接触の回数」を増やすこと
ここまでの話をまとめると、ポイントは次の3つです。
1つ目:お客様が「欲しい」と思うタイミングは、お店にはわからない
どんなに良い商品やサービスでも、お客様が必要としていないタイミングでは響きません。
そして、そのタイミングがいつ来るかは、予測できないのです。
2つ目:だからこそ、「思い出してもらえる存在」になることが大切
お客様が「欲しい」と思った瞬間に、真っ先にあなたのお店を思い出してもらう。
そのためには、日頃からの接触が欠かせません。
3つ目:1回きりではなく、繰り返し届けることで記憶に残る
チラシもDMもニュースレターも、1回配っただけでは記憶に残りません。
「またか」と思われるくらい繰り返すことで、ようやくお客様の記憶に定着するのです。

まとめ:「今の10倍」のつもりで販促を続けよう
先ほどの整体院の院長は、「現在の10倍の販促を行なうイメージを持ってほしい」と言います。
「10倍」という数字に驚かれるかもしれません。
でも、考えてみてください。
今、あなたのお店では、どのくらいの頻度でお客様に情報を届けていますか?
年に1回?半年に1回?
それでは、お客様の記憶には残りません。
大切なのは、大きな費用をかけることではありません。
チラシ、DM、ニュースレター、メールマガジン、LINE、SNS……。お金をかけずにできる方法はたくさんあります。
「量をこなす」こと。そして「続ける」こと。
これが、大企業のような広告費を持たない私たちが、お客様に選ばれるための王道です。
お客様が「欲しい」と思った瞬間に、真っ先に思い出してもらえる存在になる。
そのための種まきを、今日から始めてみませんか?

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