低迷したビジネスを立て直すブルーオーシャン戦略
はじめに:なぜ頑張っても利益が出ないのか
「他社より品質を上げた」「価格も頑張って下げた」「サービスも充実させた」─それなのに、なかなか利益が伸びない。
そんな経験はありませんか?
実は、その努力こそが利益を圧迫している原因かもしれません。
ライバル会社と同じ土俵で戦い続けると、どうしても「相手より少しでも良いものを、少しでも安く」という競争に巻き込まれます。
これは言わば、赤く染まった海でサメ同士が獲物を奪い合うような状態です。
激しい競争の中で、お互いが傷つき、疲弊していきます。
では、そもそも競争のない場所で商売をすることはできないのでしょうか?
この問いに対する一つの答えが「ブルーオーシャン戦略」です。
ブルーオーシャン戦略とは?
ブルーオーシャン戦略とは、競争相手のいない新しい市場を自ら作り出し、そこで独自のビジネスを展開する考え方です。
名前の由来は単純です。
競争の激しい既存市場を「血で赤く染まった海(レッドオーシャン)」に例え、競争のない新市場を「青く澄んだ海(ブルーオーシャン)」と呼んでいます。
ただし、ここで重要なのは「まったく新しい商品やサービスを発明する」という意味ではないということです。
むしろ、今あるビジネスの中で「何を増やし、何を減らすか」を大胆に見直すことで、新しい価値を生み出す─これがブルーオーシャン戦略の本質です。
もう少し具体的に言えば、こういうことです。
業界では「当たり前」とされていることの中に、実はお客様が求めていないものが紛れ込んでいることがあります。
一方で、業界が軽視していることの中に、お客様が本当に欲しがっているものが隠れていることもあります。
この「当たり前」を疑い、足し算と引き算を組み合わせることで、競合とはまったく違う土俵を作る。
それがブルーオーシャン戦略の基本的な考え方です。
身近な成功事例から学ぶ
事例1:カーブス──「運動したいけど、ジムは敷居が高い」を解決
フィットネスジムといえば、最新のトレーニングマシンがずらりと並び、若くて体を鍛え上げた会員たちが汗を流している─そんなイメージがありませんか?
実際、多くのフィットネスジムは設備の充実度やトレーナーの質を競い合ってきました。
プールを作り、スタジオプログラムを増やし、サウナやエステまで併設する。
こうしたサービス競争の結果、月会費は1万円前後が当たり前になっています。
しかし、この競争には見落とされていた人たちがいました。
それは「運動不足を解消したいけど、本格的なジムには行きづらい」と感じている中高年の女性たちです。
カーブスはこの層に注目しました。
そして、従来のジムとはまったく逆の方針を打ち出したのです。
まず、会員を女性だけに限定しました。
これにより「周りの目が気になる」という心理的なハードルを取り除きます。
次に、トレーニング内容を30分の簡単な運動に絞りました。
難しいマシンも、激しい運動もありません。運動が苦手な人でも無理なく続けられます。
さらに、プールもシャワーもありません。
着替えて、30分運動して、そのまま帰る。
シンプルそのものです。
その結果、月会費を抑えながらも十分な利益を確保できる仕組みができました。
何より、「運動したいけど、ジムは私には無理」と思っていた多くの女性たちが、喜んで通うようになったのです。
事例2:俺のフレンチ──「高級料理は特別な日だけ」という常識を覆す
フランス料理といえば、高級レストランでコース料理をゆっくり楽しむもの。
予約を取って、きちんとした服装で出かけ、数万円を支払う。
そんなイメージが定着しています。
この「常識」があるからこそ、多くの人にとってフランス料理は「年に数回、特別な日に食べるもの」になっていました。
「俺のフレンチ」は、この常識を大胆に覆しました。
まず、立ち食いスタイルを採用。
座席をなくすことで、お客様の回転率が大幅に上がります。
次に、内装を簡素にしました。
高級感のある調度品も、ゆったりとした空間もありません。
しかし、料理の質だけは一切妥協しませんでした。
一流ホテルで腕を磨いたシェフが、本格的なフランス料理を作ります。
その結果、高級レストランなら1万円以上するような料理が、2〜3千円で楽しめるようになりました。
「ちょっと仕事帰りにフレンチでも」という、今までありえなかった選択肢が生まれたのです。
事例3:アイリスオーヤマの家電──「最新機能より、必要な機能を」
家電メーカーといえば、毎年のように新機能を追加した新製品を発売するのが当たり前でした。
各社が技術力を競い、より高性能な製品を開発し続けています。
しかし、消費者の多くは「そこまでの機能はいらない」と感じていたのではないでしょうか。
アイリスオーヤマは、この点に着目しました。
大手メーカーが当然のように搭載する高度な機能を思い切って省き、「多くの人が実際に使う機能」だけに絞り込んだのです。
たとえば電子レンジ。
温める、解凍する──実際によく使う機能はこれくらいです。
複雑な自動調理機能は省いても、多くの家庭では困りません。
機能を絞ることで製造コストを下げ、大手メーカーの半額程度の価格を実現。
「必要十分な機能を、手頃な価格で」という新しい選択肢を市場に提示したのです。
共通するのは「引き算」の発想
カーブス、俺のフレンチ、アイリスオーヤマ。
業種はまったく違いますが、共通点があります。
それは「業界の常識を捨てた」ということです。
フィットネスジムには立派な設備が必要─本当でしょうか?
フランス料理はゆったり座って食べるもの─そう決まっているのでしょうか?
家電は高機能であるほど良い─すべてのお客様がそう思っているでしょうか?
いずれの企業も、業界では「当然必要」とされていたものを大胆に削りました。
そして、削った分のコストを、本当にお客様が求めていることに振り向けたのです。
これこそが、ブルーオーシャン戦略の核心です。
「何を足すか」より「何を引くか」を考える。
その引き算によって生まれた余力で、新しい価値を作る。
自社のビジネスに当てはめてみる
では、皆さんのビジネスではどうでしょうか?
一度、次のような問いを立ててみてください。
「業界では当たり前とされているけれど、お客様は実はそこまで求めていないものは何か?」
「競合他社が見落としている、お客様の本当の困りごとは何か?」
「削れるものを削ったとき、その分を何に振り向ければお客様は喜ぶか?」
答えはすぐには見つからないかもしれません。
しかし、この問いを持ち続けることで、少しずつ見えてくるものがあるはずです。
大切なのは、「競合に勝つ」ことではなく、「競合と違う土俵を作る」という発想です。
同じ土俵で戦えば、体力のある大手企業が有利です。
しかし、自分だけの土俵を作れば、規模の小さな会社でも十分に戦えます。
おわりに
ブルーオーシャン戦略は、決して大企業だけのものではありません。
むしろ、小回りの利く中小企業や個人事業こそ、大胆な発想の転換がしやすいとも言えます。
大企業には守るべき既存事業があり、思い切った方向転換が難しいからです。
今のビジネスがうまくいっていないとき、つい「もっと頑張らなければ」と考えがちです。
しかし、同じ方向でもっと頑張っても、競争が激しくなるだけかもしれません。
そんなときは、一度立ち止まって考えてみてください。
「そもそも、この戦い方で良いのだろうか?」
「競争しない道はないだろうか?」
その問いが、新しい可能性を開く第一歩になるかもしれません。

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