顧客が本当に求めるものを見つけるセグメンテーション
はじめに:同じ商品でも、買う理由は人それぞれ
「うちの商品、誰に売ればいいんだろう?」
こう悩んだとき、多くの経営者の方は「30代の女性向け」「50代の男性向け」といった年齢や性別でお客様を分けようとします。
もちろん、それも一つの方法です。しかし、実はこの分け方には落とし穴があります。
たとえば、同じ30代の男性でも、「とにかく安いものがほしい」という人もいれば、「多少高くても品質の良いものがほしい」という人もいます。
年齢や性別が同じでも、求めているものはバラバラなのです。
そこで役に立つのが、「お客様が商品から得たいもの(=ベネフィット)」を基準にしてグループ分けをする方法です。
マーケティングの世界では「ベネフィットセグメンテーション」と呼ばれていますが、要するに「お客様が何を求めているかで分ける」というシンプルな考え方です。
ベネフィットで分けるとは、どういうことか?
腕時計を例に考えてみましょう。
腕時計を買う人は、大きく次の4つのタイプに分けられます。
「そこそこ正確で、お手頃なら十分」タイプ
月に数秒ずれる程度なら気にしない。
時計にこだわりはなく、手ごろな価格で買えればそれでいい、という方です。
「正確で、手間がかからないのが一番」タイプ
時刻はできるだけ正確であってほしいけれど、自分で時間を合わせたり電池を交換したりするのは面倒。
多少値が張っても、電波時計やソーラー充電のように「放っておいても正確」な時計を選びます。
「見た目が大事」タイプ
まずデザインで選ぶ方です。仕事用とプライベート用で使い分けたり、服装に合わせてコーディネートしたりします。
多少時刻がずれる手巻き式でも、デザインが気に入れば問題ありません。
「ブランドで自分を表現したい」タイプ
高級ブランドの時計を身につけることで、「自分はこういう人間だ」と周囲に伝えたい方です。
時計そのものの機能よりも、ブランドが持つイメージやステータスに価値を感じています。
このように、同じ「腕時計」という商品でも、お客様が求めているものはまったく違います。
年齢や性別で分けただけでは、この違いは見えてきません。
「何を求めているか」で分けるからこそ、それぞれのお客様に響くアプローチができるのです。
身近な事例:町の美容室で考えてみる
もう少し身近な例として、町の美容室を考えてみましょう。
美容室に来るお客様も、求めているものはさまざまです。
「早くて安い」を求めるお客様は、仕上がりがそこそこなら、短時間・低価格で終わることを最優先します。
予約なしで飛び込めるお店や、カットのみ1,000円台のお店を選ぶでしょう。
「仕上がりの美しさ」を求めるお客様は、多少時間がかかっても、自分に似合うスタイルを丁寧に提案してくれるお店を選びます。
価格よりも技術力を重視します。
「リラックスできる空間」を求めるお客様は、カットの腕前だけでなく、居心地の良さや接客の雰囲気を大切にします。
ヘッドスパやドリンクサービスがあると喜ばれます。
「トレンド・おしゃれ感」を求めるお客様は、最新のヘアスタイルやカラーに敏感で、SNSで話題のお店や、流行を取り入れたスタイルを提案してくれるお店を好みます。
ここで大切なのは、同じ「30代女性」でも、上のどのタイプに当てはまるかは人それぞれだということです。
もし「30代女性向け」とだけ考えて宣伝をしても、メッセージがぼやけてしまい、誰の心にも刺さりません。
しかし、「リラックスを求めている方」に向けて「忙しい毎日から解放される、癒しの90分をお届けします」と伝えれば、そのタイプのお客様にはしっかり届きます。
これが、ベネフィットで分ける効果です。
自社のお客様を「ベネフィット」で分けてみるには?
では、実際に自社のお客様をベネフィットで分けるには、どうすればよいのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
次の3つのステップで始められます。
ステップ1:お客様の声を集める
「なぜうちを選んでくれたのですか?」「うちの商品・サービスのどこが気に入っていますか?」と、日頃の会話やアンケートで聞いてみましょう。
ステップ2:似た理由をグループにまとめる
集まった声を並べてみると、「価格が安いから」「対応が丁寧だから」「技術が高いから」など、いくつかのパターンが見えてきます。
これがベネフィットごとのグループです。
ステップ3:それぞれのグループに合った打ち出し方を考える
グループごとに、チラシやホームページの言葉を変えてみましょう。
「安さ」を求めるお客様には価格を前面に出し、「品質」を求めるお客様にはこだわりや実績を伝える。同じ商品でも、見せ方を変えるだけで反応が変わります。

まとめ:「誰に届けたいか」より「何を届けたいか」
お客様を年齢や性別で分けることは簡単ですが、それだけでは「本当に届けたい人」に届かないことがあります。
お客様が求めている「うれしさ」や「便利さ」、つまりベネフィットを軸にして考えることで、より的確なメッセージを届けられるようになります。
まずは、今いるお客様に「なぜうちを選んでくれたのか」を聞いてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
きっと、自社の強みや、次に狙うべきお客様像が見えてくるはずです。

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