利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「お客さまが先、利益はあと」─J&Jの我が信条に学ぶ経営の軸

「お客さまが先、利益はあと」─J&Jの我が信条に学ぶ経営の軸

経営の軸

はじめに

「利益は大事。でも、利益だけが目的じゃない」─頭ではわかっていても、日々の資金繰りに追われると、つい目の前の数字だけを追いかけてしまうものです。

実は、長く成功し続けている企業の多くが、「利益よりも先に大切にすること」を言葉にしています。
その代表例が、バンドエイドでおなじみのジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)です。

「大切なものの順番」を決めた会社

J&Jは1886年、「痛みと病気を軽くする」という志のもとに創業されました。
1943年には「我が信条」という経営理念が文書にまとめられています。

この信条のポイントは、会社が果たすべき責任に明確な「順番」をつけたことです。
お客さまが第一、次に従業員、その次に地域社会、そして最後が株主です。

株主が「最後」というのは驚きかもしれません。
しかも「利益を最大限に」ではなく「適切な利益を」と書かれています。
お客さまや従業員への責任を果たせば、利益は結果としてついてくる─そういう考え方です。
この順番は80年以上変わっていません。

1980年代のCEOジム・バークは、仕事時間の40%を信条の浸透に費やしたそうです。
「この信条があるおかげで、短期的な利益のためにやるべきでないことに対して『ちょっと待て』と言えるようになる」とバークは語っています。
理念は「やるべきこと」を示すだけでなく、「やってはいけないこと」にブレーキをかける役割も果たしていたのです。

理念が試された「タイレノール事件」

1982年、J&Jの鎮痛剤タイレノールに何者かが毒物を混入し、シカゴで7人が亡くなる事件が起きました。
問題はシカゴだけでしたが、J&Jはアメリカ全土から全製品を回収しました。
費用は推定1億ドル、2,500人の従業員を動員して対応にあたっています。

「お客さまが第一」という信条があったからこそ、迷わず全品回収という判断ができたのです。
この対応はJ&Jへの信頼をかえって高めることになりました。

事例─スターバックスの「従業員第一主義」

似た考え方の例として、スターバックスを率いたハワード・シュルツのケースがあります。
シュルツは「従業員を大切にすれば、従業員がお客さまを大切にし、結果として利益がついてくる」と考えました。

当時の飲食業界では異例だった、パートタイマーへの健康保険の適用を実現しています。
「コストがかかりすぎる」と批判されましたが、結果的に離職率が下がり、サービスの質が上がり、リピーターが増えていきました。
短期的にはコストでも、長い目で見れば信頼という資産を築いたのです。

まとめ

J&Jの「我が信条」が教えてくれるのは、3つのことです。
1つ目は、「大切なものの順番」を決めることの力。
お客さま、従業員、地域社会、株主。順番を明確にすることで、迷ったときの指針が生まれます。

2つ目は、理念は「ブレーキ」として機能するということ。
「それは本当にお客さまのためになるか?」と問い直す力を与えてくれます。

3つ目は、理念を本気で実行すれば利益は結果としてついてくるということ。
タイレノール事件もスターバックスの取り組みも、短期的にはコストがかかりましたが、長い目で見ればかけがえのない信頼につながりました。

小さな会社だからこそ、経営者の考え方がダイレクトに組織に伝わります。
「自分の会社は、誰のために、何を大切にして商売をしているのか」─たった3行でもいいので、ぜひご自身の言葉で書き出してみてください。
それが、迷ったときに立ち返れる経営の軸になるはずです。

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