情報発信を続けるための目的設定
なぜ今、情報発信が経営に必要なのか
近年、ホームページやSNS、メールマガジンなど、さまざまな形で情報発信をされている経営者の方が増えています。
お客様との接点を増やし、自社の強みを知ってもらうために、情報発信は今や経営に欠かせない取り組みとなっています。
しかし、実際に始めてみると、多くの経営者が同じ壁にぶつかります。
「最初は張り切って始めたけれど、気づいたら数ヶ月で更新が止まってしまった」
「何度も再スタートを切るけれど、結局同じパターンで続かない」
このようなお悩みを抱えている方は、決して少なくありません。
情報発信は、始めること自体はそれほど難しくありません。
問題は「続けること」なのです。
続かない理由は「目的」が曖昧だから
情報発信が続かない最大の原因は、実は目的がしっかりしていないことにあります。
これは、例えるなら「目的地を決めずに車で走り出すようなもの」です。
最初はドライブそのものが楽しくても、どこに向かっているか分からなければ、やがて「なぜ走っているんだろう」という疑問が湧いてきます。
そして、給油が面倒になったり、渋滞に巻き込まれたりすると、「もういいや」と引き返してしまうのです。
情報発信で成果を出すためには、少なくとも数ヶ月間は継続的に運営し続けることが必要です。
しかし、ほとんどの方は、結果が出る前に次のような理由で更新を止めてしまいます。
・「飽きてしまった」
・「書いている時間がなくなった」
・「なかなか結果が出ない」
これらは一見、それぞれ別の理由のように思えますが、根底にあるのは「なぜこれをやっているのか」という問いに対する明確な答えがないことです。
目的がはっきりしていれば、多少飽きても、忙しくても、すぐに結果が出なくても、「これは必要なことだ」と自分を納得させて続けることができます。
明確にすべき3つの問い
では、情報発信を続けるために必要な「目的」とは、具体的にどのようなものでしょうか。
それは、次の3つの問いに答えることから始まります。
なぜその情報発信をあなたが始める必要があるのか
これは、情報発信の根本的な「理由」です。単に「他社もやっているから」「流行っているから」ではなく、あなたの会社にとって、お客様にとって、なぜそれが必要なのかを明確にすることが大切です。
たとえば、「新規のお問い合わせが減ってきているから、もっと当社のことを知ってもらいたい」「既存のお客様に定期的に有益な情報を届けて、関係性を深めたい」といった具体的な理由です。
誰にあなたのメッセージを伝えたいのか
次に大切なのは、「誰に」向けて発信するのかを明確にすることです。
すべての人に向けて発信しようとすると、結局誰にも響かない内容になってしまいます。
これは、お店で「何でも屋」と掲げるよりも、「○○専門店」と掲げたほうがお客様に選ばれやすいのと同じです。
「創業間もない経営者」なのか、「事業承継を控えた二代目社長」なのか、「新しい設備投資を検討している製造業の方」なのか―ターゲットを具体的にイメージすることで、発信する内容も自然と定まってきます。
どのような表現手法であなたのメッセージを分かりやすく伝えるのか
最後に、「どのように」伝えるかです。
同じ内容でも、文章で伝えるのか、写真や図を使うのか、動画で伝えるのかによって、伝わり方は大きく変わります。
また、専門用語を多用するのか、平易な言葉で説明するのか、親しみやすいトーンで書くのか、フォーマルな文体にするのかといった表現方法も重要です。
大切なのは、「誰に伝えたいか」に合わせて表現方法を選ぶことです。
別の事例:定期的な情報発信で売上を安定させた工務店
ある地方の小さな工務店の例をご紹介します。
この工務店では、5年ほど前から月に1回、既存のお客様向けにニュースレターを発行し始めました。
最初は「他の会社もやっているから」という軽い気持ちでスタートしたそうです。
しかし、半年ほど経つと、社長は「何のためにこれをやっているんだろう」と疑問を感じるようになりました。
特に反応もなく、時間だけが取られていく。何度も「もうやめようか」と思ったそうです。
そこで、社長はあらためて「目的」を見直しました。
なぜ? → 「過去にリフォームしたお客様が、困ったときに真っ先に当社を思い出してもらえるように」
誰に? → 「10年以上前に新築やリフォームをしたお客様」
どのように? → 「季節ごとの住まいのお手入れ情報と、簡単な当社の近況報告を、親しみやすい文体で」
この3つを明確にしてから、ニュースレターの内容を大きく変えました。
売り込みではなく、「暮らしに役立つ情報」に特化し、毎回1つ2つ、季節に合わせた住まいのメンテナンス情報を載せるようにしたのです。
すると、徐々にお客様から反応が出始めました。
「この前のニュースレター、参考になったよ」という声や、「ちょうど水回りのことで相談したかったんだ」という連絡が入るようになったのです。
3年後、この工務店の売上の約4割が、ニュースレターを送っているお客様からのリピートや紹介になりました。
目的を明確にしたことで、途中で投げ出さずに続けられ、結果として「飯が食える仕組み」を作ることができたのです。
最初はテンプレートでも大丈夫
「そうはいっても、自分には文章力もないし、何を書いていいか分からない」
そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、心配はいりません。
最初はテンプレート(雛形)を使うことで全然OKです。
料理に例えるなら、いきなりオリジナルレシピを考えるのではなく、まずは基本のレシピ通りに作ってみることから始めるのと同じです。
何度か作るうちに、「もう少し塩を減らそう」「この食材を加えてみよう」とアレンジできるようになってきます。
情報発信も同じです。
「月初のご挨拶」「お客様の声紹介」「季節のお役立ち情報」「自社の取り組み紹介」といった基本的な型を決めておき、それに沿って書いていけば、最初は十分です。
そして、実際に続けていくと、必ず壁にぶつかります。
「どう書けばもっと分かりやすくなるだろう」「お客様の反応を得るにはどうすればいいだろう」と悩む瞬間が来ます。
人間は必死になると、足りない知識を補おうと自然に勉強し始めます。
書籍を読んだり、他社の事例を研究したり、セミナーに参加したりして、少しずつ自分なりの表現方法を身につけていくのです。
それがあなた独自の武器になっていきます。
「違い」こそが価値を生む
情報発信を続けていく中で、もう1つ大切なことがあります。
それは、人は「違い」に価値を感じるという事実です。
世の中には、同じような商品やサービスを提供している会社がたくさんあります。
お客様から見れば、「どこも同じ」に見えてしまうこともあるでしょう。
しかし、継続的に情報発信をすることで、あなたの会社ならではの「考え方」「姿勢」「こだわり」が少しずつ伝わっていきます。
同じ商品を扱っていても、「この会社は誠実そうだ」「この社長の人柄が好きだ」「この会社の理念に共感できる」といった、他社との「違い」をお客様が感じてくださるようになるのです。
その「違い」こそが、価格競争に巻き込まれず、お客様に選ばれ続ける理由になります。

まとめ:目的地を定めて、長い道のりを楽しもう
情報発信は、すぐに結果が出るものではありません。
数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあります。
しかし、明確な目的があれば、その道のりも前向きに歩み続けることができます。
もう一度、冒頭の車の例えに戻りましょう。
目的地が決まっていれば、途中で渋滞に巻き込まれても、「あと○キロで着く」と分かるから我慢できます。
給油が必要になっても、「目的地に着くために必要なこと」だと納得できます。
そして、目的地に着いたときの喜びを想像しながら、運転を楽しむこともできるのです。
情報発信も同じです。
「なぜ」「誰に」「どのように」という3つの問いに答えることで、あなたの情報発信の目的地が定まります。
最初はテンプレートを使いながら、少しずつ自分らしい表現を見つけていけば大丈夫です。
継続する中で得た知識や工夫が、あなただけの武器になります。
そして、その積み重ねが、他社にはない「違い」を生み出し、お客様に選ばれる理由となっていくのです。
「何度やっても続かない」と悩んでいる経営者の方は、ぜひ一度立ち止まって、この3つの問いに向き合ってみてください。
目的が明確になれば、情報発信は「やらなければいけない面倒な作業」から、「会社の未来を作る大切な取り組み」へと変わるはずです。

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