利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「売れない」本当の理由―商品の価値を正しく伝えていますか?

「売れない」本当の理由―商品の価値を正しく伝えていますか?

顧客に価値を伝えることの大切さ

はじめに:よくある「売れない」の勘違い

「うちの商品、なかなか売れないんです」
こんなご相談をいただくことがよくあります。

多くの経営者の方は、売れない原因を「価格が高いから」「立地が悪いから」「競合が多いから」と考えがちです。
もちろん、それらも要因のひとつかもしれません。
でも実は、もっと根本的な問題が隠れていることが多いのです。

それは何か。
「商品の価値をお客様にちゃんと伝えていない」

これだけで売上が大きく変わることがあります。
今日は、実際の事例を通じて、「価値を伝える」ことの重要性についてお話しします。

人間の購買心理:知らないものは選べない

まず、お客様がどうやって商品を選んでいるのか、その心理を考えてみましょう。

人間には、こんな特性があります。

知らないものは選べない

どんなに良い商品でも、それがどんなものか分からなければ、手に取ることすらしません。

必要性を感じないものは買わない

「自分には関係ない」と思ったら、興味を持ちません。

理解できないものは避ける

複雑すぎたり、説明が難しすぎたりすると、面倒くさくなって他の商品を選びます。

これは当たり前のようで、実は多くのお店が見落としているポイントなんです。

【事例】街のパン屋さんで起きた小さな奇跡

ある地方都市に、創業30年の小さなパン屋さんがありました。
オーナーの佐藤さん(仮名)は、毎朝3時から仕込みをする、職人気質の方です。

このお店には、佐藤さんが特に力を入れている3種類のパンがありました。

・フォカッチャ
・ベーグル
・クリームパン

でも困ったことに、フォカッチャとベーグルはほとんど売れず、クリームパンばかりが売れていったのです。
売れ残ったパンは、閉店後に廃棄するか、値引き販売するしかありません。
佐藤さんは悩んでいました。
「せっかく良い材料を使って、時間をかけて作っているのに……」

そこで、経営コンサルタントの田中さん(仮名)がアドバイスをしました。
商品名だけを書いた値札を、こんな説明文に変えてみたのです。

◎フォカッチャ(イタリア生まれの平たいパン)
実はピザの原型なんです。
オリーブオイルをたっぷり染み込ませて焼き上げました。
そのまま食べても美味しいし、半分に切ってサンドイッチにすると最高!
トマトとモッツァレラチーズを挟んで、お昼ご飯にどうぞ。

◎ベーグル(むっちり食感、腹持ち抜群)
茹でてから焼くので、もちもち食感が長持ちします。
普通のパンより砂糖・油が少ないから、ダイエット中の方にも。
朝7時に食べれば、お昼まで空腹を感じにくいですよ。
クリームチーズを塗ると、カフェ気分が味わえます。

◎クリームパン(不動の人気No.1)
当店創業以来の看板商品です。
カスタードクリームは、卵黄をたっぷり使った昔ながらの製法。
甘すぎず、懐かしい味わいです。
お子さんのおやつにも、大人のコーヒータイムにもぴったり。

この説明文を添えたPOPを置いただけで、何が起きたと思いますか?

なんと、フォカッチャとベーグルがどんどん売れ始めたのです。
それまで午後には大量に売れ残っていたのに、お昼過ぎには完売することも。追加で焼く日まで出てきました。

佐藤さんは驚きました。
「パンの味も、材料も、何も変えていないのに……」

なぜうまくいったのか?―価値の「見える化」

この事例から、3つの重要なポイントが見えてきます。

ポイント①:知識のギャップを埋めた

「フォカッチャ」という名前を聞いて、すぐに「どんなパンか」イメージできる人は少数派です。
多くの人は「聞いたことあるけど、食べたことない」「なんか難しそう」と思って、手を伸ばしません。

でも、「イタリア生まれの平たいパン」「ピザの原型」「サンドイッチにすると最高」と説明されたら、どうでしょう?
急に親しみが湧いてきませんか?
知らない = 怖い、選べない
知っている = 安心、選べる

これが人間の心理なんです。

ポイント②:「自分ごと」にした

ベーグルの説明に注目してください。
「ダイエット中の方にも」「朝7時に食べればお昼まで空腹を感じにくい」という一文があります。

これを読んだ人は、こう思うかもしれません。

・「あ、私ダイエット中だわ」
・「そういえば、午前中すぐお腹が空くのよね」
・「明日の朝、これ食べてみようかな」

つまり、「自分には関係ない商品」が「自分のための商品」に変わったのです。

ポイント③:使い方を提案した

「クリームチーズを塗ると、カフェ気分」
「半分に切ってサンドイッチに」

こういう具体的な食べ方を提案すると、お客様の頭の中に「美味しそうな場面」が浮かびます。
想像できると、欲しくなる。
これが購買行動のきっかけになるんです。

他の業種でも同じことが起きている

この「価値を伝える」という考え方は、パン屋さんだけの話ではありません。

美容室の例

あるヘアサロンでは、メニュー表をこんな風に変えました。

変更前:

・カット ¥4,000
・カラー ¥6,000
・トリートメント ¥3,000

変更後:

・「印象が変わる」小顔カット(骨格に合わせてカット)¥4,000
・「白髪が目立たない」グラデーションカラー(伸びても自然)¥6,000
・「翌朝のスタイリングが楽になる」集中トリートメント ¥3,000

結果、トリートメントの申込率が1.5倍になりました。
「翌朝のスタイリングが楽」という言葉に、忙しい主婦層が反応したのです。

クリーニング店の例

駅前のクリーニング店では、新しいサービスを始めましたが、最初はほとんど利用者がいませんでした。
新サービス:「防ダニ加工」

でも、こんな風に説明を変えたところ、利用者が急増しました:
「お布団の防ダニ加工、始めました」
 ↓
「【花粉症・アレルギーの季節に】
お布団のダニやハウスダストを除去して、
専用の加工剤でコーティング。
約3ヶ月間、ダニの繁殖を抑えます。
小さなお子さんがいるご家庭におすすめです」

「防ダニ」という言葉だけでは、「自分に必要かどうか」分からなかったお客様が、「花粉症」「小さな子ども」というキーワードで「これ、うちに必要だ」と気づいたのです。

中小企業こそ、価値を伝える力が武器になる

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「うちは小さな会社だから、広告にお金をかけられない」
「大手みたいに宣伝できない」
でも、実はそれが逆にチャンスなんです。

大手チェーン店は、全国一律のマニュアルで動いています。
商品説明も画一的で、お客様一人ひとりの事情に合わせて変えることは難しい。

でも、中小企業は違います。

・お客様の顔が見える
・地域の事情が分かる
・お客様の声をすぐに商品説明に反映できる

この機動力こそ、中小企業の強みです。

たとえば、先ほどのパン屋の佐藤さんは、常連のお客様との会話の中で、こんなことに気づきました。
「そういえば、朝ベーグル買っていく人、みんなダイエットの話してるな」
「フォカッチャ、『これ、どうやって食べるんですか?』ってよく聞かれるな」

この気づきをPOPに反映したから、売上が伸びたんです。

今日からできる「価値を伝える」3ステップ

では、具体的にどうすればいいのか。
簡単な3ステップをご紹介します。

ステップ①:お客様の疑問を想像する

あなたの商品やサービスを見たとき、お客様はこんな疑問を持っているかもしれません:

・これって何?
・他の商品と何が違うの?
・私に必要なの?
・どうやって使うの?
・いくらなの?値段に見合う価値はあるの?

この疑問をリストアップしてみてください。

ステップ②:分かりやすい言葉で答える

専門用語や業界用語は使わず、中学生でも分かる言葉で説明します。

・「○○に似ています」という例え
・「こんなときに便利」という具体的な場面
・「××な方におすすめ」というターゲット

これらを盛り込むと、グッと分かりやすくなります。

ステップ③:目につく場所に置く

せっかく作った説明文も、見てもらえなければ意味がありません。

・店頭のPOP
・ホームページ
・メニュー表
・チラシ
・SNSの投稿

あらゆる場所で、価値を伝え続けましょう。

まとめ:売れないのは、伝えていないだけかもしれない

最後に、もう一度お伝えします。

選んでもらえない、買ってもらえない。
その原因の多くは、ちゃんと価値を伝えていないということ。

あなたの商品やサービスには、必ず価値があります。
でも、その価値を知らなければ、お客様は選べません。
必要性を感じなければ、買ってくれません。

「良いものを作れば売れる」
これは、残念ながら幻想です。

「良いものを作り、その価値をきちんと伝える」
これが、これからの時代に必要な経営の考え方です。

明日から、あなたのお店や会社の商品を見直してみてください。

・商品名だけで終わっていませんか?
・お客様の疑問に答えていますか?
・「自分ごと」として感じてもらえる説明になっていますか?

たった一枚のPOPで、パン屋さんの売上が変わったように、小さな工夫が大きな変化を生むことがあります。

あなたの会社の「眠っている宝物」を、お客様に見つけてもらいましょう。
そのための第一歩が、「価値を伝える」ことなのです。

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