利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

経営の土台は「好かれる人間性」―能力より大切な、人との繋がり

経営の土台は「好かれる人間性」―能力より大切な、人との繋がり

人に好かれることが経営の基本

はじめに―中小企業経営における「人間関係」の重要性

私たちのような中小企業の経営者にとって、日々の仕事は「人と人との関係」で成り立っています。
お客様はもちろん、従業員、取引先、金融機関、地域の方々など、あらゆる場面で人との繋がりが事業の成否を左右します。

大企業であれば、会社のブランド力や組織の仕組みである程度カバーできることも、私たち中小企業では「経営者の人柄」が直接、会社の評判に結びつきます。
お客様が商品やサービスを選ぶとき、「この会社の社長さんは信頼できる」「あの人から買いたい」という感情が、大きな決め手になることが少なくありません。

では、そうした信頼や好感は、どこから生まれるのでしょうか。

人生と経営の根本基礎―「好かれる人間」であること

何をおいても、一番先に必要なことは、「他人に好かれる人間にならなければいけない」ということです。
なんでもないことのようですが、これが人生の、そして経営の一番の根本基礎なのです。

どんなに専門知識が豊富でも、どんなに長年の経験を積んでいても、どれほど優れた経営手腕を持っていても、他人に好かれない人間は、有意義で幸福な人生を送ることができません。
これは経営の世界でも全く同じです。

たとえば、税務や会計の知識が完璧で、数字の管理が得意な経営者がいたとします。
しかし、その方が従業員に対して冷たく、お客様に対して横柄な態度を取っていたらどうでしょうか。
おそらく従業員は次々と辞めていき、お客様も離れていってしまうでしょう。

反対に、経営の専門知識はまだ不足していても、誠実で人の話をよく聞き、周囲から信頼される人柄の経営者であれば、困ったときに助けてくれる人が現れます。従業員も「この社長のために頑張ろう」と思ってくれますし、お客様も「多少高くても、この人から買いたい」と思ってくださるものです。

つまり、知識や技術は後からでも身につけられますが、人間性という土台がしっかりしていなければ、その上に何を積み上げても崩れてしまうのです。
これは、家を建てるときの基礎工事のようなものです。
どんなに立派な建物を建てようとしても、基礎がしっかりしていなければ、いずれ傾いてしまいます。

実際の事例―「人柄」が分けた二つの飲食店

ここで、私が実際に見聞きした二つの飲食店の事例をご紹介します。

A店―腕は確かだが、人柄で苦戦した店

ある地方都市に、料理の腕は抜群に良い和食店がありました。
店主は有名な料理店で10年以上修行を積んだ職人で、味については地元でも評判でした。
開店当初は「あの店の料理は本当に美味しい」と話題になり、お客様も集まっていました。

しかし、この店主には一つの問題がありました。
自分の料理への自信が強すぎるあまり、お客様の要望を聞こうとしなかったのです。
「味付けを少し薄くしてほしい」というお願いにも「これが正しい味だ」と突っぱね、常連客が「久しぶりに来た」と言っても「そうですか」と素っ気ない返事。
従業員に対しても厳しく、些細なミスを大声で叱責することもありました。

結果として、従業員は次々と辞め、お客様も徐々に足が遠のいていきました。
「味は良いけど、店主の態度が…」という評判が広まり、開店から3年で閉店に追い込まれてしまいました。

B店―料理は普通でも、人柄で繁盛する店

一方、同じ地域に別の定食屋がありました。
こちらの店主は料理学校を出たわけでもなく、特別な修行を積んだわけでもありません。
提供する料理も、いわゆる「家庭的な味」で、特別に洗練されているわけではありませんでした。

しかし、この店主には素晴らしい人柄がありました。
お客様一人ひとりの好みを覚えていて、「今日は寒いから、温かいものをたっぷりね」と気遣ったり、常連客が久しぶりに来ると「お待ちしてましたよ!」と心から喜んだり。
従業員も大切にし、「みんなのおかげで店が成り立っている」といつも感謝の言葉を口にしていました。

近所の高齢者が体調を崩したと聞けば、お弁当を届けることもありました。
地域の学校行事があれば、積極的に協力しました。
そうした姿勢が評判を呼び、「あの店に行くと元気になれる」「店主さんに会いたくて通っている」という声が広がりました。

結果、開店から15年以上経った今も、地域に愛される繁盛店として続いています。
料理の味も、お客様や従業員の助言を素直に受け入れて改善し続けた結果、開店当初よりずっと美味しくなりました。

二つの店が教えてくれること

この二つの店の違いは何でしょうか。
料理の腕でしょうか。
経営の知識でしょうか。

いいえ、最も大きな違いは「人に好かれる人柄があったかどうか」です。

A店の店主は確かに優れた技術を持っていましたが、その技術を活かすための「人間関係という土台」を軽視してしまいました。
B店の店主は、技術は後から磨けるものと理解し、まず「人との繋がり」を大切にしました。
その結果、周囲の人たちが店を支えてくれる関係が生まれたのです。

「好かれる人間」になるために―今日からできること

では、私たち経営者は、どのようにして「好かれる人間」になれるのでしょうか。
特別な才能が必要なわけではありません。
日々の小さな心がけの積み重ねです。

相手の話を、心から聴く

忙しい日々の中でも、従業員やお客様の話に耳を傾ける時間を大切にしましょう。
「聞く」ではなく「聴く」―相手の言葉の裏にある気持ちまで理解しようとする姿勢が大切です。

感謝の言葉を惜しまない

「ありがとう」「助かります」「おかげさまで」―当たり前のことにも、きちんと感謝の気持ちを伝えましょう。
人は、自分の存在や貢献を認めてもらえると嬉しいものです。

誠実であり続ける

約束を守る、間違いは素直に認める、嘘をつかない。
こうした当たり前のことを、当たり前に続けることが信頼を生みます。

相手の立場で考える

自分の都合だけでなく、相手の状況や気持ちを想像する習慣をつけましょう。
「この発言は、相手を傷つけないだろうか」「この依頼は、相手にとって負担ではないだろうか」と考える心の余裕が、良好な関係を築きます。

謙虚さを忘れない

どんなに成功しても、どんなに知識が増えても、「自分はまだまだ」という謙虚な姿勢を持ち続けましょう。
傲慢さは、人を遠ざけます。

おわりに―幸福な経営は、良好な人間関係から

ビジネス書や経営セミナーでは、マーケティング戦略や財務管理、効率化の手法など、さまざまな「経営技術」が語られます。
もちろん、それらも大切です。

しかし、それらすべての前提として、「人に好かれる人間性」という土台があります。
この土台がしっかりしていれば、多少の失敗や困難があっても、周囲の人たちが支えてくれます。
従業員は「この社長のために頑張ろう」と思ってくれますし、お客様は「この人を応援したい」と思ってくださいます。

反対に、どんなに優れた戦略や知識があっても、人間性という土台が脆弱であれば、いずれ行き詰まります。

私たち中小企業の経営者は、日々の忙しさの中で、つい「売上」や「効率」といった数字ばかりに目が向きがちです。
しかし、時には立ち止まって、「自分は、周囲の人たちから好かれる人間だろうか」「信頼される人柄を築けているだろうか」と自分自身に問いかけてみることも大切ではないでしょうか。

有意義で幸福な人生、そして持続可能な経営は、良好な人間関係の上に成り立ちます。
そして、その人間関係の根本にあるのが、「他人に好かれる人間性」なのです。

学問も経験も手腕も、すべて大切です。
しかし、それらを活かすための土台として、まず「人に好かれる人間になる」こと。
これが、経営においても、人生においても、最も大切な出発点なのです。

明日から―いえ、今日から、目の前の人に対して、少しだけ優しく、少しだけ丁寧に、少しだけ誠実に接してみてはいかがでしょうか。
その小さな積み重ねが、やがて大きな信頼となり、あなたの経営を、そして人生を支える力になるはずです。

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