利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

値段を下げたら、本当に売れるのか?―「価格弾力性」で考える賢い価格戦略

値段を下げたら、本当に売れるのか?―「価格弾力性」で考える賢い価格戦略

価格と希少性を使った売上アップの戦略

はじめに:値下げは本当に正解なのか

「売上が伸び悩んでいるから、少し値下げしてみようか」

経営者なら、一度はこんなふうに考えたことがあるのではないでしょうか。
確かに、値段を下げれば買いやすくなって、お客様が増えそうな気がします。
でも実際のところ、値下げがいつも正解とは限りません。

商品やサービスによって、「値段を下げたときの効果」はまったく違うのです。
ある商品は少し安くするだけで飛ぶように売れますが、別の商品はいくら値下げしてもほとんど売上が変わらない、ということが起こります。

この違いを理解するカギが「価格弾力性」という考え方です。
難しそうな言葉ですが、仕組みはとてもシンプル。
今回は、この価格弾力性を理解することで、あなたのお店や事業でどんな価格戦略が有効なのかを一緒に考えていきましょう。

価格弾力性とは何か―ゴムの伸び縮みで考えてみる

「価格弾力性」という言葉を初めて聞くと、なんだか難しく感じるかもしれません。でも、「弾力性」という言葉をゴムの伸び縮みに例えると、イメージしやすくなります。

ゴムを引っ張ると、よく伸びるゴムもあれば、あまり伸びない硬いゴムもありますよね。
価格弾力性も同じで、「値段を動かしたとき(引っ張ったとき)に、売上がどれだけ動くか(伸びるか)」を表す考え方なのです。

「価格弾力性が高い」というのは「価格に敏感だ」ということです。
つまり、「顧客が価格の変化に敏感に反応して、販売量が大きく変わる」状態を指します。
よく伸びるゴムのように、値段を少し下げるだけで売上がグンと伸びるイメージです。

逆に、「価格弾力性が低い」というのは「価格に鈍感だ」ということです。
つまり、「価格を変えても売れ行きはあまり変わらない」状態です。
硬いゴムのように、値段を動かしてもあまり反応がないイメージですね。

この違いを知っておくと、「うちの商品は値下げすべきか」「それとも別の方法で売上を伸ばすべきか」という判断がしやすくなります。

実例で見る価格弾力性の違い

それでは、実際のビジネスの現場で、価格弾力性がどのように働くのかを見ていきましょう。

事例1:コンビニエンスストアのおにぎり

あるコンビニチェーンが、おにぎりの価格を120円から100円に値下げしたとします。
おにぎりは「お腹が空いたときに手軽に買える」商品で、価格への感度が比較的高い商品です。

この場合、20円(約17%)の値下げによって、販売個数が1.5倍から2倍近くに増えることがあります。
なぜなら、「今日はコンビニで我慢しようと思っていたけど、100円なら買ってもいいかな」と考えるお客様が増えるからです。

おにぎりのような日常的な食品は、価格弾力性が高い傾向があります。
お客様は複数のお店で価格を比較しやすく、「少しでも安いほうを選びたい」と考えるからです。

事例2:美容室のカット料金

一方で、美容室のカット料金を考えてみましょう。
あなたが通っている美容室が、カット料金を4,000円から3,500円に値下げしたとします。

この場合、「500円安くなったから、今まで2ヶ月に1回だったけど、これからは月1回行こう」と考える人は、それほど多くないでしょう。
髪を切る頻度は、価格よりも「髪が伸びたかどうか」や「自分のライフスタイル」で決まるからです。

また、美容室の場合は「この美容師さんが好きだから」「雰囲気が気に入っているから」という理由で選んでいることが多く、500円の差があっても簡単には別のお店に変えません。これは価格弾力性が低い例です。

事例3:町の電気工事業者の料金

もう一つ、電気工事業者の例を考えてみましょう。
家のコンセントが故障して、急いで修理が必要になったとします。

この場合、「A社は15,000円、B社は13,000円」という見積もりがあったとしても、多くの人は「信頼できそうか」「すぐに来てくれるか」「対応が丁寧か」を重視して選びます。
2,000円の差よりも、「安心して任せられるかどうか」のほうが大切だからです。

緊急性の高いサービスや、専門性の高い技術を必要とする仕事は、価格弾力性が低い傾向があります。

「呼び水商品」で集客し、利益商品で稼ぐ戦略

価格弾力性を理解すると、もう一つ面白い戦略が見えてきます。
それが「呼び水商品」を使った戦略です。

これは、価格弾力性の高い商品を目玉として安く売り、お客様を店に呼び込み、その後に利益率の高い他の商品を買ってもらうという方法です。

たとえば、ある定食屋さんが「日替わりランチ500円」という看板を出したとします。
この価格は原価ギリギリか、場合によっては赤字かもしれません。
でも、その安さに引かれてお店に入ったお客様が、「せっかくだから生ビールも頼もうかな」「デザートもつけようかな」と考えることで、全体として利益が出る仕組みです。

この戦略のポイントは以下の3つです。

1.お客様の目に留まりやすい商品を選ぶ:誰もが知っている定番商品や、分かりやすい商品が効果的です。
2.値ごろ感のある価格設定:「えっ、こんなに安いの?」と思わせる価格が理想です。
3.店内で他の商品をアピールする:お客様が来店した後に、利益の出る商品をしっかり見てもらえる工夫が必要です。

「期間限定」「数量限定」の心理効果

価格戦略を考えるとき、もう一つ知っておきたいのが「希少性」の心理です。

人間には「今しか買えない」「ここでしか買えない」「売り切れたら買えない」と思うと、ついつい欲しくなってしまう心理があります。
これを上手に活用しているのが「期間限定商品」や「数量限定商品」です。

たとえば、いつも地味な定番商品しか置いていない和菓子屋さんが、月に一度だけ「季節の特別どら焼き」を限定30個で販売したとします。
普段は1個150円のどら焼きを買っていたお客様が、「今月だけの栗どら焼き、300円」を見ると、「せっかくだから買ってみよう」と思うわけです。

この戦略は、単なる値下げとは違います。
むしろ、「特別感」や「希少性」を演出することで、通常より高い価格でも買ってもらえる可能性があるのです。

中小企業や個人事業の強みは、大企業にはできない「小回りの良さ」です。
季節ごとの限定商品や、お客様の要望に応じた特別メニューなど、希少性を感じさせる工夫がしやすいのです。

あなたの事業に活かすヒント

ここまでの内容を踏まえて、あなたの事業でどう活かせるか考えてみましょう。

自分の商品・サービスの「価格弾力性」を見極める

まず、あなたが扱っている商品やサービスが、価格に敏感かどうかを考えてみてください。

価格弾力性が高そうな場合(価格に敏感)

・同じような商品を扱うライバルが多い
・お客様が簡単に価格を比較できる
・日常的に購入する消耗品
→ この場合は、値下げが効果的な可能性があります。ただし、利益が出る範囲で慎重に。

価格弾力性が低そうな場合(価格に鈍感)

・専門性が高く、代わりが効きにくい
・信頼関係が重要なサービス
・緊急性の高いもの
→ この場合は、無理に値下げせず、品質やサービスの向上に力を入れるほうが効果的です。

「呼び水商品」と「利益商品」を使い分ける

すべての商品で高い利益を狙う必要はありません。
お客様を呼び込むための「呼び水商品」と、しっかり利益を確保する「利益商品」を分けて考えましょう。

たとえば、

・クリーニング店なら、ワイシャツを格安にして、スーツやコートで利益を確保
・リフォーム業なら、小規模な修繕を手頃な価格で受けて、大型工事につなげる
・飲食店なら、ランチを手頃にして、ディナーやアルコールで稼ぐ

「希少性」を演出する工夫をする

「いつでも買える」より「今しか買えない」ほうが、お客様の心を動かします。

・季節限定のメニューや商品
・月に数日だけの特別サービス
・「先着○名様限定」の特典

こうした工夫は、大きなコストをかけなくても実現できます。

まとめ:値下げだけが答えではない

価格戦略を考えるとき、「とりあえず値下げしてみよう」という発想になりがちですが、それが常に正解とは限りません。

大切なのは、あなたの商品やサービスが「価格に敏感かどうか」を見極めることです。
価格弾力性が高い商品なら値下げは効果的ですが、低い商品なら品質向上や付加価値の提供のほうが重要になります。

また、すべての商品で高い利益を狙うのではなく、「呼び水商品」で集客し、「利益商品」でしっかり稼ぐという戦略も有効です。

そして、単なる値下げではなく、「期間限定」「数量限定」といった希少性を演出することで、むしろ高く売れる可能性もあることを忘れないでください。

価格は、お客様とあなたをつなぐ大切なコミュニケーションツールです。
お客様の心理を理解し、自分の事業の特性を活かした価格戦略を考えることが、長く愛されるお店や事業を作る第一歩になります。

ぜひ、今日からあなたの商品やサービスを見直して、「この商品は価格に敏感だろうか?」「どんな価格戦略が効果的だろうか?」と考えてみてください。
その小さな気づきが、大きな成果につながるはずです。

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