お客様が「ぜひ、あなたから買いたい」と言ってくれる関係づくり

信頼を得る方法

商売の基本は、商品を売ること。
それは間違いありません。
しかし、特に初めてのお客様にとっては、いきなり「この商品は素晴らしいですよ!さあ、買ってください!」とアピールしても、心にはなかなか響きません。
なぜなら、お客様は「本当にこのお店は信用できるのかな?」「自分に合ったものなのかな?」と不安に感じているからです。

これは、普段の私たちの行動に置き換えると分かりやすいかもしれません。
初めて訪れた街でレストランを探している時、大声で「うちが一番ウマいよ!一番高いコースを頼んでいきな!」と叫んでいるお店に、すぐ入れるでしょうか?
多くの方は、少し警戒してしまいますよね。
それよりも、お店の前に「シェフのこだわり」が丁寧に書かれていたり、楽しそうに食事しているお客さんの様子が伺えたりするお店の方に、安心して入りやすいのではないでしょうか。

実店舗のビジネスも、これと全く同じです。
商品を売る前に、まずはお店の「人柄」や「想い」を伝え、お客様に安心してもらうことが、何よりも大切なのです。

ファンになってもらうための「自己紹介」が鍵

お客様の心をつかみ、成功しているお店は、この「お客様に安心してもらう」ための活動、つまりお店のファンになってもらうための「自己紹介」が非常に上手です。

例えば、地域に根差したこだわりのパン屋さん「麦の香りベーカリー」という架空のお店を想像してみてください。
このお店は、パンの種類の豊富さや美味しさだけでなく、店頭のPOPや店員さんの接客を通じて、「私たちは、毎朝4時からパンを焼き始め、地元の契約農家さんが作った小麦粉を使い、添加物は一切入れずに作っています」「お子様にも安心して食べてもらえるパンをお届けしたいんです」という、パン作りにかける熱い想いや、誠実な姿勢を丁寧に伝えています。

さらに、初めてのお客様には「本日の焼き立てパンの試食」を提供したり、「まずは、この人気のミニパンセットをお試しください。気に入らなければ、次回は別のパンを試してみてくださいね」と気軽に声をかけたりします。
これは、初めてパンを買うお客様の「どんな味だろう?」「自分好みのパンかな?」という不安を、店頭で実際に試せる機会や、選択肢を提示することで取り除いてくれますよね。

これはお店からの「私たちのパンに絶対の自信があります。だから、まずは気軽に味わってみてください」という強力なメッセージです。
いきなり商品を売り込むのではなく、まずはお客様の不安に寄り添い、徹底的に安心できる材料を提供することで、「このお店なら信頼できそうだ」という気持ちを育んでいるのです。

小さな会社だからこそできる「信頼」の築き方

「なるほど、でもうちみたいな小さな会社に、そんな立派なことはできないよ…」と思われるかもしれません。
しかし、心配はいりません。高額な広告費をかけなくても、小さな会社だからこそできる、お客様との信頼を深める方法はたくさんあります。

  • 作り手や売り手の「顔」を見せる
    社長やスタッフの顔写真、お店のコンセプトや日々の様子を店頭に掲示したり、地域の情報誌で紹介したりしてみましょう。
    「誰が、どんな想いで作っているのか、売っているのか」が分かると、お客様はぐっと親近感を覚えてくれます。
  • 日々の頑張りを発信する
    新商品の開発秘話や、お客様からの嬉しい声、時にはお店で起きたちょっとした面白い出来事まで正直に語ることで、お店の「人柄」が伝わります。
    完璧な姿を見せるより、一生懸命で誠実な姿がお客様の共感を呼びます。
  • 「お試し」の機会をつくる
    初めてのお客様が購入に躊躇しないよう、商品の「試食・試飲」や「お試し価格」、サービスであれば「初回限定割引」など、お客様が気軽に一歩を踏み出せるきっかけを用意することが、最終的な購入へと繋がります。

ビジネスは、お客様との信頼関係という土台の上に成り立っています。
商品を売る前に、まずはお客様に自分たちのファンになってもらうこと。
この順番を大切にすることが、長く愛される会社になるための、一番の近道なのです。