商品の「すごいところ」を語るだけでは、お客様の心は掴めない

熱い思いで顧客をファンに

お店の商品の「こだわり」や「うんちく」、例えば「このお肉はA5ランクで…」「この素材は〇〇産で…」といった説明は、もちろん大切です。
それは商品の「頭の良さ」を伝えるようなものです。

しかし、それだけではお客様の心を本当に掴むことはできません。
お客様が本当に知りたい、そして心を動かされるのは、商品の「頭の良さ」の裏側にある、あなたの「ハートの熱さ」なのです。

例えるなら、婚活パーティーで出会った人のプロフィール(年収、学歴、趣味など)だけを見ても、その人を好きにはなりませんよね。
その人の生い立ちの物語、仕事への情熱、将来の夢といった「人となり」に触れたときに、私たちは心を動かされ、ファンになるのです。

お店もこれと全く同じです。
お客様に、あなたのお店の「ファン」になっていただき、何度も通っていただくためには、あなたの「ハートの熱さ」=「物語」を伝えることが不可欠なのです。

あなたの「物語」をお客様に届けよう

では、「物語」とは何でしょうか?
難しく考える必要はありません。
以下の質問に、あなた自身の言葉で答えるだけで、それが立派な「物語」になります。

  • なぜ、このお店を始めようと決心したのですか?

(例:「会社員時代、本当に美味しいと思えるパンに出会えず、ないなら自分で作ろう!と一念発起したんです」)

  • お店を立ち上げるとき、どんな壁がありましたか?

(例:「理想の小麦粉が見つからず、半年間、日本中の農家さんを訪ね歩きました」)

  • このお店で、お客様にどんな気持ちになってほしいですか?

(例:「忙しい日の終わりに、うちのコーヒーを飲んで『ふぅ』っと一息ついて、幸せな気持ちになってほしいんです」)

  • この商品を通じて、お客様の生活をどう変えたいですか?

(例:「この手作り石鹸で、肌が弱い方にも、お風呂の時間をもっと楽しんでほしい」)

  • お客様から、どんな言葉をかけてもらうのが一番嬉しいですか?

(例:「『ここのお店があるから、この街が好きになったよ』と言っていただけた時、涙が出るほど嬉しかったです」)

  • そのために、いつもスタッフに伝えていることは何ですか?

(例:「『ありがとう』は、商品を渡す時じゃなく、お客様の目を見て、最高の笑顔で伝えようね、と話しています」)

「物語」がお客様の心を動かす

こうした舞台裏の物語は、あなたが伝えない限り、お客様には決して分かりません。

しかし、一度この物語が伝わると、お客様の目に映るあなたのお店の景色は一変します。
ただ商品を売っている「お店」から、「〇〇さんが、あんな苦労をしてまで守りたかったお店」、「情熱を持った人が、人生をかけてやっているお店」へと変わるのです。

お客様は、モノそのものに感情を込めるのは苦手です。
でも、そのモノに込められた「人の思い」や「汗と涙の物語」には、自然と心を重ねてしまうもの。

「あのお店、応援したいな」
「どうせ買うなら、あの頑張っている店長のお店で買いたいな」

そう思っていただけるようになります。
これが「ファンになる」ということです。

どんな小さなお店にも、必ず宝物のような物語が眠っています。
開店した日のドキドキした気持ち、新メニュー開発で徹夜した夜のこと。
お店の数だけ、商品の数だけ、そこには必ず素敵な物語があります。

どうぞ、そのあなただけの物語を、少しだけ勇気を出して、お客様に語りかけてみてください。
それが、どんな高価な広告よりも、お客様の心に深く響く最高のメッセージになるはずです。