利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

一度来てくれたお客様を、もう一度─新規顧客をリピーターに変える実践的な考え方

一度来てくれたお客様を、もう一度─新規顧客をリピーターに変える実践的な考え方

新規客が「常連さん」になる確率を4倍にする方法─最初の3ヶ月にやるべきこと

私が中小企業の経営者の方々とお話ししていると、ほぼ必ず耳にする悩みがあります。

「新しいお客様は来てくれるのですが、なかなかリピートしてもらえなくて」

広告を出し、チラシを配り、SNSで発信して、ようやく来てくれた新しいお客様。
それなのに、一度きりで終わってしまうことが、いかに多いことか。

新規のお客様を集めるための費用は、既存のお客様に再び来ていただくための費用の、数倍から十数倍かかるといわれています。
努力とお金をかけて呼んだお客様が、そのまま離れていってしまうのは、経営者にとって本当に惜しいことです。

では、どうすれば「一度きり」で終わらせずに、「また来たい」と思ってもらえるのでしょうか。

今回は、新規顧客をリピーターに変えるための具体的な考え方と、すぐに試せる実践のヒントをお伝えします。
難しい理論よりも、明日から使える視点を大切にしながら書きました。

最初の3ヶ月が、すべてを決める

お客様が初めて来てくれてから、最初の3ヶ月が勝負といわれています。

ある研究によれば、初めて来てくれたお客様に3ヶ月以内にもう一度来ていただけると、その方が固定客(常連さん)になる確率が、何と4倍に上がるというデータがあります。

逆にいうと、最初の3ヶ月間、何もしなければ、せっかく来てくれたお客様との縁はそこで途切れてしまうことが多いのです。

人間の記憶は、思っているよりずっと早く薄れていきます。
「あの店、よかったな」と感じていても、日常の忙しさに流されて、そのまま忘れてしまう。それが普通です。

だからこそ、初回来店後の最初の3ヶ月は、経営者のほうから積極的に「もう一度来るきっかけ」を作ることが大切なのではないでしょうか。

気持ちの中では「また来てほしい」と思っていても、何もしなければ、それはお客様には伝わりません。
想いは行動に変えてはじめて、相手に届くものです。

「また来てください」では、人は動かない

お客様に「またどうぞ」と声をかけることは大切です。
しかしそれだけでは、なかなか足を運んでもらえないのが現実です。

人は、何か「理由」がないと動きません。
特に、毎日忙しく過ごしている方にとっては、「なんとなくよかった店にまた行こう」という動機よりも、「今日はどこで食事しようか」「近所で済ませようか」という日常の判断が先に来てしまいます。

だからこそ必要なのは、「このタイミングで行かないと損だ」と感じてもらえる、魅力的な理由です。

「またご利用ください」というご案内を送っても動いてもらえないのは、お客様の気持ちを動かす「何か」が欠けているからです。
むしろ、「これだけお得なら、行ってみようかな」という気持ちを自然に引き出す仕掛けが必要なのです。

これは「お客様を操作する」ということではありません。
来てくれた方に、もう一度足を運ぶ「きっかけ」を丁寧に届ける、ということです。

割引をするなら、中途半端はやめる

ここで、多くの経営者が見落としやすいことをお伝えします。

割引をするなら、思い切ってやることが大切です。

「少し値引きすれば来てもらえるかも」という気持ちはよくわかります。
しかし、5〜10%程度の割引では、お客様の心はほとんど動きません。
「まあ、少しお得かな」という程度の印象にとどまってしまうのです。

実は、人間の心理として、ある一定の割引率を超えると「これは行かないと損だ」と感じる閾値(いきち:一定の行動を引き起こす境界線のこと)があります。その目安が、おおよそ30%といわれています。

もちろん、商品の原価や利益率との兼ね合いもありますから、すべての業種で30%引きが最適とは限りません。
しかし、「割引をするなら、効果が出るくらい思い切ってやる」という発想は、多くの場面で参考になると思います。

中途半端な割引は、お客様の心を動かさないばかりか、「お得感」すら与えられず、費用だけがかかってしまうことになりかねません。

ここで忘れてはいけないのは、視点を長期に持つということです。
一時的に利益が下がっても、その方が固定客になってくれれば、長い目で見れば必ずプラスになります。
割引は「投資」として考えてみるのも一つではないでしょうか。

「30%引き」より「1,500円お得」のほうが伝わる

割引を打ち出す際には、「何パーセント引き」よりも「いくらお得か」を金額で示すほうが、はるかに効果が高いといわれています。

たとえば、次の二つを比べてみてください。

「通常5,000円のコースを、本日は3,500円でご提供します」
この表現でも割引は伝わります。
しかし、受け取る側の感覚としては「安くなってるな」程度にとどまることが多いのです。

一方で、
「通常5,000円のコースを、1,500円引きの3,500円で。今なら1,500円もおトク!」
と表現すると、「1,500円」という具体的な数字が頭に残ります。
財布から出て行くお金ではなく、「得をするお金」として記憶されるのです。

人間は、損をすることをとても嫌います。
「1,500円得をする」という表現は、「今行かなければ1,500円を損した気分になる」という心理を、自然に引き出します。
難しい言葉でいうと「損失回避」の心理です。
これは人間の本能に近い感覚であり、うまく活用することで、お客様の背中を押すことができます。

クーポンは「金券」として、丁寧に仕上げる

もし、割引のご案内を封書やはがきでお届けするなら、表現のひと工夫が大きな違いを生みます。

「1,500円割引券」とするよりも、「1,500円金券」と書くほうが、受け取ったときの印象がまったく変わります。

「割引券」は「安くしてあげる」というニュアンスです。
「金券」は「現金に近い価値を持つ特別なもの」という印象を与えます。
受け取った側が「これは使わないともったいない」と感じやすくなるのです。

さらに、その券自体の「作り」にも気を配ってみてください。

薄い紙に印刷しただけのクーポンと、しっかりした厚みのある紙に、有効期限やお店のスタンプが押されたチケット。
受け取ったときの「重さ」と「丁寧さ」がまるで違います。

たかが紙切れ一枚、と思われるかもしれません。
しかし、そのひと手間が「大切にされている」という感覚を生み、お客様の行動につながることがあります。

細部への気遣いは、数字には現れにくいけれど、確かにお客様の心に届くものです。

「当選しました」という仕掛けを上手に使う

もう一つ、実際に多くのお店で使われている面白いアイデアをご紹介します。

それは、「抽選」の仕掛けを使う方法です。

たとえば、来店時にアンケートへのご協力をお願いします。
「アンケートに答えてくださった方の中から、毎月抽選でプレゼントをお送りしています」という案内をつけておくのです。
サービスの満足度や好みに関する、シンプルな内容で十分です。

後日、そのお客様にご連絡を差し上げる際に、「このたびは抽選にご当選されました。○○円分のお食事券をお送りします」という形にすることができます。

この仕掛けの良いところは、「クーポンを送りつけられた」という感覚ではなく、「自分が当たった」という喜びに変わることです。
人は、何かを「もらった」よりも「当たった」ときのほうが、嬉しさが増すといわれています。

また、そのお客様が周囲の方に話す際にも、「そのお店からクーポンが届いた」よりも、「抽選で当たったんだよ」と伝わることで、自然な口コミにつながることもあります。

ダイレクトメール(郵便やメールでの案内送付)を送る際にも、「ご当選おめでとうございます」という一文があるだけで、封を開けてもらえる確率が格段に上がります。

一度離れたお客様への「最後のひと押し」

来店してくれたお客様との関係は、一度途切れたら終わりではありません。

ある大手飲食チェーンでは、来店から1年間、定期的にダイレクトメールをお届けし続けます。
そして、それでも来店がなかったお客様には、「ご当選おめでとうございます」という特別なご案内を最後に一度だけお送りするそうです。
中身は特に魅力的な内容になっています。

それでも来てくださらない場合は、その後の案内は送らないのだそうです。

「最後のひと押し」として、思い切った特典を用意する。
この発想は、中小企業にも応用できるのではないでしょうか。

一度離れかけたお客様も、タイミングと内容次第では、また戻ってきてくれることがあります。
あきらめる前に、「最後にもう一度だけ」という手を打ってみることも、選択肢の一つとして持っておくとよいかもしれません。

ある整骨院の取り組み(事例)

ここで、この考え方を実際に活かした事例をご紹介します。

あるご夫婦が営む小さな整骨院では、初めてご来院された患者さんに、施術後に「アンケートカード」をお渡ししていました。悩みの部位や日常生活での困りごとなどを書いていただく、シンプルな内容です。

「ご回答いただいた方の中から、毎月抽選で施術割引券をお届けしています」という一文も添えていました。

その後、ご来院から約2週間後に、「このたびご当選おめでとうございます」という手書きのメッセージとともに、「施術料金を2,000円割引させていただく金券」を封書でお送りしていました。
厚紙にしっかりと印刷し、院長のスタンプと有効期限(3ヶ月間)を明記したものです。

この取り組みを続けた結果、初回ご来院後に再度来ていただける方の割合が明らかに増えたと、院長はおっしゃっていました。

「以前は、初めて来てくれた方のほとんどが一度きりで終わっていたんです。でも、こうして丁寧に働きかけるようにしてから、続けて来てくれる方がぐっと増えました。手間はかかりますが、一人ひとりと長くお付き合いできるようになって、仕事がより楽しくなりました」

大がかりな広告よりも、一人ひとりへの丁寧なアプローチが、確実な成果につながった例です。

長期的な視点が、経営を安定させる

ここまでご紹介してきた取り組みには、共通する考え方があります。

それは、「短期的な売上」ではなく、「長期的なお客様との関係」を大切にするという視点です。

割引をすれば、その場の利益は下がります。
クーポンを作り、封書を送れば、手間もコストもかかります。
しかし、それによって一人のお客様が固定客になってくれれば、その方が長期的にもたらしてくれる売上は、短期の出費をはるかに上回ります。

税理士として多くの経営者の方々と対話してきた私が感じるのは、「リピーターが増えている会社は、売上が安定している」という事実です。
反対に、常に新規客を追い続けている会社は、集客のコストが重くなりやすく、売上も安定しにくい傾向があります。

新しいお客様を呼ぶ努力ももちろん大切です。
ただ、せっかく来てくれたお客様に「もう一度来てもらう」ための工夫も、同じくらい、あるいはそれ以上に重要なことではないでしょうか。

まとめ:小さな工夫が、確かな関係を育てる

今回お伝えしたことを、改めて整理してみます。

初めて来てくれたお客様に、3ヶ月以内に再来店していただくことが、固定客になる確率を大きく高めます。
そのためには、「また来たくなる」具体的な理由と仕掛けが必要です。

割引をするなら中途半端はやめ、「行かないと損だ」と感じてもらえるくらい思い切ること。
その割引は「金額」で伝え、丁寧に作った金券として届けること。
アンケートと抽選の仕掛けを組み合わせることで、お客様の「喜び」に変えること。

どれも、特別な予算や大がかりな仕組みが必要なわけではありません。
少しの発想と、丁寧な実行があれば、今日からでも始められることばかりです。

「うちでもやってみようかな」と思っていただけたなら、まずは一つ、小さな一歩から始めてみてください。

一人のお客様が常連さんになってくれること、その積み重ねが、経営の安定へとつながっていきます。
そして何より、「またあなたのところに来た」と言ってもらえることは、経営者としてこれほど嬉しいことはありません。

お客様との長いお付き合いの中にこそ、経営の喜びがあると私は思っています。

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