利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

夢だけでは人は動かない─「実現できる計画」の伝え方

夢だけでは人は動かない─「実現できる計画」の伝え方

ビジョン実現に必要な「アイテム」の整え方

「やりたいこと」は伝わっていても、「できそうなこと」は伝わっていない

あなたは今、大切なスタッフや取引先に向けて、こんな言葉を使っていませんか。
「もっと地域に愛されるお店にしたい」「売上を今の倍にしたい」「社員全員がイキイキ働ける会社にしたい」—どれも素晴らしい言葉です。
聞いた人は「いいですね!」と笑顔で答えてくれるでしょう。

でも、その翌日から周りの行動は変わりましたか?

多くの場合、変わりません。
それは、スタッフや関係者が「冷たい人だから」でも「やる気がないから」でもありません。
ただ、「本当に実現できるのか」が見えていないからです。

人は、「いいこと」より「できそうなこと」に動くのです。

「エベレスト登頂」で考える、人が動く説明の構造

少し想像してみてください。
旧知の友人から突然、こんなメッセージが届きました。

「エベレストに登りたいんだ。一緒に行かないか!」

夢は壮大だし、気持ちも伝わってきます。
でも、あなたはきっと「……で、どうやって?」と思うのではないでしょうか。

もしあなたが現実的な判断をする人間なら、友人にこう説明してもらわないと、本心から「よし、一緒に行こう!」とはなれないはずです。

「来年の5月を目標にしている。登頂には現地の専門ガイド(シェルパ)が必要で、実績のある会社にすでに目星をつけている。費用は1人あたり約300万円かかるが、うち半分は自分で用意できる。残りはスポンサー企業3社に打診中で、2社からはほぼOKの返事をもらっている。半年前から体力トレーニングも始めるつもりだ。だから、一緒に行こう」

少し夢のない誘い方かもしれませんが(笑)、これだけ説明されて初めて「なるほど、それなら本当に実現できそうだ。一緒に考えよう」という気持ちになれます。

この話が教えてくれることは、ビジョン(目的)だけでなく、それを実現するための「道具・人・仕組み」が論理的につながって初めて、人は動き出すということです。

ここでは、その「道具・人・仕組みの集まり」をアイテムと呼ぶことにしましょう。

アイテムとは何か─計画を「絵に描いた餅」にしないために

ビジョンとは「目指す未来の姿」です。
エベレスト登頂でいえば「頂上に立つ」がそれにあたります。

一方、アイテムとは「そのビジョンを実現するために必要なモノ・コト・ヒト」のことです。
シェルパガイド、登山装備、遠征費用、スポンサー、トレーニング期間—これらすべてがアイテムです。

重要なのは、アイテムがただ「ある」だけでは不十分ということです。
アイテム同士が論理的につながっていること—「〇〇があれば、△△ができる。△△ができれば、□□が実現する」という流れが見えて初めて、聞いている人は「これは本当にできる話だ」と感じます。

経営の現場に置き換えると、アイテムとは次のようなものです。

・人材(採用・育成・外注)
・資金(自己資金・融資・補助金)
・仕組み(業務フロー・ツール・マニュアル)
・信頼関係(顧客・仕入先・パートナー)
・知識・スキル(自社の強み・ノウハウ)

ビジョンがどれほど輝かしくても、これらのアイテムが揃っていないか、あるいは揃っていてもつながっていなければ、周囲の人には「夢物語」に聞こえてしまいます。

実例:「2号店を出したい」という夢を、計画に変えた美容室オーナー

静岡県内で小さな美容室を営むAさん(42歳)は、あるとき「3年後に2号店を出したい」とスタッフ全員に話しました。

最初の反応は「いいですね〜!」という温かい言葉でした。
ところが、数ヶ月後も誰の行動も変わらず、日々の業務は以前と同じ。
Aさんは「もしかして伝わっていない?」と感じ始めました。

あるとき、Aさんは改めてスタッフに聞いてみました。
「2号店の話、どう思う?」

するとベテランスタッフがこう答えたのです。
「正直、自分に何をしてほしいのかわからなくて……本当に実現するのかなとも思っていました」

Aさんはそこで気づきます。
自分は「何をしたいか(ビジョン)」は伝えていたけれど、「どうやって実現するか(アイテム)」をまったく伝えていなかった、と。

そこでAさんは、次のような形で改めて話し合いの場を設けました。

「3年後に2号店を出すために、まず1年目は売上を15%伸ばして資金を積み立てる。そのために、既存のお客様へのリピート促進を強化したい。ここが一番のポイントで、みんなに協力してもらいたい部分だ。2年目には出店エリアを絞り込んで物件を探し始める。そして、2号店のマネージャーは、今のスタッフの中から育てたいと思っている」

たった一度のこの説明で、スタッフの空気が変わりました。
「自分がマネージャー候補かもしれない」「売上を伸ばすことが直接つながっている」と感じたスタッフが自発的に動き始めたのです。

Aさんのビジョンは変わっていません。
変わったのは、アイテムとその論理的なつながりを「見える化」したことだけでした。

まとめ─「伝えた」ではなく「伝わった」になるために

人を動かすコミュニケーションには、2つの要素が必ず必要です。

1つ目は、ビジョン。

「どこを目指しているのか」「なぜそれが大切なのか」を情熱を持って伝えること。
これは出発点として欠かせません。

2つ目は、アイテムのつながり。

「そのビジョンを実現するために、何が必要で、どんな順序で、何がどうつながっているのか」を具体的に示すこと。

この2つが揃ったとき、聞き手は「自分にも関係がある話だ」「これは本当に実現しそうだ」と感じ、初めて一歩を踏み出せます。

大切なのは、「完璧な計画がなければ話せない」と思わないことです。
まだ不確かな部分があっても構いません。
「ここはまだ決まっていないが、こういう方向で考えている」と正直に伝えることも、信頼につながります。

エベレストの登頂者だって、最初からすべてが整っていたわけではありません。
「いつ、誰と、どうやって登るか」の道筋を描いたことで、仲間が集まり、スポンサーがつき、夢が現実に近づいていくのです。

あなたのビジョンを、ぜひ「アイテム」で肉付けして、仲間たちと一緒に歩み始めてください。

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