利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

売上げの75%を支えているのは、たった30%のお客様だった─ 「大切なお客様」を守ることが、経営の最重要課題

売上げの75%を支えているのは、たった30%のお客様だった─ 「大切なお客様」を守ることが、経営の最重要課題

常連客を失わないための関係づくり

背景:なぜ「新規集客」より「常連維持」なのか

経営者の多くが、「もっとお客様を増やさなければ」と考えています。
チラシをまいて、SNSを更新して、口コミを増やして……。
確かに新しいお客様を呼び込むことは大切です。
しかし、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

あなたのお店の売上げを支えているのは、いったい誰でしょうか。

マーケティングの世界では、古くから「パレートの法則(80対20の法則)」というものが知られています。
これは「売上げの80%は、上位20%のお客様からもたらされる」という経験則です。
現実には、この比率がさらに偏っていることも珍しくありません。
上位30%のお客様だけで、売上げの75%を占めている、というケースもよく見られます。

これは何を意味しているのでしょうか。

つまり、残りの70%のお客様は、売上げの25%しかもたらしていない。
逆に言えば、上位のわずかなお客様を失ったとき、その影響は計り知れないほど大きいということです。

新規のお客様を1人獲得するためのコストは、既存のお客様を維持するコストの「5倍」かかると言われています。
それほど、既存のお客様、とくに常連のお客様は、経営にとって「黄金のような存在」なのです。
しかも、常連のお客様が離れてしまうダメージは、その年だけにとどまりません。
翌年も、翌々年も、じわじわと売上げに影響し続けます。
穴の開いたバケツに、必死に水を注ぎ続けるようなものです。
まず穴をふさぐことを考えなければ、どれだけ注いでも水は満たされません。

事例:地方の整骨院が「常連離れ」の危機を乗り越えた話

ここで、ひとつの事例をご紹介します。

静岡県の地方都市で、夫婦二人と数名のスタッフで運営する小さな整骨院があります。
長年地域に根ざして営業してきたこのお店では、毎月欠かさず通ってくれる常連のお客様が数十名いました。
腰痛や肩こりの治療はもちろん、体のメンテナンスとして定期的に来院してくれるその方々が、売上げの大部分を支えていたのです。

ところが、近くに大手チェーンの整骨院がオープンしました。
低価格を売りにした新店舗の登場で、これまで長年通ってくれていた常連のお客様が、数名、来なくなってしまいました。
たった数名です。しかし、その影響は大きく、月の売上げが目に見えて落ちていきました。

院長はあわてて新規集客のためのキャンペーンを打ちました。
が、すぐには効果が出ません。
焦る気持ちとは裏腹に、月日だけが過ぎていきました。

そこで院長が始めたのが、常連のお客様との「関係を深める取り組み」でした。
具体的には、LINEの公式アカウントを活用した定期的な発信です。
ここでのポイントは、「売り込まない」こと。

発信する内容は、健康に関するちょっとした知識、季節ごとの体のケア方法、施術にまつわる専門家としての見解など、お客様の日常に役立つ情報ばかりでした。
「今月からぎっくり腰が増える季節です。こんなストレッチが効果的ですよ」
「梅雨時は関節が痛みやすくなります。水分をしっかりとってくださいね」といった、プロとしての気づきを、おしつけがましくなく、やさしく届け続けたのです。

時には、スタッフの近況や、院長自身の健康への思い、患者さんへの感謝の気持ちも綴りました。
「商品ではなく、人を伝える」発信です。

すると、少しずつ変化が起き始めました。
しばらく来院が途絶えていたお客様から、「先生の投稿を見て、やっぱり来なきゃと思って」という声が届くようになったのです。
また、「LINE見てます」「あの情報、家族に教えてあげました」という声も増えてきました。

やがて、離れかけていた常連のお客様が戻り始め、紹介による新規のお客様も少しずつ増えていきました。
売上げが元に戻るまで半年以上かかりましたが、院長はこう言っています。
「一番よかったのは、お客様との距離が近くなったことです。以前より信頼してもらえているのを感じます」と。

まとめ:「大切なお客様」を守る、シンプルな原則

この事例から学べることは、非常にシンプルです。

常連のお客様との「つながり」を、意図的に、継続的に、育てること。

大切なのは、売るための接触ではなく、「気にかけている」ことを伝える接触です。
LINEでも、手書きのメッセージカードでも、誕生日のひとことでも、形はなんでも構いません。
「あなたのことを気にかけていますよ」という気持ちが、確実に伝わる方法を選んでください。

そして、届ける内容には、プロとしての知識や見解を盛り込むことが大切です。
お客様はそれによって、知識が深まり、意識が高まり、あなたのお店への信頼が増していきます。
信頼が育まれた関係の中でこそ、「きちんとした提案」が活きてくるのです。

まず、あなたのお店の「一番大切なお客様」を思い浮かべてください。
その方に、今日、何かひとつ「気にかけているよ」というメッセージを届けることから始めてみましょう。

売上げの75%を支えてくれている、かけがえのないお客様を守ること。
これこそが、小さなお店が長く愛され続けるための、もっとも確かな経営の知恵です。

小さなお店だからこそ、大きな会社にはできない「人と人のつながり」が強みになります。
その強みを、ぜひ意識的に育てていってください。

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